2002年 1月31日 サブセット と VE (その 2) >> 目次 (テーマごと)
  ● QUESTION   サブセット と VE の判断規準はわかるが、判断に戸惑うことがある。
  ▼ ANSWER   「主語-述語」 の単位を検証すればよい。
2007年 3月 1日 補遺  



 以下の 3つの判断に戸惑うときがある。

  (1) identifier
  (2) 区分 コード
  (3) VE

  そのようなときには、T字形 ER手法の 「原点」 に帰れば良い。すなわち、「命題論理」 の形式である 「主語-述語」の単位を検証すれば良い。以下の例を示す。

 
 ▼ 具体例

 ● 前提

  (1) {部品 コード、部品名称、...}
  (2) 「R&D 区分 コード」がある、とする。
     (R&Dは、「Research and Development (研究開発)」 の略)。

 さて、「R&D 区分 コード」 は、部品に帰属する性質か、と問われたら、部品に帰属する性質ではない。
 しかし、(「R&D 区分 コード」 が帰属する領域と想像される) 「R&D」 コード がない。
 しかも、「R&D 区分 コード」 は、部品の 「状態の推移」 を記述できる コード である。

 とすれば、「R&D 区分 コード」 は、以下の 3つのいずれもが成立する可能性がある。

  (1) identifier
  (2) 区分 コード
  (3) VE

 
 ● データ 構造

 以下に、それぞれの データ を示す。

 (1) identifier として扱う例:

   ┌─────────────────┐     ┌─────────────────┐
   │       R&D      R│     │       部 品      R│
   ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
   │R&D区分コード│        │     │部品コード   │部品名称    │
   │        │        ├┼─○─<|        │        │
   │        │        │  │  │        │        │
   │        │        │  │  │        │        │
   │        │        │  │  │         │        │
   └────────┴────────┘  │  └────────┴────────┘
                        │
                        │
          ┌─────────────┴─────────────┐
          │        R&D区分. 部品. 対照表       │
          ├─────────────┬─────────────┤
          │R&D区分コード(R)  │             |
          │部品コード(R)     │             │
          │             │             │
          └─────────────┴─────────────┘

 
 (2) 区分 コードとして扱う例:

               ┌─────────────────┐
               │       部 品      R│
               ├────────┬────────┤
               │部品コード   │部品名称    │
               │        │        │
               │        │        │
               └────────┼────────┘
                        |
                        = R&D区分コード
                        |
            ┌───────────┴───────────┐
            |                       |
   ┌────────┴────────┐     ┌────────┴────────┐
   │    研究開発中の部品     │     │     本稼働中の部品     │
   ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
   │部品コード   │部品名称    │     │部品コード   │部品名称    │
   │        │R&D区分コード│     │        │R&D区分コード│
   │        │        │     │        │        │
   │        │        │     │        │        │
   │        │        │     │         │        │
   └────────┴────────┘     └────────┴────────┘

 
 (3) VE として扱う例:

   ┌─────────────────┐     ┌─────────────────┐
   │       部 品      R│     │     部品. R&D    VE│
   ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
   │部品コード   │部品名称    │     │部品コード(R)│R&D区分コード│
   │        │        ├┼───┼┤        │        │
   │        │        │     │        │        │
   │        │        │     │        │        │
   │        │        │     │         │        │
   └────────┴────────┘     └────────┴────────┘

 
 ● 検討

 さて、いずれの扱いが正しいのか。
 ここで、T字形 ER図の 「主語-述語(S-P)」 形式を思い出してほしい。つまり、T字形の右側には 「性質」 が記述される、ということである。

 とすれば、前述の 3つの扱いは、以下の検証をされることになる。
  (1) identifier として扱ったときに、resource の右側には、どのような性質が記述されるのか。
  (2) 区分 コード として扱ったときには、右側に記述される性質はない。
  (3) VE として扱ったときには、右側に記述される性質はない。

 とすれば、「R&D」 を 「resource」 として扱って、管理対象となる性質を記述できるのかどうか、という点が論点になる (かつ、対照表として記述されている quasi-event の右側に管理対象として、どのような性質が記述できるか、という点が論点になる)。
 もし、そういう性質がないのであれば、区分 コード か VE として扱ったほうがよい、ということになる。

 次に考えなければならない点は、区分 コード と VE は、いずれも、管理対象として記述する性質がないけれど、R&D 区分 コード は (部品に対して)--サブセット として--「状態」 を記述する コード として作用できる点に特徴がある。たとえば、部品の状態として、「R&D (試作品)」 あるいは 「量産品」 とか (逆に言えば、VE では、そういう管理は、部品に対する管理ではないとされる)。

 



[ 補遺 ] (2007年 3月 1日)

 T字形 ER手法 (TM と 「みなし」概念) は、以下の 2つの手順を踏んで作成される。

 (1) Tentative Modeling
 (2) Semantic Proofreading

 Tentative Modeling は、構文論として、TM の文法どおりに作成する作業である。したがって、本文のなかで論点になった 「R&D 区分 コード」 は、まず、文法どおりに、部品 entity の性質とされる。

 そして、Semantic Proofreading は、意味論として、一応作成された TMD (TM Diagram、T字形 ER図) を推敲する作業である。推敲では、区分 コード に関して、かならず、以下の 2点を意味論的に検討しなければならない。

 (1) 独立した entity として扱う。
 (2) entity の性質として扱う。

 そして、(1) と (2) が同時に起こる事態として、VE を検討しなければならない--すなわち、TM の文法では、或る entity の性質とされていたが、その entity に属さない性質で、かつ、独立した entity として個体指示子 (認知番号) が コード 体系のなかに定義されていない事態に対応しなければならない。

 さて、もし、R&D 区分 コード が、部品の状態を管理するための コード --本文のなかで述べたように、たとえば、「試作品」 と 「量産品」 という状態を管理するための コード --であれば、R&D 区分 コード は、部品 entity の性質とされるが、その値次第では、単独の entity として扱う事態も起こる。
 たとえば、R&D 区分 コード の値として、以下を考えてみる。

 (1) 試作品
 (2) 量産品
 (3) 共通部品

 これらの値は、「AND」 関係が起こる。すなわち、「量産品かつ共通部品」 という事態が起こる。この事態は、区分 コード の分割が乱れているために起こった事態である。もし、値を訂正することができるなら--たとえば、R&D 区分 コード として、「試作品」 と 「量産品」 を考えて、新たに、ほかの 区分 コード として--たとえば、部品使用形態区分 コード とか--、「共通部品」 と 「専用部品」 という サブセット を扱えるようにすれば良い。もし、値を訂正することができないのであれば、値のあいだに起こる 「AND」 関係を除去するために--言い換えれば、部品 entity が 「周延」 していないので--、R&D 区分 コード は、部品 entity から外されて、単独の entity として扱われる。

   ┌─────────────────┐     ┌─────────────────┐
   │       R&D      R│     │       部 品      R│
   ├────────┬────────┤     ├────────┬────────┤
   │R&D区分コード│        │     │部品コード   │部品名称    │
   │        │        │>─○─<|        │        │
   │        │        │  │  │        │        │
   │        │        │  │  │        │        │
   │        │        │  │  │         │        │
   └────────┴────────┘  │  └────────┴────────┘
                        │
                        │
          ┌─────────────┴─────────────┐
          │        R&D区分. 部品. 対照表       │
          ├─────────────┬─────────────┤
          │R&D区分コード(R)  │             |
          │部品コード(R)     │             │
          │             │             │
          └─────────────┴─────────────┘



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