2003年10月 1日 作成 事業 システム と組織編成 >> 目次 (作成日順)
2008年 1月 1日 補遺  

 

 
組織は環境適応的・戦略的でなければならない。

 (技術・経済・政治・文化などの) 環境の変化に迅速に対応できるように、組織は、職能別経営組織から事業部制組織や マトリックス 組織などの環境適応的・戦略的な組織へと形態を変化することになる。

 職能部門別組織 (functional organization) とは、購買・製造・販売などの職能ごとに部門を編成する形態である。職能部門間の調整は、すべて、トップマネジメント に委ねられるために、集権的な性質となる。この組織形態は、単一製品の大量生産向きであるが、多角化した企業には向かないと云われている。

 
分権化された組織としては、以下の 3つの形態がある。

  (1) 事業部制組織 (divisionalized organization)
  (2) マトリックス 組織 (matrix organization)
  (3) ネットワーク 組織

 事業部制は、分権管理形態の 1つであり、それぞれの事業部が プロフィット・センター (利益責任単位) となる。集権組織形態の欠点を是正するために導入された (1920年、デュポン 社が初めて導入した)。

 マトリックス 組織は、指揮命令系統が タテ 軸と ヨコ 軸からなる二元的指揮命令系統の組織をいう。職能別と事業部制を併用した形態である。つまり、タテ 軸の事業部制組織に対して、ヨコ 軸として職能別部門組織を横断して編成される (たとえば、第一事業部の製造・営業、第二事業部の製造・営業など)。

[ 参考 ]
 事業部に対して独立企業に近い権限を与えた制度が 「カンパニー 制度 (division company system)」 である。
 ソニー 社が 1994年に導入して注目された。
  (1) 事業部 (カンパニー) は、社内資本をもち、本社に利益配当する。
  (2) 事業部 (カンパニー) は、経理・人事・企画を独力でおこなう。

 
分権化は、トール な (tall) 構造を フラット な (flat) 構造に変える。

  (1) トール な構造と フラット な構造は対概念である。
  (2) トール な構造と フラット な構造のちがいは、監督の幅である。
    a. 従業員数 < 管理者数 ---> 監督の幅が小さい (トール な構造)。
    b. 従業員数 > 管理者数 ---> 監督の幅が大きい (フラット な構造)。

 
ネットワーク 組織は職能別組織・事業部制組織・マトリックス 組織のそれぞれの強みを満たすことを狙っている。

 職能部門別組織や事業部制組織や マトリックス 組織は、ヒエラルキー (階層) 構造である。
 ヒエラルキー 構造の限界を打破しようとして導入された形態が ネットワーク 組織である。ネットワーク 組織は、職能部門別組織や事業部制組織や マトリックス 組織のそれぞれの強みをすべて満たすことを狙っている。

  (1) 職能部門別組織の強みは、専門化・効率化にある。
  (2) 事業部制組織の強みは、環境適応能力にある。
  (3) マトリックス 組織の強みは、経営資源の効率的配分にある。

 
組織形態は、「自前主義」 から 「アウトソーシング」 へ移行している。

 職能部門別組織・事業部制組織・マトリックス 組織は、「自前主義」 を前提にしているが、ネットワーク 組織は、(価値連鎖のなかにいる企業の資源や能力を利用する) 「アウトソーシング (outsourcing)」 を前提にしている。

 
ネットワーク の形態には、以下の 3つがある。

  (1) 内部型 ネットワーク (職能部門間、事業部間、SBU 間の相互関係)
  (2) 安定型 ネットワーク (親企業と下請け企業の間の系列関係)
  (3) 変動型 ネットワーク (独立企業間の相互対等な協調関係)

[ 参考 ]
 「参加的組織」 という言いかたもあるが、事業部制組織や マトリックス 組織が環境適応能力を目的にしているとすれば、「参加型組織」 は、従業員の労働意欲の向上を目的とした組織形態である。
 ちなみに、SBU とは、Strategic Business Unit の略称である。SBU については、後日、述べる。



[ 補遺 ] (2008年 1月 1日)

 ネットワーク 組織の連結度を以下に一覧しておきます。
 (拙著 「IT コンサルタント の スキル」 263 ページから抜粋転載)

