2002年 4月30日 作成 資本会計 >> 目次に もどる
2006年 8月16日 補遺  

 

 1. 資本の概念

 資本の概念には以下の 4つがある。

 (1)総資本 (他人資本 [ 負債 ] + 自己資本 [ 資本 ])
 (2)自己資本 (払込資本 + 評価替資本 + 受贈資本 + 留保利益)
 (3)払込資本 (資本金 + 資本準備金)
 (4)資本金

 期間損益計算の観点からすれば、(1)が資本とされる [ 資本 = 資産 − 負債 ]。

2. 資本の分類

 資本は、調達源泉の観点から、以下の 2つに類別できる。

 (1) 他人資本 (負債会計として扱う)
 (2) 自己資本 (資本会計として扱う)

 資本会計の対象である自己資本は、以下の 2つの観点から類別できる。

 (1) 分配可能性
 (2) 源泉別

 商法 (商法施行規則) および証取法 (財務諸表規則) では、資本は以下のように類別される。

 (1) 資本金
 (2) 資本剰余金
  (2)-1 資本準備金
  (2)-2 その他資本剰余金
  (2)-3 減資差益
  (2)-4 自己株式処分差益
 (3) 利益剰余金
  (3)-1 利益準備金
  (3)-2 任意積立金
  (3)-3 当期未処分利益
 (4) 土地再評価差額金
 (5) 株式等評価差額金
 (6) 自己株式

 
 源泉別の観点に立てば、自己資本は以下のように類別される。

 (1) 払込資本
  (1)-1 資本金
  (1)-2 資本準備金
 (2) 評価替資本
  (2)-1 固定資産評価差益
  (2)-2 保険差益
 (3) 受贈資本
  (3)-1 国庫補助金
  (3)-2 工事負担金
  (3)-3 債務免除益
 (4) 留保利益
  (4)-1 処分済利益 (利益準備金、任意積立金)
  (4)-2 未処分利益

 源泉別の分類を分配可能性の観点から判断すれば、資本は 「配当・課税」 の対象にならないと考えるので、「払込資本」 が資本とされ、それ以外は利益とされる。

[ 参考 ]
(1) 自己株式の取得は、日本の商法では、1994年まで禁止されていた。
(2) 1994年の商法改正では、使用人に譲渡するためや利益消去のための自己株式取得が認められた。
  (証取法でも、TOB--株式公開買い付け--による自己株式取得が認められた。)
(3) 1997年の商法特例法では、取締役会の決議があれば、自己株式を消去できるようになった。
(4) 1998年の商法改正では、資本準備金による消去も認められた。
  (ただし、2000年 3月31日までの時限立法であった。)

 取得した自己株式は、取得原価をもって資本の部から控除する。また、期末に保有する自己株式は、資本の部の末尾に 「自己株式」 として一括して控除する形式で表示する。自己株式の処分について、自己株式差益は、「その他資本剰余金」 に計上する (または、自己株式差損は、「その他資本剰余金」 から減額する)。

 1997年、商法が改正され、ストック・オプション制度が認められた。
 商法改正で認められたストック・オプション制度には、以下の 2つがある。

 (1)自己株式方式 (自己株式を取得して行使するやりかた)
 (2)ワラント 方式 (新株引受権を付与するやりかた)

 ストック・オプション に関する会計基準はない。(2002年時点、審議中)
 したがって、現行の会計制度の範囲内で対応することになる。とすれば、(1) は自己株式として扱い、(2) は新株発行 (増資) として扱うことになる。税法は、権利行使時の時価と権利行使価格との差額を給与所得(報酬)とみなして課税の対象としている。

 



[ 補遺 ] (2006年 8月16日)

 ストック・オプション は、商法上、新株予約権とされ、会計上、平成16年 12月に 「ストック・オプション 等に関する会計基準 (案)」 が公表され、「費用計上」 することとされた。したがって、仕訳は、以下のようになる。

