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前提知識
現実世界 (現実的事実) を対象にして、なんらかの モテ゛ル を作る際、以下に述べる 3つの世界が存在する。
(1) 第一世界 (物的世界、すなわち 現実的世界)
(2) 第二世界 (心的世界、すなわち 観察者・解釈者)
(3) 第三世界 (客観的世界、すなわち モテ゛ル ・客観的世界)
第一世界と第二世界のあいだに相互作用があり、第二世界と第三世界のあいだに相互作用がある。それを論証した人物が ホ゜ハ゜ー 氏 (Popper, K.R.) である。カルナッフ゜ 氏 (Carnap, R.) は、「意味関係」 を、以下の 2つに切り離した。
(1) 表現関係
(2) 指示関係
カルナッフ゜ 氏が示した 「意味関係」 を、ホ゜ハ゜ー 氏が示した 「第三世界」 モテ゛ル を使って記述すれば、以下のようになる。
(1) 第二世界 (解釈者) と第三世界 (モテ゛ル) のあいだには、
「表現関係」 が成立する。
(2) 第三世界 (モテ゛ル) と第一世界 (事実) のあいだには、
「指示関係」 が成立する。
モテ゛ル は、以下の 2つから構成される。
(1) 語彙 (論理学的語彙と観察述語)
(2) 文法 (生成規則)
語彙 (観察述語) が、現実的世界の対象に対して指示関係を示す。
● システム・エンシ゛ニア の視点
さて、以上の知識を前提にして、いまから、少々、「ぶっそうな」 話を述べます。
モテ゛ル として、もし、語彙 (観察述語) が、あらかじめ、「情報」 として、表示されていて、かつ、文法 (モテ゛ル の生成規則) が明示されていれば、「情報」 さえ提示されたならば、モテ゛ル が生成されるので、解釈者 (の認知力) が関与する余地はない、ということになるでしょう。
以上の状態 (解釈者の認知力を消去すること) が実現されるためには、「第三世界」 に対して、その前提を シフト しなければならない。たとえば、事業過程 (購買過程、生産過程、販売過程など) と、それを管理する管理過程 (購買管理、生産管理、販売管理など) との関係を考えてみれば、事業過程は 「第一世界 (事実)」 であり、管理過程は 「第三世界 (モテ゛ル)」 であり、それらの 2つの世界では、相互作用があります。
次に、「第三世界」 の前提を シフト します。すなわち、「第三世界」 の管理過程を、「第一世界」 として扱い、管理過程 に対して、1つの構造を与える 「第三世界」 を考える、というふうにします。管理過程が、事業過程に対して、「情報」 体系として作用しているのであれば、「情報」 に対して、構造を与える、というふうにします。
管理過程のなかで使われている 「情報」 は、語-言語ですから--ほかにも、像-言語とか音-言語もありますが、「情報」 のほとんどは、語-言語ですから--、語-言語を分析する手法を、モテ゛ル として、考えれば良い、ということになりますね。すなわち、モテ゛ル は、語-言語のなかで、語彙を認知する やりかた を示して、語彙を使って 「正しい」 文を構成する文法を示せば良い、ということになります。
さて、TM を知っている人たちは、ここまで、読んできたら、TM が、そういうふうな モテ゛ル であることを気づいたでしょう。TM は、(「第三世界」 である) 管理過程--つまり、「情報」--を、第一世界として、「情報」 に対して構造を与える 「第三世界」 (テ゛ータ 構造) を作る手法です。そうすれば、「第二世界」 である 「SE の認知力」 を抹殺することができる。つまり、「SE の認知力」 の恣意性を消去できる。さきほど、「少々、ぶっそうな話」 と言ったのは、TM が 「第二世界」 を消去することを狙っている手法であることを示唆していました。
事業過程・管理過程のなかで使われている 「ことばの意味 (ことばの使用)」 は、SE の認知力で揺れるような対象ではない。そして、そういう考えかたを、最初に示した人物が、ウィトケ゛ンシュタイン 氏 (Wittgenstein, L.W.) です。
少なくとも、「現状を記述する」 という作業では、システム・エンシ゛ニア の視点なぞいらない。
(2005年10月23日)