1. 外国為替会計の目的
海外活動には以下の 2つの形態がある。
(1) 直接的な海外活動として、海外の企業と外貨建ての取引をしている。
(2) 間接的な海外活動として、海外子会社を使って取引している。
直接的な海外活動では、債権債務や有価証券の換算が論点になる。
間接的な海外活動では、連結財務諸表の作成 (あるいは、持分法の適用) のために換算が論点になる。
2. 換算 レート
換算は評価尺度の変更であるから、取引の測定は既に完了している。
換算 レート (為替 レート) の選択適用方法には以下の 2つがある。
(1) 複数 レート 法
(2) 単一 レート 法
複数 レート 法には以下の 3つの やりかた がある。
(1) 「流動・非流動」 法
(2) 「貨幣・非貨幣」 法
(3) テンポラル (temporal) 法 (「属性法」 ともいう)
単一 レート 法には以下の 2つの やりかた がある。
(1) 決算日 レート 法 (カレント・レート 法ともいう)
(2) 計算 レート 法
[ 参考 ] 以後、以下の略語を使う。
(1) 決算日の レート --> CR (カレント・レート)
(2) 取得時点の レート--> HR (ヒストリカル・レート)
3. 「流動・非流動」 法
「流動・非流動」 法は以下の やりかた である。
(1) 流動項目に対して CR を使う。
(2) 非流動項目に対して HR を使う。
ただ、この やりかた では、同じ属性でも適用される レート が違ってくることになる。
たとえば、前払費用では、短期の費用に対して CR を使い、長期の費用に対して HR を使うことになってしまう欠点がある。
4. 「貨幣・非貨幣」 法
「貨幣・非貨幣」法は以下の やりかた である。
(1) 貨幣項目に対して CR を使う。
(2) 非貨幣項目に対して HR を使う。
すなわち、貨幣項目には CR を適用しているので、回収可能性を示すことができ、非貨幣項目は過去に取得されたのであるから HR が適用されるが、強制低価法を適用されている棚卸資産--したがって、時価を使って評価されていることになる--が HR を使って評価される欠点がある。
5. 「テンポラル」 法
テンポラル 法は、基本的には、「貨幣・非貨幣」 法と同じであるが、外貨建ての段階において時価が適用されている項目に対しては CR を適用する点が特徴である。
この点では合理的なのだが、非貨幣項目ごとに取得時点での レート を使わなければならないので、実地に使う際には非効率であることは否めない。
6. 「単一 レート (カレント・レート)」 法
単一 レート 法は、すべての項目に対して CR を使うやり方であるが、(「貨幣・非貨幣」 法の欠点でもあったが) 過去に取得された項目に対しても CR を使うことになってしまい合理的ではない。
7. 為替損益
換算のなかで生じた損益は為替差損益として計上される。
8. 二取引基準と一取引基準
外貨建て取引では、取引の構成を判断するために、以下の 2つの考えかたがある。
(1) 二取引基準
(2) 一取引基準
次回は、二取引基準と一取引基準を説明する。□