2004年 3月16日 作成 価格 (price) >> 目次 (作成日順)
2008年 6月16日 補遺  

 

 
1. [ 市場を考慮した ] 製品価格の算出法には、以下の 3つがある。

 (1) 「コスト志向価格」 法 (売価 = 原価 + 販売管理費 + 利益)
 (2) 「需要志向価格」 法 (需要を考慮する)
 (3) 「競争志向価格」 法 (競争相手の価格を参考にする)

 
2. 戦後、日本の製造業は 建値制 (メーカー 希望小売価格) を使ってきた。

 (1) 卸売業者や 小売業者を コントロール する。
 (2) マージン 率を保証する。

 
3. 建値制を切り崩したのが ディスカウントストア である。

 (1) 建値制では、実勢消費者価格が低下すれば、マージン や利益も低下する。
 (2) 建値制では、ブランド の価値が逓減すれば、実勢消費者価格も低下する。
 (3) 割引制では、実勢消費者価格を下げれば、ブランド の価値も低下する。

 
4. 値引きから ブランド を守るために、製造業は価格政策として オープン・プライス 制を導入した。

 (1) 価格が揺らげば、ブランド の価値は低下する。
 (2) ブランド が短命化すれば、生産計画が立てにくい。
 (3) そのために、価格の安定化が論点になる。

 
5. 価格政策としては、以下の 2つがある。

 (1) 「上澄み吸収価格」 政策 (skimming pricing) [ 初期高価格政策 (initial high pricing)]
 (2) 「市場浸透価格」 政策 (penetration pricing) [ 初期低価格政策 ]

 
6. 「心理的価格」 として、代表的な以下の 3つがある。

 (1) 名声価格 (prestige price) [ たとえば、ブランド とか。]
 (2) 慣習価格 (customary price) [ たとえば、缶 コーヒー は、120円とか。]
 (3) 端数価格 (odd price) [ たとえば、2,000円ではなくて、1,980円とか。]





[ 補遺 ] (2008年 6月16日)

 価格政策には、以下の 2つがあります。

 (1) 価格設定政策 (新規価格を設定する)
 (2) 価格管理政策 (設定価格を マーケット のうごきに対応して変える)

 価格設定政策には、本 エッセー の最初に述べた・以下の 3つの政策があります。

 (1) 「コスト志向価格」
 (2) 「需要志向価格」
 (3) 「競争志向価格」

 ちなみに、コスト 志向価格では、コスト に上積みした利潤のことを マークアップ (mark-up) と云います。一定の マークアップ を上乗せして売価とする コスト 志向価格政策のことを cost-plus pricing と云います。

 需要志向価格の典型的な価格制として、本 エッセー の最後に述べたように、以下の 3つがあります。

 (1) 名声価格
 (2) 慣習価格
 (3) 端数価格

 競争志向価格には、模倣価格政策 (price imitation policy) や追従価格政策 (price following policy) がありますが、競争相手の価格を単に模倣・追従するのではなくて、状況次第では、さらに低めの価格を設定することもあるでしょうね。

 本 エッセー では、ディスカウントストア が建値を崩したことを示しましたが──その対抗策として、メーカー が オープン・プライス 制を導入したのですが──、価格に関して、ここ 10年くらいの現象では、いわゆる 「百均 ショップ」 (百円均一) が マーケット に対して、多大な影響を及ぼしました。私も 「百均」 を愛用しています──値段が安ければ、品質が悪いということを 「安かろう悪かろう」 というふうに言われてきたのですが、「百均」 の品は、その格率を反故にしました。私は日用雑貨の多くを 「百均」 で購入していますし、「百円均一」 というのは、確実に慣習価格になったと思います。家庭で夕食を作るのが私の役目になっていますが、スーパー・マーケット で買物をする際──食材だけではなくて、衣料品や家庭用品も見て回ったりしますが──、私が それらの品物を購入する判断のひとつは、1,000円という単位です。1,000円を超えているかどうかが、私の最寄品 (低関与・低判断力) に対する上限判断値になっているようです。最寄品 (低関与・低判断力)に関して──ときには、買回品 (中関与・中判断力) に関しても──、私に限らず、たぶん、多くの人たちにとって、100円と 1,000円が購買慣習の判断指標になっているのではないでしょうか。

 価格管理政策では、「価格弾力性」 が使われます。
 需要と供給は、(嗜好品や日用雑貨などを除けば、) 価格に依存していると、私は経済学で教わりました。経済学では、「『価格の変化割合 (b = 冪/ p)』 と、それに対応して起こる 『数量の変化割合 (a = 冫/ q)』 との関係 R (a, b) 」 を 「価格弾力性」 と云います──そして、「a ÷ b」 (すなわち、数量の%変化を価格の%変化で除した数値) を 「弾力性 (elasticity)」 としたのが マーシャル A. だそうです。価格弾力性は、価格を変化したときに収入の変化が どうなるのかを調べることができるので、大切な経済計算指標のひとつとされているそうです。なお、弾力性の計算は、以下の簡便法を使うことが多いそうです。

  (需要量の変化 ÷ 平均需要量) ÷ (価格の変化 ÷ 平均価格).

 = [ (q1 − q2) ÷ { (q1 + q2) ÷ 2 } ] ÷ [ (p1 − p2) ÷ { (p1 + p2) ÷ 2 } ]
 = { (q1 − q2) ÷ (p1 − p2) } × { (p1 + p2) ÷ (q1 + q2) }.

 そして、その計算式の値が以下の いずれであるかを判断します。

 (1) 弾力性 (弾力性計数の絶対値) > 1
 (2) 弾力性 (弾力性計数の絶対値) < 1

 (1) であれば、需要は弾力的で、価格競争は有効であるということになり、(2) であれば、需要は非弾力的で、価格切り下げは ききめ がない、ということになります。

 [ 具体例 ]
 価格が 100円のとき、需要が 10,000個であり、価格を 80円にしたら、需要が 20,000個であったとすれば、価格弾力性計数は −3 となる。

 { (10,000 − 20,000) ÷ (100 − 80) } × { (100 + 80) ÷ (10,000 + 20,000) } .

 3 > 1 だから── 3 は、−3 の絶対値です──、価格切り下げは効果的である、ということです。
 もっとも、この程度の計算であれば、それぞれの事態──事態1 (価格 100円、需要 10,000個) と事態2 (価格 80円、需要 20,000個)──の収入 (利益率) を計算して比較すれば、どちらが収入を増大するかを簡単に計算できるので、わざわざ、弾力性を計算するまでもない話ですが、、、。

 ただ、もし、需要が非弾力的であっても、価格を上昇して弾力的にして、総収入を増大することもできるし──この戦略を 「戦略弾力的」 としましょう──、逆に、需要が弾力的であっても、ブランド 力を強めて、非弾力的にすることもできますので──この戦略を 「戦略非弾力的」 としましょう──、弾力性計算は役立つのは確かです。
 私は、「『戦略弾力的』 → 『戦略非弾力的』」 という手順で、私の コンサルタント としての値決めをしました。





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