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A long tongue, a short hand.

 
 1980年代半ば、CASE (Computer-Aided Software Engineering) ツールが流行になった。CASE ツールは、構造化手法を自動化して、SDLC (System Development Life Cycle) の工程自動化を目指した。歴史的な結末は、CASE ツールが、当時の技術では、実現できなかったことを示した(そして、今も、CASE ツールが目的とした点は実現されていない)。

 CASE ツールのなかで、上流工程の作業を自動化するツールもあった。すなわち、業務分析の作図 (モデル作法) を、コンピュータ (パソコン) を使っておこなうツールである。上流工程の作業では、業務分析のほかに、トップダウン手法として、企業モデル (Enterprise Business Model) の作成が提唱された。

 企業モデルは、CSF (Critical Success Factor) を考慮して、事業 (funciton) の構造を階層図として描く手法である。階層図は、6階層として描くことが通論であった-- 6階層は、以下の階層とされた。

 (1) funciton area
 (2) function
 (3) process
 (4) activity
 (5) procedure
 (6) task

 6階層を、すべて、トップダウンに (上位から下位に向かって) 作成する やりかた もあるが--詳細な課業 (task) に至るまで、すべての構造を、トップダウン的に作成することなど、無理なことであって、空論に過ぎない--、小生が関心を抱いたやりかたは、上位 4階層をトップダウン的に (設計図として) 作成して、下位 2階層をボトムアップ的に (現状記述として) 作成して、4階層目 (CSF を加味した今後の設計図) と 5階層目 (事業の現状) を対比する やりかた であった。

 トップダウン的な上位 4階層が、どうして、4階層なのか、という点を考えてみてほしい。最上階は、アプリケーション単位 (たとえば、購買とか生産とか販売とか財務とか労務など) が記述されるので、上位 4階層は、実質的には、3階層である--部品表の最上位が「製品」を示して、レベル 0 とされ、2階層目がレベル 1 になることと同じである。

 さて、3階層は、概念を整理するために、都合の良い階層である--すなわち、大分類・中分類・小分類に対応する。いっぽう、下位 2階層は、事実を記述するためには、都合の良い階層である--すなわち、事物と (事物の) 集合に対応する。

 以上のように検討してみれば、(新しい CSF を対象にして記述された階層を除けば、) 最下位 (事実の記述) 以外は、集合 (あるいは、概念) を整理する階層である。したがって、「(最下位の) 事実が正確に記述されていれば」、概念の整理が混乱していても、事業の構成を理解しにくいということであって、事業の中身を間違うことはない。しかし、最下位が的確に記述されていなければ、上位階層が、どれほど端正に整理されていても、事業の中身を正しく理解することはできない、という点を肝に銘じてほしい。

 形式的体系の記述は、「構造」の記述が論点になるので、システム・エンジニアは、往々にして、整理を目的としている階層ばかりを注目するが、現実を的確に記述できなければ、事業環境の変化に対して、現状のなかに潜んでいる問題点を感知することもできないし、 CSF を達成するための資源が入手できるのかどうかも判断できない。

 では、「現実を的確に記述する」ということは、どういうことなのか、を考えてほしい。「業務を記述した図が、ほんとうに、業務を『網羅的に (漏れがないように)』記述しているかどうか」という点を検証する やりかた を考えてほしい。

 
 (2004年5月16日)

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