2022年10月15日 「1.4 『関係』 は関数である」 を読む >> 目次に もどる


 第1章は、モデルを どのように考えればいいかの大略 (大要) を綴ったのですが、そのなかでも本節は本書全体の出発点となる 一番 要 (かなめ) の節です── モデル 作成技術の すべて は本節に要約されていると云っていいでしょう。すなわち、モノ と それらの関係を記述するために、関数 f (x, y) を使うということです。f (x, y) こそが モデル 作成の基本技術なのです。

 モデル とは、本書では、次のように定義しています──

    モデル である =DEF 現実的事態 (事実) を写像した形式的構造である。

 「写像」 というのは 「変換」 あるいは 「関数」 と同値です、そして 「形式的」 というのは 「論理的」 と同値です。すなわち、モデル というのは現実的事態を 「論理 (Logic)」 を使って変換しているだけの構造です。ここで、「構造」 というのは次の 3つを組成にしています──

    (1) モノ の性質 f (x). ( f (x) を クラス とも云う)

    (2) モノ と モノ との関係 R (a, b).

    (3) モノ から モノ をつくる関数 f (x, y).

 これら組成を使って構成した論理構造が モデル です。

 モノ と モノ との関係は、「論理」 では、aRb と記述します。aRb は、「a は b に対して関係 R にある」 と読みます。そして、aRb は、R (a, b) と記述することできます。R (a, b) は、f (x, y) と型が同じです。上述したように f (x, y) は、モノ から モノ をつくる関数のことであって、厳正に言えば、「論理 (Logic)」 上、関係 R とは違いますが、実務的には、R (a, b) を f (x, y) と同じであるとみなしても齟齬はないです (その理由は、第 2章16節 [ 2.16 ] で述べています)。f (x, y) は、関数なので、全順序を前提にします。R (a, b) と f (x, y) を同じとみなすのであれば、現実的事態を写像した形式的構造は、順序関係を以て記述される、ということになります。そして、x および y は変数 (変項) なので、それらに値を代入して、その値を形式的構造のなかで 「解釈」 することを論理的意味論と云います。つまり、前回 まとめたように、形式的構造 (あるいは、論理的意味論) では、f (x) と f (x, y) の二つの関数を使って構成される、ということです。モデル は、単なる画法ではなくて、関数の技術を使って構成する構造なのです。その構造では、次の 2点が満たされていることが要件となるのは当然の論理的帰結でしょう。

    (1) 形式的構造は、論理的に無矛盾である。

    (2) 変項は 「真とされる」 値が充足される。

 本書では、f (x, y) を使って モデル を構成する技術を説明しています。 □

 




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