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Gut no fish till you get them.

 
 キャリア・パスとして、DA (Data Administrator) は、プログラマを体験していなければならないのか、と問われたら、「否」というのが返事になるでしょうね。プログラマの職は、DAになるための前提ではないし、DAの職は、ほかの職を前提にしていない。
 プログラマは、プログラマとして、専門職であり、DAは、DAとして、専門職である。DAになるための前提は、DAとしての技術力であって、プログラマとしての技術力ではない。

 したがって、20歳代の人たちが、DAの仕事を担当して良いはずです。実際、小生が関与したプロジェクトでは、就職して2年目の人が、データ設計技法 (T字形ER手法) を習得して、広範なデータ構造を設計しました。データ設計技法を習得することは、むずかしい学習ではないので--もし、データ設計技法を使うのが むずかしい としたら、そのデータ設計技法が、技術として、未熟である、ということになりますが--、事業の管理過程に関する知識があれば、データ構造そのものを作ることは、さして、むずかしい作業ではない。
 しかじかの 「情報 (帳票、画面など)」 が、しかじかのデータ構造になる、というのは文法規約であって、さほど、むずかしい技術ではない。そういう技術を巧みに こなすことができたとしても、DAである、ということにはならないでしょうね。

 事業の管理過程に関する「標準的な(通論の)」 知識 (購買管理、生産管理、販売管理、労務管理、財務管理) を習得していることは、DAとして、当然の前提です。実際の事業を理解するために、あらかじめ、なんらかの参照知識 (Frame of Reference) があれば、理解しやすい。ちなみに、小生の本棚を観たら、データ設計技法の書物に比べて、事業の管理過程に関する文献のほうが、数は多い。

 さて、しかじかの 「情報 (帳票、画面など)」 が、しかじかのデータ構造になる、というのは文法規約であって、さほど、むずかしい技術ではないし、そういう技術を巧みに こなすことがDAの才識ではない、と前述しましたが、DAの仕事が むずかしい理由は、「現状」を記述したデータ構造のなかに潜んでいる問題点を「感知」して、ソリューションを提言する、という点にあります。潜在的問題点を感知して具体的なソリューションを提言する という生産労役は、技術として語ることができない。

 おそらく、どの仕事も、専門職として成立しているなら、「全ク奥旨ヲ知ラズ」--根本の性質とか、最良の技巧などを、「語ることができない(曰く、言い難し)」--と言わざるを得ないのではないでしょうか。
 もし、根本の性質や最良の技巧を語ることができ、だれでもが理解できるなら、専門職などは、魅力のない仕事になっているでしょうし、もはや、だれも、興味を抱かないでしょう。
 「全ク奥旨ヲ知ラズ」状態に至るのは、20歳代・30歳代では、無理でしょう。20歳代・30歳代では、技術を確実に習得して、的確に使う実地体験を積むしかない。しかし、技術を確実に習得しないで、体験数の多さを誇るのは、無能の証でしかない。

 練習問題は、あくまで、技術そのものを確実に使いこなす効率化の練習であって、技術を効果的に適用する練習ではない、という点を注意してください。技術を的確に使う (技術の効果) は、実地に営まれている事業のなかでしか問うことができない。そして、当然ながら、実戦は、練習の延長ではない。実戦では、つねに、技術の「ききめ」を問われる、という点を忘れないでください。

 「一般的な企業」という実態はない。われわれが仕事をする相手 (clients) は、つねに、個々の企業です。実戦では、「通論」的知識の豊富さを誇ることも、以前の成功体験を誇ることも、あなたの仕事に対する評価点にはならない。
 DAとして、悪い見本を列挙することは、たやすいのですが--「べからず」集を綴ることは、たやすいのですが--、良い見本を示すことは、むずかしい。というのは、それぞれの事業には、それぞれの環境 (事業環境と技術環境) のなかで、それぞれ、固有の問題点が潜んでいるので、それぞれの目的を効果的に実現するためには、それぞれの事態のなかで、対応しなければならない。良い見本を得るためには、「良き師 (mentor)」を探すしかない。

 エンジニアは、技術力があれば、往々にして、独立自尊の道を歩むようですが、そういう歩みができるのは、才識豊富な少数の人たちです。小生は、「一匹狼」と思われているようですが(苦笑)、30歳代には、数人の師 (mentor) の指導を得ました。彼らの指導を得て、小生は、DBMS に関して、確実な運用技術を得ることができたし、データ設計に関して、豊富な知識を得ることができました。20歳代・30歳代では、技術力を養ういっぽうで、「良き師 (mentor)」を探すようにしてください。

 
 (2005年 4月16日)

 

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