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Play a devil's advocate.

 
 コンサルタントは、あくまで、キャタリスト (catalyst) である。すなわち、コンサルタントは、プロフェッショナルとして意見を述べて、依頼主 (clients) が、自らの力 (ちから) を駆使して、問題 (problem および issue) に対するソリューションを考える手助けとして作用する。
 言い換えれば、書物に記述されている理想的なソリューションを提示するのが、コンサルタントの役割ではない。

 コンサルタントが、現実的な問題点に対して、理想的なソリューションを提示することは、実に、たやすい。しかし、現実的なソリューションは、「制約された環境」のなかで選ばれなければならないし、しかも、ユーザの理解したことが上限である。

 もし、コンサルタントが、理想的なソリューションを提示して、ユーザが、そのとおりにやって失敗しても、「かれら (ユーザ) には、そのやりかたを理解する実力がなかった」と言い逃れすれば、コンサルタントの実力を疑われることはない--ユーザが力不足であった、というふうに、責任を転嫁できるから。

 理想的なソリューションを語ることができるために、コンサルタントと呼ばれている職業人ほど、コンサルタントとして危険な人物はいない。逆に、仕事の細かな手続きを熟知していて、ユーザとの折衝も巧みなのだが、「経営」の感覚が欠如しているコンサルタントもいる--こういう人物も、コンサルタントとして、危険人物である。外国の文献を翻訳して、それを講釈しているだけで、コンサルタントと呼ばれている人々もいる。また、学者 (研究者) としては、研究不足なので、コンサルタントになった人々もいる。だが、いずれも、コンサルタントには値しない。

 コンサルタントは、依頼主に対して、考えることを迫るのが正しい役目である。そして、コンサルタントの理想形は、devil's advocate を演じることができる、という役割である。すなわち、ユーザが考えているソリューションに対して、「わざと」、反対して、ソリューションを、様々な観点に立って検討できる、というのが devil's advocate としての役割である。
 コンサルタントに対してソリューションを仰ぐようでは、ユーザは一人前ではない。ユーザが、自ら、考えたソリューションを、様々な観点に立って検証するために、コンサルタントを雇うようになれば、ユーザも一人前である。そして、そういうユーザと仕事をすれば、コンサルタントも、ますます、思考力を問われることになる。

 
 (2005年 6月 8日)

 

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