[ 補遺 ] (2008年 6月16日)
価格政策には、以下の 2つがあります。
(1) 価格設定政策 (新規価格を設定する)
(2) 価格管理政策 (設定価格を マーケット のうごきに対応して変える)
価格設定政策には、本 エッセー の最初に述べた・以下の 3つの政策があります。
(1) 「コスト志向価格」
(2) 「需要志向価格」
(3) 「競争志向価格」
ちなみに、コスト 志向価格では、コスト に上積みした利潤のことを マークアップ (mark-up) と云います。一定の マークアップ を上乗せして売価とする コスト 志向価格政策のことを cost-plus pricing と云います。
需要志向価格の典型的な価格制として、本 エッセー の最後に述べたように、以下の 3つがあります。
(1) 名声価格
(2) 慣習価格
(3) 端数価格
競争志向価格には、模倣価格政策 (price imitation policy) や追従価格政策 (price following policy) がありますが、競争相手の価格を単に模倣・追従するのではなくて、状況次第では、さらに低めの価格を設定することもあるでしょうね。
本 エッセー では、ディスカウントストア が建値を崩したことを示しましたが──その対抗策として、メーカー が オープン・プライス 制を導入したのですが──、価格に関して、ここ 10年くらいの現象では、いわゆる 「百均 ショップ」 (百円均一) が マーケット に対して、多大な影響を及ぼしました。私も 「百均」 を愛用しています──値段が安ければ、品質が悪いということを 「安かろう悪かろう」 というふうに言われてきたのですが、「百均」 の品は、その格率を反故にしました。私は日用雑貨の多くを 「百均」 で購入していますし、「百円均一」 というのは、確実に慣習価格になったと思います。家庭で夕食を作るのが私の役目になっていますが、スーパー・マーケット で買物をする際──食材だけではなくて、衣料品や家庭用品も見て回ったりしますが──、私が それらの品物を購入する判断のひとつは、1,000円という単位です。1,000円を超えているかどうかが、私の最寄品 (低関与・低判断力) に対する上限判断値になっているようです。最寄品 (低関与・低判断力)に関して──ときには、買回品 (中関与・中判断力) に関しても──、私に限らず、たぶん、多くの人たちにとって、100円と 1,000円が購買慣習の判断指標になっているのではないでしょうか。
価格管理政策では、「価格弾力性」 が使われます。
需要と供給は、(嗜好品や日用雑貨などを除けば、) 価格に依存していると、私は経済学で教わりました。経済学では、「『価格の変化割合 (b = 冪/ p)』 と、それに対応して起こる 『数量の変化割合 (a = 冫/ q)』 との関係 R (a, b) 」 を 「価格弾力性」 と云います──そして、「a ÷ b」 (すなわち、数量の%変化を価格の%変化で除した数値) を 「弾力性 (elasticity)」 としたのが マーシャル A. だそうです。価格弾力性は、価格を変化したときに収入の変化が どうなるのかを調べることができるので、大切な経済計算指標のひとつとされているそうです。なお、弾力性の計算は、以下の簡便法を使うことが多いそうです。
(需要量の変化 ÷ 平均需要量) ÷ (価格の変化 ÷ 平均価格).
= [ (q1 − q2) ÷ { (q1 + q2) ÷ 2 } ] ÷ [ (p1 − p2) ÷ { (p1 + p2) ÷ 2 } ]
= { (q1 − q2) ÷ (p1 − p2) } × { (p1 + p2) ÷ (q1 + q2) }.
そして、その計算式の値が以下の いずれであるかを判断します。
(1) 弾力性 (弾力性計数の絶対値) > 1
(2) 弾力性 (弾力性計数の絶対値) < 1
(1) であれば、需要は弾力的で、価格競争は有効であるということになり、(2) であれば、需要は非弾力的で、価格切り下げは ききめ がない、ということになります。
[ 具体例 ]
価格が 100円のとき、需要が 10,000個であり、価格を 80円にしたら、需要が 20,000個であったとすれば、価格弾力性計数は −3 となる。
{ (10,000 − 20,000) ÷ (100 − 80) } × { (100 + 80) ÷ (10,000 + 20,000) } .
3 > 1 だから── 3 は、−3 の絶対値です──、価格切り下げは効果的である、ということです。
もっとも、この程度の計算であれば、それぞれの事態──事態1 (価格 100円、需要 10,000個) と事態2 (価格 80円、需要 20,000個)──の収入 (利益率) を計算して比較すれば、どちらが収入を増大するかを簡単に計算できるので、わざわざ、弾力性を計算するまでもない話ですが、、、。
ただ、もし、需要が非弾力的であっても、価格を上昇して弾力的にして、総収入を増大することもできるし──この戦略を 「戦略弾力的」 としましょう──、逆に、需要が弾力的であっても、ブランド 力を強めて、非弾力的にすることもできますので──この戦略を 「戦略非弾力的」 としましょう──、弾力性計算は役立つのは確かです。
私は、「『戦略弾力的』 → 『戦略非弾力的』」 という手順で、私の コンサルタント としての値決めをしました。