2002年10月 1日 作成 税効果会計 (その 2) >> 目次に もどる
2007年 1月 1日 補遺  

 

1. 一時差異と永久差異

 財務会計と税務会計との差異には以下の 2つがある。
 (1) 一時差異 (税効果会計の対象となる)
 (2) 永久差異 (税効果会計の対象とならない)

 一時差異(temporary difference)というのは、貸借対照表上の資産・負債のなかで、財務会計と税務会計との間に差異があって、その差異が、将来、課税(あるいは、費用計上)によって解消されることをいう。
 一時差異には以下の 2つがある。
 (1) 将来減算一時差異
 (2) 将来加算一時差異

 将来減算一時差異とは、税金の減少が将来になることをいい、以下が例示できる。
 (1) 引当金(繰入限度)
 (2) 評価減

 将来加算一時差異とは、将来の税金が増えることをいい、以下が例示できる。
 (1) 圧縮記帳
 (2) 特別償却

 永久差異(permanent difference)とは以下の 2つである。
 (1) 財務会計では損益とされるが、税務会計では損益とされない。
 (2) 税務会計では損益とされるが、財務会計では損益とされない。

 
2. 資産負債法と繰延法

 一時差異を調整する方法には以下の 2つがある。
 (1) 資産負債法
 (2) 繰延法

 資産負債法は、貸借対照表の資産・負債を使って、税金の影響度を調整する。
 繰延法は、損益計算書を使って、税金を期間配分する。
 なお、資産負債法は (税金繰延の影響度を示すだけではなくて、) 将来の キャッシュフロー を示している。 IAS は キャッシュフロー を基本的な前提としているので、資産負債法を採用している。わが国の会計基準も、この考えかたを踏襲した。

 資産負債法では、一時差異を調整するために、繰延税金勘定が用意される。
 繰延税金勘定には、以下の 2つがある。
 (1) 繰延税金負債
 (2) 繰延税金資産

 繰延税金負債は、将来の税金の支払いとなる金額を示す。
 繰延税金資産は、将来の税金の減少 (あるいは増加) となる金額を示す。
 なお、「ある一定の条件」 に該当する場合には、評価勘定を使って、繰延税金資産を減少しなければならない。「ある一定の条件」 とは、繰延税金資産が実現される確率が 50%以下であることをいう。

 繰延税金資産を計上するためには、将来、それを回収できる所得がなければならない。すなわち、所得を合理劇に見積もらなければならない。回収不能であれば、繰延税金資産として計上できない。ただ、現実的には、回収可能性の判断はむずかしい、と思われる。
 わが国では、税務上、繰延限度額の制限が多かったので、一般的には、将来減算一時差異 (繰延税金資産) が多いので、回収可能性の判断次第では、財政状態に対して大きな影響がある。

 
2. 欠損の繰戻し

 税務上、欠損の繰戻しが認められているので、税効果では考慮しなければならない。
 欠損の繰戻しは、赤字を将来 5年にわたって繰戻して、将来の利益から赤字を補填することができる。

 
4. 連結財務諸表での取扱い

 連結財務諸表では、従来から税効果会計を採用することが可能だったので、連結財務諸表のなかで税効果会計を導入していた企業もある。ただ、多くの企業は繰延法を使っていたようである。
 したがって、海外の子会社の利益が日本の親会社に配当されたときには、税金が生じることになるので、子会社に利益が生じたとき、繰延税金資産として計上しておかなければならない。ただ、(内部留保の調整に対しては) 今後も、繰延法を使うことは認められている。

 
5. 資産負債法の簡単な例

 課税所得は以下のように計算される。

   税引前当期利益 (会計上の利益)
 + 益金算入または損金不算入
 − 益金不算入または損金算入
 = 課税所得 (税務上の利益)

 以下の損益計算書を使って資産負債法を簡単に例示する。
 法定実効税率を 40%とする。 [ なお、文中、単位は百万円とする。]

 

  収益100 
  費用60 
  税引前利益40 
  法人税など20 
  利益20 


 繰延税金資産は 4百万円である(税引前利益 40 × 40% = 16、法人税など 20 − 16 = 4.)
 したがって、貸借対照表では、税効果勘定は以下のように記載される。

   繰延税金資産  4  /  法人税等調整額  4

 なお、繰延税金資産は貸借対照表上に記載され、法人税等調整額は損益計算書上に記載される。
 税効果会計を適用した損益計算書は以下のようになる。



  収益100 
  費用60 
  税引前利益40 
  法人税など20 
  法人税調整4 
  利益36 


[ 補遺 ] (2007年 1月 1日)

 税効果会計では、前提条件として、「将来減算一時差異」が資産性をもつためには、将来にわたって法人税上の課税所得 (「将来減算一時差異」の解消前の所得) が存在することが前提となっている。

 したがって、将来の所得の範囲において回収できる額が 「計上」 できることになるので、将来の課税所得を どのように見積もるかによって回収可能額が大幅に変動する。そのために、繰延税金資産の計上に関して、「上限」 の導入が検討されている。




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