1. 多国籍企業の意義
(1) 多国籍企業は、以下のように定義されている(国連、1984年)
- 2 つ以上の国のなかに、独立した法人を所有する。
- 1 つ以上の中枢機関(意思決定機関)が経営する。
- 所属する法人が資本所有などの形で結ばれていて、知識・資源・責任を共有する相互関係にある。
(2)海外投資をする動機には、以下の点がある。
- 原材料・エネルギー を獲得する。
- 新たな市場を開拓する。(注1)
- 生産 コスト が低い生産拠点を獲得する。
- リスク を横断的に分散する。(注2)
(注 1) 「大量生産-大量販売」 形態を維持するために規模の経済性を実現する。
(注 2) 例えば、日本の売上減は米国の売上増で補填できる。ただし、逆機能もある。例えば、為替変動など。
2. 多国籍企業には、以下の 4つの形態がある。(参考)
- インターナショナル 企業 (アメリカ の企業に多い)
- マルチナショナル 企業 (ヨーロッパ の企業に多い)
- グローバル 企業 (日本の企業に多い)
- トランスナショナル 企業
3. インターナショナル 企業には、以下の特徴がある。
- 海外事業を 「遠隔地の前線基地」 と考える。
- 本社は、海外に営業所を備えた国内企業である。
- 経営戦略の基本路線は、「(本国での) 技術革新」 にある。
4. マルチナショナル 企業には、以下の特徴がある。
- 国ごとにちがう経営戦略を採用する。
- 海外支店の経営者は独立的な企業家である (現地の人材が経営者である)。
- 国ごとの マーケット に対する適応力は強い。
しかし、経営資源の共有ができないので、効率を低下する危険性がある。
- 経営戦略の基本路線は、「差別化」 にある。
5. グローバル 企業には、以下の特徴がある。
- 世界共通市場の製品を扱い、本社の工場が世界向けに生産 (R&D と製造) する。
- 選好の標準化を狙っている。
- 経営戦略の基本路線は、「効率化」 にある。
6. トランスナショナル 企業には、以下の特徴がある。
- 資源と経営は、(効率と適応性を同時に実現するために) 国々に拡散されている。
- 拡散された資源は、世界規模の ネットワーク 網を使って運用される。
(参考) この 4つの形態は、以下の文献をまとめた。
MBA の グローバル 経営 [ TRANSNATIONAL MANAGEMENT ]、
クリストファー A. バートレット、スマントラ・ゴシャール 共著、梅津祐良 訳、
日本能率協会 マネジメントセンター、1998年。