(1) 平成 9年 6月、企業会計審議会は、「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」 を公表した。
個別財務諸表と連結財務諸表の関係では、従来、「個別」 が主であり 「連結」 が従であった。
平成 12年度の決算以後、段階的に、
「連結」 を主とする ディスクロージャー 制度に移行した。
(1)-1 「連結」 情報を拡充して、「個別」 情報は簡略化された。
例えば、「営業状況」 や保証・デリバティブ などの リスク 情報は、「連結」 のなかで記載する。
(1)-2 連結 キャッシュフロー 計算書が導入され、「個別」 の資金収支表は廃止された。
(1)-3 連結中間財務諸表が導入された。
「中間決算」 と言っても、従来、一年通期の損益を予測するために、上期下期を斟酌した決算をしていたけれど、平成 12年 9月期から、中間会計期間をひとつの事業年度として、損益を計上する方式に移行した。
(2) 「連結の範囲」 を判断する基準には、以下の 2つがある。
(2)-1 持株基準 (議決権のある株式の 50%以上に達したとき、子会社とする)
(2)-2 支配力基準
「支配力基準」 になって、銀行の連結範囲が拡大したことは興味深い。
製造業でも、海外子会社の利益 (営業利益) が国内のそれを上回っている現象が起こっている点も興味深い。「個別」 から 「連結」 への重点移行のなかで、月次連結決算を導入しようとしている企業もある。
(3) 持株基準では、連結対象は以下の 2つに類別される。
(3)-1 子会社 (発行済み株式数の過半数を所有している会社)
(3)-2 関連会社 (発行済み株式数の 20%から 50%までを所有して、実質的に支配している会社)
(4) 今回の改訂は、「支配力基準」 を採用している。「支配」 とは以下の 2つをいう。
(4)-1 議決権の過半数を 「実質的に」 所有している。
(4)-2 (議決権が過半数以下であっても)
高い比率の議決権をもち、意思決定機関を支配している 「一定の事実」 が認められる。
(5) 「実質的に」 とは、議決権のある株式の名義が、(役員など) 会社以外の人も対象とされること。
(6) 「一定の事実」 という意味は、以下の点である。
(6)-1 議決権を行使しない株主がいて、あるいは、協力的な株主がいて、
株主総会の議決権の過半数を継続的に占めることができる。
(6)-2 取締役会の構成員の過半数を継続的に占めている。
(6)-3 方針の決定を支配する契約がある。
(6)-4 資金の過半数を融資している。
(7) 以下の子会社は連結の対象から除外される。
(7)-1 支配が一時的であると認められる子会社。
(7)-2 連結することによって利害関係者の判断を誤らせるおそれがある子会社。
(例えば、資金移動に関して為替制限があるなど)
(7)-3 (企業集団の財政状態・経営成績に関する合理的な判断を妨げない程度に)
重要性の乏しい子会社
(8) 統一性として、以下の 2点が論点になる。
(8)-1 決算日の統一
(8)-2 手続きの統一性 (同一の環境下の同一の取引)
(9) 「連結決算日」 は、親会社の会計期間にもとづいて年一回作成される。
親会社の決算日と子会社の決算日の間にズレがあるときには、以下のようにする。
(9)-1 ズレが 3ヶ月以内であれば、
親会社は子会社の決算に基づいて連結決算をする。
(9)-2 ズレが 3ヶ月以上であれば、
子会社は連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続きにより決算をしなければならない。
(10) 親子会社の会計処理・手続きは、同一環境下の同一取引に対して統一していなければならない。
(10)-1 親子会社間の販売では、親が引渡基準を使って、子が検収基準を使うことは認められない。
(10)-2 ただし、「同一環境下の同一の取引」 ではないなら、この限りではない。
たとえば、棚卸資産の評価をすべて或る一つの評価基準にすることをいうのではない。
(11)連結貸借対照表を作成するための基本原則は、以下の 4つである。
(11)-1 個別貸借対照表の金額を基礎とする。
(11)-2 子会社の資産および負債は時価で評価する。
(11)-3 親会社の投資勘定と子会社の資本勘定を相殺消去する。
(11)-4 連結会社間の債権と債務を相殺消去する。
(12)子会社の資産および負債を時価で評価するとき、「少数株主持分」 が論点になる。
「少数株主持分」 に関しては、以下の 2つの扱いがある。
(12)-1 部分時価評価法 (少数株主持分を子会社の 「個別」 の簿価を使って評価する)
(12)-2 全面時価評価法 (時価で評価して、簿価の評価差額は子会社の資本とする)
(13)連結貸借対照表の表示は、個別貸借対照表の表示と形式では同じであるが、以下の特徴がある。
(13)-1 少数株主持分は負債の部の次に区別して記載する。
(13)-2 連結調整勘定は無形固定資産あるいは固定負債として記載する。
(連結調整勘定が借方と貸方の両方に生じるなら、相殺して記載することができる。)
(13)-3 非連結子会社および関連会社に対する債権・債務や投資勘定は、別表示にするか注記される。
(13)-4 連結剰余金は資本準備金以外の剰余金として記載される。
(13)-5 自己株式および子会社が所有する親会社株式は、資本に対する控除項目として、資本の部に
記載する。
(14)投資勘定の相殺は、以下の点を考慮する。
(14)-1 株式の取得日を基準とする。
(14)-2 持株比率を超える部分は少数株主持分とする。
(14)-3 子会社株式の取得が 2回以上おこなわれたときには、
- 部分時価評価法では、株式の取得日ごとに相殺消去し、
- 全面時価評価法では、子会社に対する支配獲得日に相殺消去する。
(14)-4 投資消去差額は、連結調整勘定として計上して、計上後 20年以内に、償却する。
(15)債権と債務の相殺消去は、以下の点である。
(15)-1 法的債権債務 (売掛金と買掛金、受取手形と支払手形、貸付金と借入金)
(15)-2 経過勘定 (未収収益と未払費用、前払費用と前受収益)
(15)-3 引当金
以下に、「少数株主持分」 の扱いに関する簡単な例を記載しておく。
今回は、連結貸借対照表を扱ったが、次回は、連結損益計算書を扱う。