2004年 2月 1日 作成 消費者行動分析 >> 目次 (テーマ ごと)
2008年 5月 1日 補遺  

 

 
1. ロジャース (Rogers, E.M.) は 「採用曲線(adoption curve)」 を提示した。
 [ Diffusion of Innovations, 1983 ]

  イノベーション の普及が、以下の層を移って実現されることを示した。

 (1) 革新者層 (2.5%)
 (2) 初期受容層 (12.5%)
 (3) 初期大衆層 (34%)
 (4) 後期大衆層 (34%)
 (5) 遅延層 (16%)

 
2. 「採用曲線」 の段階は 「製品 ライフサイクル」 の段階に対応している。

3. 1963年、AMA (アメリカ・マーケティング 協会) が ライフスタイル に関する学会を開催した。

  それ以後、ライフスタイル は マーケティング の研究対象となった。

 (1) 商品は使用価値である。とすれば、商品は生活者志向の ライフスタイル と密接な関連がある。
 (2) マズロー (Maslow, A.H.) の 「欲求 5段階」 説は、
   「生活の質 (quality of life)」 の向上を論述している。
 (3) 市場細分化 (マーケティング・セグメンテーション) の基準として、
   人口統計的変数のほかに、ライフスタイル 変数を加味しなければ、消費者の選好がわからない。

[ 参考 ]
 マズロー の 「欲求 5段階」 説のなかで対象となっている欲求は、以下の 5つである。

 (1) 生理的 ニーズ
 (2) 安全 ニーズ
 (3) 帰属 ニーズ
 (4) 尊敬 ニーズ
 (5) 自己実現 ニーズ

 
4. ライフスタイル 研究は、以下の 2つが代表的である。

 (1) AIO 分析 [ 個別企業のための ライフスタイル 分析 ]
 (2)(ヤンケロヴィッチ の) ニュー・ルール [ 社会全体の トレンド に関する研究 ]

 
5. AIO 分析は、ライフスタイル を以下の 3点から考慮して、さらに人口統計的変数を加味する手法である。
  (変数群を多変量解析して、市場を細分化する手法である。)

 (1) Action (仕事、趣味、レジャー、買い物、スポーツ など)
 (2) Interest (家族、ファッション、食事、教養、メディア など)
 (3) Opinion (人生、政治、ビジネス、教育、文化など)

 ちなみに、人口統計的変数とは、年齢、学歴、収入、職業、家族構成、住宅などのことをいう。

 
6. ヤンケロヴィッチ (Yankelovich, D.) によれば、1975 年を境界線にして、価値観が変わった。

 (1) 1950 年〜 1975 年は、「豊かな社会 (Affluent Society)」 であり、
   「自己犠牲」 が社会の基本的価値であった。「自己犠牲」 は経済的代償を得ることができた。

 (2) 1975 年以後、「ポスト 豊かな社会 (Post-Affluent Society)」 であり、
   「自己充足」 が基本的な価値となった。

 
7. 消費者行動 (ニーズ、購買動機、購買慣習)を分析する理論 モデル として、以下が代表的である。

 (1) 行動科学 モデル [ ハワード=シェス (Howard, J.A.=I.N.Sheth)]
 (2) 情報処理 モデル [ ベットマン (Bettmann, J.R.)]

  これらの モデル の詳細については、専門文献を参照されたい。





[ 補遺 ] (2008年 5月 1日)

 消費者行動分析には、様々な モデル があるようです。行動を モデル 化するためには、目的関数と制約条件が争点になります。マクロ 経済学的 モデル では、「経済全体の傾向を分析する」 ことを目的にしているので、「消費者は、『合理的に』 行動する」 というふうにみなして一般法則を構成します。「合理的」 という意味は、「限られた手段のなかから、じぶんの目的を最大にする対象を選ぶ」 ということです。その モデル として、「theory of customer's choice (消費者選択の理論)」 が提示されています。この モデル では、消費者は、財の組対して選好順序 (preference order) をもっていて、この選好順序は、効用関数として記述されます。たとえば、a1, a2, a3, b1, b2 という財があって、以下の組を考えてみましょう。

 (1) { a1, a2, b1 }.
 (2) { a3, b1, b2 }.

 このふたつの組のいずれかを選ぶとすれば、以下の 3つの選択法が考えられます。

 (1) { a1, a2, b1 } を選ぶ。
 (2) { a3, b1, b2 } を選ぶ。
 (3) ふたつの組に対して、同じ程度の好ましさが成立している。
    (このことを、「無差別 (indifferent)」 と云います)。

 そして、或る所得の範囲のなかで購入できる財の組を 「関係 (選好関係)」 (すなわち 「関数の部分集合」) として考えて、すべての所得をそれぞれの組に費やした関数を考えます──この関数を 「予算線 (budget line)」 と云います。そして、この関数に対して、「無差別曲線」 を考えれば、「予算線」 と 「無差別曲線」 との接点が、消費者の財に対する需要を示します。言い換えれば、この モデル は、所得と価格が与えられたならば、消費者は、「消費の効用を極大にする (需要と供給が均衡化する)」 という前提で作られています。
 私は、経済学者ではないので、この モデル が実際に どのようにして使われているのかを知らないので、あくまで、数学的 モデル の観点から述べたにすぎないことを付言しておきます。

 「需要と供給 (の均衡化)」 以外にも、勿論、前提・変数を考えることはできます──たとえば、「集団要因 (社会階層や家族など)」 「動機づけ (購買動機)」 や 「学習 (購買慣習)」など。そういう モデル のなかで有名な モデル が、AIO 分析や ハワード=シェス モデル です。

 どうして、前提・変数が モデル によってちがうのか という点は、たぶん、消費者行動には、ふたつの性質があるからでしょうね。その ふたつの性質というのは、「購買」 と 「使用」 です。「購買」 は、経済的行動の特性を帯び、「使用」 は社会的行動の特性を帯びています。経済的行動の特性として、購買力 (所得)・購買動機・購買制約 (価格、商品 ブランド、購買 タイミングとか購買場所など) があり、社会的行動の特性として、使用目的・使用頻度 (習慣性も)・複数商品の パッケージ [ シナジー ]・使用制約 (使用 タイミング や使用場所など) があります。したがって、モデル も、心理学的視点や社会学的視点や社会心理学的視点を考慮しなければならないでしょうし、さらには、(企業活動がグローバル化・多角化してきたので、) 文化人類学的視点も考慮しなければならないのかもしれない。





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