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Bad excuses are worse than none.

 

 TM (T字形 ER手法) を作るときに、私が最大に注意を払った点は、「私智ヲ去ル」 という点でした。すなわち、現実の事業過程を記述するために、モデル を作るひとの 「視点・判断」 を できるかぎり最小限にしたいという点が私の狙いでした。極限の言いかたをすれば、(システム・エンジニア の私智に頼った) いわゆる 「業務分析」 を抹殺するのが私の狙いでした。そういう狙いを込められた TM が (業務分析を仕事にしている) システム・エンジニア たちに承知されないことを、私は、あらかじめ、想像していました (笑)。

 モデル は、「個体と関係」 を使って記述されますが、個体は事業過程 (正確には、管理過程) のなかで、事業過程に関与している人たちが合意して認知している対象であって、システム・エンジニア が恣意に作る対象ではない。
 もし、システム・エンジニア が事業過程のなかで認知されている対象を業務分析のなかで エンドユーザ から訊き出すというのであれば、わずか数ヶ月の調査などは 「参与観察 (participant observation)」 に値しない。そして、もし、その程度の業務分析を 「参与観察」 であると言うのであれば、システム・エンジニア の酔心にすぎないでしょうね。

 私智で計らった体系が どれほどに精緻であっても、私智で計らっているかぎりでは、物 (事業過程) と辞 (情報、モデル) は、そもそも、乖離してしまっている。事業が どのように営まれているかという点を知りたいのなら、事業過程に関与している人たちが、どのような ことば (情報) を使って、「意味を伝達しているか」 を調べたほうが健全な常識に沿っているのではないでしょうか。

 
 (2007年 2月16日)

 

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