2003年11月 1日 作成 「仕事の組織」 と 「人間の組織」 >> 目次 (作成日順)
2008年 2月 1日 補遺  

 
 (1) 経営管理は、「共同作業の統率」 を目的としている。

   「共同作業の統率」 は、仕事の組織として、「経済的合理性」 の追求にある。
   「最大の効果を最小の費消で実現する」 という 「合理性」 原理を前提にして、仕事が組織される。

 
 (2) 仕事を組織する やりかた として、以下の 3つの手法が、歴史上、転換点となった。

   (2)-1 テイラー (Tayler, F.W.) が導入した科学的管理法
   (2)-2 フォード (Ford, H.) が導入した移動組立法
   (2)-3 ファヨール (Fayol, H.) が提示した 5つの管理概念

 
 (3) テイラーは、成り行き管理に対して、科学的管理法を導入した。
   すなわち、「標準」という理念を確立して、経営管理機能を専門化した。

 
 (4) フォード は、生産の標準化を徹底して移動組立法 (ベルト・コンベヤー 式) を導入した。

   (4)-1 第一次大戦後、大量生産体制を実現するために、労働能率の向上が論点になった。
   (4)-2 フォード は、テイラー の 「標準」 理念を生産工程全体に拡大適用して、以下を実現した。

       単一製品の原則
       部品の規格化・互換性
       設備の標準化
       作業者の工程順配置
       運搬方式の合理化
       作業時間の規則化

 
 (5) ファヨール は、「管理」 を、以下の 5つに類別して、経営管理を原理的・統合的に解析した。

       予測
       組織
       命令
       調整
       統制

 
 (6) いっぽうでは、(フォード が達成した 「合理性」 とは、べつの流れがあって、)
   「ホーソン 実験」 の データ を使って、「人間関係論」 が提示されるようになった。

   (6)-1 「人間の組織」 が考慮されるようになった。
   (6)-2 メイヨー (Mayo, E.) や レスリスバーガー (Roethlisberger, F.J.)。

 
 (7) やがて、「仕事と人間」 の組織論 (行動科学的組織論) が形成されるようなった。

   (7)-1 組織と環境との相関関係が研究対象となった。
   (7)-2 組織は、環境と相互作用を形成する 「オープン・システム」 として考えられるようになった。
   (7)-3 環境との関連のなかで経営を解析しようとするようになって、「意思決定論」 が形成された。

 
 (8) マーチ=サイモン (March, J.G. と Simon H.A.) が意思決定論の基礎理論を最初に提示した。
   ふたりは、「管理人 モデル」 と 「満足規準の原理」 を提示した。

   (8)-1 「管理人 モデル」 とは、経済学のいう 「経済人 モデル」 に対する アンチ・テーゼ である。
   (8)-2 人は、「合理的判断」 の 「最適規準」 を前提にした意思決定をしないことを示した。
   (8)-3 人の判断は、「完全に合理的」 であることはできないので、現状で 「満足できる」 判断で
       あるとみなす (「満足規準」)。
   (8)-4 この考えかたは、以後、アンソフ (Ansoff, H.I.) の経営戦略論のなかに継承された。





[ 補遺 ] (2008年 2月 1日)

 本 エッセー では、経営学において、「意思決定論」 が出てきた歴史的流れを まとめてみました。
 経営管理の目的は、「共同作業の統率」 です。そして、「経済的合理性」 が ふたつの観点 (「仕事の組織」 と 「人間の組織」) から検討されてきて、やがて、ふたつの観点が 「仕事と人間」 の組織論 (行動科学的組織論) として形成され、さらに、「環境」 との関連のなかで 「意思決定論」 が出てきて、「経営戦略論」 へと拡大してきました。もし、それぞれの学説に興味を抱いたなら、それぞれの文献を読んでみて下さい。

 私は、本 エッセー で、それぞれの学説を詳細に調べることを目的とした訳ではなくて、私の興味は、「経営戦略論」 が 「経営計画」 の延長線上で出てきた訳ではない、という点にあるのです。たぶん、組織は、環境と相互作用を形成する 「オープン・システム」 として考えられるようになったという点が転換点なのでしょうね。そして、この考えかたは、私の仕事 (事業過程・管理過程のなかで使われている 「情報」 を、データベース として、「構成する」 仕事) に対して多大な影響を与えました。すなわち、「構成された」 データ が、事業過程・管理過程の 「意味」 を示すのであれば、その構成は、当然ながら、(構成そのもの-の 「issue-solution」 を検討するだけではなくて、さらに、) 環境適応力を検討しなければならない、という点が主眼になると。
 戦略が、環境のなかで、「制約された合理性」 として示されるのであれば、戦略を立てる 「『一般手続き (アルゴリズム)』 など無い」 ということを意味しているのであって、戦略の パターン (型) などない、ということです。具体的な与件を、都度、丁寧に分析するしかない、ということです。「戦略」 が重視されるようになって、マネジメント の職責は、「効率」 の追求ではなくて、「効果的」 であることを説いたのが ドラッカー 氏です。ドラッカー 氏曰く(参考 1)

    外部に世界における本当に重要な事柄は、単なる傾向なのではない。それは傾向の中に見られる変化で
    あり、この質的な変化が、結局、組織およびその努力の成功・不成功を決定するのである。ところで、
    このような変化は、まず肌で感じとられなければならないのであって、数量的にはとらえることはできず、
    (以下、略)

    電子計算機は論理を扱う機械であって、まさにこの点がその強みでもあるが、また同時に、その限界でも
    ある。外部での重要な事象というものは、電子計算機 (このことは他のいかなる論理的な機械にもあて
    はまる) が処理できるような形式においては、把握することができないのである。

 オリヴァ・ワイト 氏は、システム・エンジニア の仕事ぶりに対して、以下の皮肉を述べています。(参考 2)

    今日、あまりの多くの システムマン (system people) が自分自身を 「システム 設計者」 である
    と考えている。つまり、彼は ビジネス や コンピュータ について、隅から隅まで知り尽くしていると
    自惚れている。(略) ビジネス を責任持って扱ったことは一度もないくせに、「それをどう扱うべき
    か」 を知っていると大変な自信を持っているのだ。

 ふたりの意見は、われわれ システム・エンジニア が肝に銘じておくべき至言でしょうね。

 
(参考 1) 「経営者の条件」、野田一夫・川村欣也 訳、ダイヤモンド 社、1966年。
(参考 2) 「コンピュータ は経営に役立っているのか」、吉谷龍一 訳、日刊工業新聞社、1977年。





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