    (借) 費用 ××     (貸) 新株予約権 ××

 
 さらに、新会社法では、最低資本金制度が廃止されて、これまでの 「利益」 は、「剰余金」 という概念になった。

  (1) 剰余金の配当とは、株主に現金や現物を配当として交付すること。
     ただし、株式や社債、新株予約権は、配当として交付できない。
  (2) 剰余金の配当は、(臨時決算書類を作成すれば、) いつでもできるようになった。
  (3) 配当には規制がある。(第461条1項)
   (3)-1 「交付する金銭等の帳簿価額の総額が分配可能額を超えてはならない」。
   (3)-2 純資産額が300万円未満の場合には、剰余金があっても、株主に分配することができない(第458条)。
      (これは、有限会社の最低資本金に対応しているのではないか。)

 
 従来、利益と配当可能限度額は、ほぼ同じ (一部の繰延資産のみが配当性がない) とされていたが、新会社法では、分配可能額と剰余金額はちがう。

  (1) 剰余金には自己株式がふくまれる。
  (2) 分配可能額には、自己株式はふくまれない。
    (当然ながら、自己株式の譲渡益はふくまれる。)
  (3) 分配可能額には、資本金減少額・資本準備金減少額もふくまれない。
  (4) 剰余金配当をして、剰余金に欠損が生じたら、取締役は填補責任がある。
     ただし、あくまでも、マイナス になった額を支払う見込み違いの責任であって、違法配当責任ではない。
     (配当限度額が存しない場合には違法配当責任である。)

 
 以下に、 新会社法のなかで、資本金の減少を資本剰余金とする規則を抜粋して、注意点を付しておく。

 第三節 資本金の額等
 第一款 総則
 第445条 1項 発行価額ではなくて、払込額基準になった。
   同 2項 剰余金の配当では、剰余金の1/10を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならない。
 第二款 資本金の額の減少等
 第447条(資本金の額の減少)
      資本金は1円まで減少できる。
      減少資本額は剰余金になるのが原則(第464条3号)だが、準備金に計上できるようにもなった。
      資本金の減少と株数の減少は完全に無関係になった。
 第448条(準備金の額の減少)
      資本金の4分の1を限度とする必要がない。(注意)
      減少準備金額は、剰余金になるのが原則(第446条4号)。
      準備金の資本組入れも、準備金の「減少」に統合された。
 第450条(資本金の額の増加)
 第451条(準備金の額の増加)
 (注意)会社法施行規則にあるかどうかを私 (佐藤正美) は確認していない。

 
 純資産、剰余金および準備金の関係を以下に図示しておく。

            ┌──────┬───────┐
            │      │  負債   │
            │      ├───────┼──┐
            │      │  資本金  │  │
            │  資産  ├───────┤  │
            │      │  準備金  │  ├ 純資産
            │      ├───────┤  │
            │      │  剰余金  │  │
            └──────┴───────┴──┘
  (1) 剰余金とは、純資産が資本金・法定準備金を超える部分。
  (2) 準備金とは、純資産が資本金を超える額の一部を会社に積み立てた部分。
     (法定準備金 [ 資本準備金と利益準備金 ]と任意準備金)
  (3) 利益剰余金を配当限度とするのが伝統的な債権者保護の考えかた。

 
 旧商法では、決算は、年 2回とされていたが、新会社法 第441条では、臨時決算日における計算書類 (貸借対照表及び損益計算書) を作成できる。臨時計算書類を作成すれば、それに計上された損益の額は、剰余金の分配可能額に影響する。さらに、剰余金の増減が損益計算書を通さないで貸借対照表に直接算入されることが、たびたび起こるのであれば、それを管理しなければならない。その変動を記述するために、「株主資本等変動計算書」 を作成しなければならない。

 なお、新会社法では、計算書類 (第435条 2項) は、以下を云う。
  (1) 貸借対照表
  (2) 損益計算書
  (3) 株主資本等変動計算書
  (4) 個別注記表

 旧 商法上、「計算書類」 とされた営業報告・附属明細書は、新会社法では、「計算書類」 でなくなったが、作成しなければならない。ちなみに、営業報告は、新会社法では、事業報告というふうに用語が変更された。




  << もどる HOME すすむ >>
  Advanced Learner's