私は、システム・コンサルタント の仕事を、独立不羈の状態で--大組織のような後ろ盾もない状態で--、20年以上、やってきましたが、コンサルタント になるための必要条件は、それほど難しい訳ではないと思っています。
「IT コンサルタント」 になるための前提は、非常に明確です。以下の 3点を習得していれば良いということです。
(1) 事業の 「現実を正確に記述する」 やりかたを習得している。
(2) 事業過程・管理過程に関する 「高度な」 専門知識を習得している。
(3) 論理的に考えることができる。
一人あるいは数人の システム・エンジニア が観た 「像」 が 「事業の現実」 にはならない。作図では、つねに、以下の 2点が担保されていなければならないでしょう。
(1) 網羅性
(2) 検証可能性(数学的には、無矛盾性・完全性)
したがって、一人あるいは数人のSEが観た像を「真」とする訳にはいかない。この点は、本 ホームページ のなかで くり返して訴えているので割愛しますが、「真」であるためには、作図は、以下を実現していなければならないでしょうね。
(1) 構造の妥当性
(2) 値の真理性
事業を記述した図は、以上の 2点を実現していなければならない。そのためには、まず、網羅性と完全性が担保されていなければならない。いわゆる J-SOX 法も、「財務報告に係わる正確性」 として、以上の 2点をもとめています。
J-SOX 法は、本来の狙いとして、「財務報告に係わる正確性」のなかで、網羅性と検証可能性を担保する 「内部統制」 を狙っています。J-SOX 法は、業務 フロー 図を強制した訳ではないのです。米国の SOX 法は、業務 フロー 図などの多量の ドキュメント をもとめたのですが、「費用対効果」 を考えたら、かならずしも、事業を効果的・効率的に進めることにはならなかったので、日本の J-SOX 法では、その先例 (SOX 法) を鑑みて、「SOX 法とは違う所見」 を採用しました。ところが、どうしたことか、コンピュータ 業界では、SOX 法と同じ アプローチ を導入しようとしています。おそらく、いわゆる ERP パッケージ が、販促のために、そういう アプローチ をそそのかしているのでしょう。
前述した 3点 (「事実を正確に記述する」 こと、事業過程・管理過程の知識、論理的に考えること) に話しをもどせば、コンピュータ 業界のなかに 「まともな」 コンサルタント が少ない理由は、「事実を正確に記述する」 ことが、そもそも、実現されていないからです--フロー 図や ユース・ケース などは、単なる 「お絵描き」 手法であって、モデル (modeling) ではないでしょう。まず、「現実を正確に記述する」やりかたを習得しなければならない。
次に、「現実を正確に記述したら」、事業過程・管理過程に関する 「高度な」 専門知識を 「参照項」 として、「現実の」 構造の矛盾点・不備 (structural inconsistencies、structural defects) を感知できるようにしなければならない。
そして、「構造上の矛盾点・不備」 を直したら、次に、環境変化と構造を対比して、環境変化と事業との ズレ (maladjustment) を感知して、事業を一歩進める ソリューション を提示しなければならない。そのときに、「論理的に考える」 力がなければならない。
「論理的に考える」 力は、当然ながら、学習しなければ体得できない。日本語を話せるからといって、日本語で論理的な思考ができる訳ではない。「論理的に考える」 力を養うためには、数学・論理学・哲学・語学を 「意識的に」 学習しなければならないでしょうね。コンサルタント の地力は、「論理的に考える」 力だと思っていますし、数学・論理学・哲学・語学を どれほど本気で学習したか が コンサルタント の地力を左右すると私は思っています。
(2006年 9月23日)