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Don't put the cart before the horse.

 
 論理設計に先立って、概念設計として、(システム化の対象となっている) 業務を記述するのであれば、業務の記述図(アウトプット)は、網羅性を保証していなければならない。

 前回 (5月16日)、業務そのものを対象にして、粗い構造図を描くことが無意味であることを述べたが--仕事の最小単位とされている「task」自体の範囲をきめることがむずかしいので、いきおい、構造図は、作成した人の価値観が混入するから--、それでも、エンドユーザの仕事 (の中身) を、どうしても知りたいのであれば、エンドユーザが「作業日報」を作成すればよい
 作業日報とは、エンドユーザ1人1人につき、(1週間を単位にして、) 3週間ほど、実際にやった仕事および実際の労働時間を記述してもらうレポートである。作業日報の形式は、以下のとおり。

 

仕事 合計
受注伝票作成   ・・      
           
合計             30

 


 作業日報になかに記述された労働時間に対して、縦計と横計を計算する。作業日報には、1週間単位の労働時間合計が記述される。したがって、作業日報を、3枚、記述するなら、3週間の労働時間を基礎にして、平均労働時間を計算すればよい。

 記述から漏れた仕事がなかったどうか、という点は、標準労働時間 (たとえば、40時間/週) と実際労働時間を対比すればよい。たとえば、前述した例では、実際労働時間が30時間/週であるから、比率は70%になる [ 30 ÷ 40 = 70% ]。
 この比率が70%以下であれば、記入漏れがあると推測できる。いくつかの実例から判断すれば、比率は、たいがい、80%前後になる--実際の労働時間のなかで、会議のために移動していたとか、新聞を読んでいたとか、タバコを吸っていたとか、コーヒーを飲みながら仕事仲間と世間話をしていた、というようなことを作業日報のなかに記入しないので、85%を越える比率になることは、まず、ない。

 比率が70%を下回るようであれば、エンドユーザと再確認しなければならない。
 比率が70%を越えていれば、まず、記入漏れがないので、作業日報のなかに、以下のように、「EDP化」欄を追記して、コンピュータ化する仕事を検討すればよい--「EDP化」欄のなかに、○ をした仕事がコンピュータ化の対象となる。

 

仕事 合計 EDP 化
受注伝票作成   ・・      
             
合計             30  

 


 作業日報の「仕事」欄のなかに記入される中身は、エンドユーザごとに、まとめかたが区々 (まちまち) となる。粗いまとめかたもあれば、事細かな記述もある。しかし、まとめかたは、そもそも、統一できない--逆に言えば、そういうことを対象にしてDFDなど作図できる訳がない。
 大切な点は、「記入漏れがない (網羅性が実現されている)」ということを検証する点である。それでも、業務の体系をまとめたい、というのであれば、「通論」の文献を参考にしながら、作業日報のなかに記述されている仕事を体系化すればよい--ただし、体系化の作業は、ゆうに、2ヶ月以上を費やす作業になることは覚悟したほうがいい (笑、そして苦笑)。

 以上に述べたように、現状の記述は、システム・エンジニアがやる仕事ではない。(責任もって仕事をしたことのない) システム・エンジニアが、エンドユーザから仕事の中身を聴取して的確に記述できる訳がない。前回 (5月16日) も述べたが、実地の仕事が的確に記述されていれば、形式的体系の上位階層は、概念のまとめなのだから、もし、どうしても、事業の体系化をしたいというのであれば、(エンドユーザが作成した作業日報を基礎資料にして、) 概念のまとめをシステム・エンジニアがやればよい。ただし、小生は、そんな作業は無意味だと思っている。
 なぜなら、近代の事業経営は、事前報告 (計画)・経過報告・事後報告という管理過程のなかで、事業が統括されているので、報告 (情報) を観れば、事業の中身を判断することができるから。業務分析をやりたがるSEは、自らが事業に関する知識がないので、業務の流れを記述しながら、事業に関する知識を得ようとしているのか--そんなことは、馬の前に馬車をつなぐような愚考であって、事業の知識がなければ、事業の体系化など、できる訳がないのだが--それとも、事業を、まったく、最初からやり直そうとでも考えているのか、、、(謎)。

 
 (2004年5月24日)

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