「データ 解析」 という言いかたがされていますが、「解析 (analysis)」 という 「ことば の使いかた」 を考えてみましょう。
TM (T字形 ER手法) の作図法では、まず、実体主義的な観点に立って、entity を定立して、次に、entity のあいだで 「関係」 を結ぶ手順になっています。しかし、この手順は、作図 (diagramming) としての手順であって、「データ 解析」 の手順とは逆に組んであります。
「解析」 とは、数学的な論法の一つであって、証明しなければならない対象 A が存在しているとき、A が成り立つためには、B1 が成り立たなければならないことを示し、さらに、B1 が成り立つためには、B2 が成り立たなければならないことを示すというふうに、以下のように、順次、対象を導出する手順です。
A → B1 → B2 → ... → Bn.
そして、A を、終いには、「既知の ことがら」 Bn に帰着する やりかた を 「解析」 と云います。この やりかた は、数学的な (幾何学の) 作図題で使われています。
ちなみに、TM (T字形 ER手法) では、「既知の ことがら」 Bn として--すなわち、最小単位たる 「打ち止め」 として-- entity を考えています。entity は、認知番号を付与された 「合意された、既知の ことがら」 とされています。そして、A が 「情報 (帳票、画面など)」 です。
作図題というのは-- 小学生・中学生だった頃の幾何学を想い出して下さい --、与えられた道具 (たとえば、定規と コンパス) を 有限回 使用して、与えられた条件に適する図形を描く問題です。そして、作図題では、「作図題の完全解 (complete solution of problem for construction)」 という規則が守られなければならない。「作図題の完全解」 は、以下の 3つの手順を守らなければならない。
(1) ソリューション と思われる図の描きかたを示す (作図)
(2) 作図された図形が ほんとうに ソリューション であることを証明する (証明)
(3) ソリューション と思われる図のほかに ソリューション がないことを示す (吟味)
(1) では、ソリューション が出た (図形ができた) という前提に立って、その図に関する必要条件を 順次 調べるという 「解析」 の手順に従います。
本 エッセー では、作図題を例にして 「解析」 を述べてみたのですが、およそ、なんらかの主張 (ソリューション) があって、その主張を証明するなら、「解析」 の手順に従うでしょうね。
さて、TM を 「作図題の完全解」 の観点から検討すれば、(1) が tentative modeling (文法に従って作図すること) とされ、(2) および (3) が semantic proofreading (構造図と 「現実の物」 とのあいだで指示関係を調べること) とされています。そして、「解析」 の手順 (対象を、順次、導出する手順) として、TM は、リレーションシップ を前提にしない作図を認めていません。というのは、生成規則・指示規則を示さない--すなわち、対象を、順次、導出しない--作図法は、「解析」 とはいえないから。
もし、1つの 「情報」 を 1つの複文と考えて、そして、1つの複文が いくつかの単文から構成されて、かつ、複文と単文とのあいだに 「構文論的 プログラム」 が成立して、かつ、複文と単文とのあいだで 「解析」 の手順が守られていれば、「思考、命題および作図は、すべて正確に同じ レベル にある」 (ウィトゲンシュタイン) というふうに言い切っても、間違いではないでしょうね。
(2007年 1月23日)