1. リース 取引の特徴
リース取引は以下の 2つの形態に類別される。
(1) ファイナンス・リース 取引
(2) オペレーティング・リース 取引
ファイナンス・リース 取引とは、以下の 3つの条件を満たす取引をいい、事実上、物件を購入して分割払いすることと同じ効果のある取引である。
(1)途中解約できない。
(2)借り手がリース物件から経済的利益を実質的に得られる。
(3)借り手がリース物件の使用コストを実質的に負担する。
オペレーティング・リース 取引は、ファイナンス・リース 取引以外の リース 取引のことをいう。
日本公認会計士協会が公表した 「リース 取引の実務指針」 によれば、リース 物件の所有権が借り手に移転すると認められる取引として、以下の 3つが列挙されている。
(1) 所有権移転条項のある リース 取引
(2) 割安購入選択権がある リース 取引
(3) 特別仕様の リース 物件 (使用可能期間を通じて借り手以外に リース できない)
以上のいずれかに該当すれば ファイナンス・リース 取引とされる。さらに、以上のいずれにも該当しないときでも、以下の 2点のいずれかに該当すれば、ファイナンス・リース 取引とされる。
(1) 現在価値基準
解約不能の リース 期間中の リース 料総額の現在価値が見積現金購入額の 90%以上となる。
(2) 耐用年数基準
解約不能の リース 期間が耐用年数の 75%以上である。
2. リース 取引の評価
ファイナンス・リース 取引は通常の売買取引と同じ扱いをする。
(1) リース 資産の計上 (リース 期間にわたって償却される)
(2) リース 債務の計上 (リース 期間にわたって、元本と利息が分別処理される)
リース 資産の計上では、資産の取得価額は、リース 料総額から (リース 料のなかに算入されている) 利息を控除した価額とされる (割引現在価値を使う)。
オペレーティング・リース 取引は賃借取引と同じように扱う。
ただし、途中解約できる オペレーティング・リース 取引以外は、以下の事項を財務諸表に注記しなければならない。
(1) 一年以内の リース 期間に計上される未経過 リース 料
(2) 一年を超える リース 期間に計上される未経過 リース 料
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現在価値の判断と耐用年数の判断 |
(1) リース 期間 4年
(2) リース 料 10,000円/年
(3) 利子率 10%
(4) 見積現金購入価額 30,000円、残存価額は ゼロ とする。
(5) リース 物件の耐用年数 5年、残存価額は ゼロ とする。
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現在価値の判断 | 耐用年数の判断 |
P = 10,000(R--->P)105 = 31,700 31,700 ÷ 30,000 = 106% | 4年 ÷ 5年 = 80% |
したがって、この取引は ファイナンス・リース 取引であると判断される。 |
仕訳例 |
[ 金額の単位は、1,000円とする ]
(1) リース 期間 5年
(2) リース 料 2,638円/年
(3) 利子率 10%
(4) 見積現金購入価額 10,000円、残存価額は ゼロ とする。
(5) リース 物件の耐用年数 5年、残存価額は ゼロ とする。
R = 1,000 (P--->R)105 = 2,638
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元本と利息 |
年 |
期首元本 |
返済合計 |
元 本 |
利 息 |
期末元本 |
1 |
10,000 |
2,638 |
1,638 |
1,000 |
8,362 |
2 |
8,362 |
2,638 |
1,802 |
836 |
6,560 |
3 |
6,560 |
2,638 |
1,982 |
656 |
4,578 |
4 |
4,578 |
2,638 |
2,180 |
458 |
2,398 |
5 |
2,398 |
2,638 |
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240 |
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13,190 |
10,000 |
3,190 |
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借り手 (レッシー) の仕訳 | 貸し手 (レッサー) の仕訳 |
リース 契約開始日 |
(借)固定資産 10,000 (貸)リース債務 10,000
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(借)受取リース債権 13,190 (貸)現金 10,000 未実現利益 3,190
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1年度終了時点 |
(借)リース債務 1,628 (貸)現金 2,638
支払利息 1,000
減価償却 2,000 減価償却累計 2,000
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(借)現金 2,638 (貸)受取リース債権 2,638
未実現利益 1,000 リース収益 1,000
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[ 補遺 ] (2006年12月 1日)
「資産」 の定義が 「収益獲得力」 であるならば、所有権のほかに、経済的効益の観点から、資産を計上されるのは整合的でしょうね。[ 資産会計(資産の概念・分類・評価) を参照されたい。] その資産計上の判断基準として、リース 取引では、現在価値基準と耐用年数基準を導入しています。すなわち、本文に記述しましたように、物件を購入して代金を分割で払っているのと同じ経済取引とされます。
資産計上された リース 取引 (ファイナンス・リース) は、当然ながら、減損会計の対象になります。さらに、ファイナンス・リース に対する減損会計の適用上、オペレーティング・リース (賃貸借取引) であっても、減損会計の対象になります。すなわち、未経過 リース 料の現在価値を リース 資産の帳簿価額とみなして減損会計を適用します。その際、損失は負債として計上して、リース 契約の残存期間にわたって規則的に取り崩して、支払い リース 料と相殺します。
リース 取引・減損会計に関しても、資産は収益獲得力であって、資産の収益性が低下して投資の回収が見込めないなら、損失を将来に繰り延べないようにしていることが 理解できますね。
なお、本文の レッサー の仕訳のなかで、私は、「未実現利益」 という科目を使っていますが、取引のからくりを示すために使ったのであって、実地の仕訳では、妥当な科目ではないので注意して下さい。実地の仕訳で使う妥当な科目 (「未収金 (未収受取利息)」とか) を専門家 (公認会計士、税理士) に訊いて下さい。
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