┌────┬──────────┬───────────┬───────────┐
│弱い    │カンパニー制組織  │EOS        │eコラボレーション  │
│        ├──────────┼───────────┤コーディネート形態  │
│        │事業部制組織    │VC         │競争的協力関係    │
│        ├──────────┼───────────┼───────────┤
│        │マトリックス組織  │FC         │アウトソーシング   │
│        ├──────────┼───────────┼───────────┤
│強い    │職能部門別組織   │系列化        │JV、株式保有、M&A│
├────┼──────────┼───────────┼───────────┤
│連結度  │内部型       │安定型        │変動型        │
└────┴──────────┴───────────┴───────────┘
 VC (ボランタリー・チェーン)
 FC (フランチャイズ・チェーン)
 JV (ジョイント・ベンチャー)

 
 1990年代のなかばに、インターネット が普及して、有力な経営手段となってきました。インターネット・ビジネス (あるいは、e-ビジネス) は、以下の 3つに分類されます。

 (1) インターネット・コマース (commerce)
 (2) インターネット 接続 ビジネス
 (3) インターネット 関連 ビジネス (電子認証 サービス、決済 サービス、広告など)

 インターネット・コマース には、以下の 2つの形態があります。

 (1) BtoC (Business to Consumer) [ 企業と個人のあいだの取引 ]
 (2) BtoB (Business to Business) [ 企業と企業のあいだの取引 ]

 インターネット・コマース は、現代社会において、ひとつの事業形態として確立されてきました。
 そして、インターネット・コマース は、ビジネス・モデル (正確には、ビジネス・メソッド) という言いかたを普及してきました。ビジネス・モデル という言いかたは、1980年代でも使われていて、1990年代のなかばから使われはじめた ビジネス・モデル と混同している人たちもいるようです。1980年代に使われた ビジネス・モデル は、「Enterprise Business Model」 のことをいい、CSF (Critical Success Factor) を考慮して、事業として具体化しなければならない functions を階層構造的に記述した モデル のことを云います。いっぽう、1990年代なかばから使われてきた ビジネス・モデル は、「Business Method」 のことをいい、「ビジネス 関連発明」 のことをいいます。最近では、ビジネス・モデル という言いかたは、どうも、この 2つの概念を統合しているようですね。
 さて、ビジネス・モデル は、以下の 4つの形態に分類できるようです。

 (1) アウトソーシング
 (2) アライアンス
 (3) コーディネート
 (4) ダイレクト

 アウトソーシング・アライアンス・コーディネート は BtoB で、ダイレクト は BtoC です。

 アウトソーシング は、コア・コンピタンス を実現するための BtoB です。コア・コンピタンス とは、得意な領域に経営資源を集中することを云います。アウトソーシング の積極的な戦略は、コア・コンピタンス を狙っていて、消極的な意味では、固定費の変動費化のために使われることが多いようです。

 アライアンス は、「協働」 とか 「共生」 を前提にして、以下の 2つの形態があります。

 (1) 垂直的統合形態
 (2) 水平的統合形態

 垂直的統合形態は、SCM (Supply Chain Management) を狙った BtoB です。この形態を BtoC に適用すれば、CRM (Customer Relationship Management) や QR (Quick Response) や ECR (Efficient Consumer Response) になります。
 水平的統合形態は、経営資源の相互提供を目的にした BtoB で、e-コラボレーション とも云われていて、共同研究や共同販売という形態をとるようです。

 コーディネート は、統合形態 (アライアンス) に比べて企業群の提携力が強くないのですが、統合形態 (アライアンス) が定型的形態であるとすれば、コーディネート は一過性の非定型的な提携を仲介する BtoB です。
 コーディネート の典型的な例として、3PL (Third Party Logistic) があります。3PL とは、倉庫や輸送手段を所有しない業者が、物流の最適化を計量して、荷主と輸送業者を仲介する形態です。BtoC では、ネット・オークション が代表例でしょうね。

 ダイレクト は、いわゆる 「中抜き」 の BtoC です。ダイレクト の典型的な例が 通販や e-トレード 証券 です。

 さらに、e-ビジネス が従来の──インターネット を使う以前の──ビジネス 形態に比べて特徴としている点は、「マーケットアウト・プロダクトイン」 形態でしょうね (この点については、後日、述べます)。





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