私は、TM (T字形 ER手法) を推敲しているなかで、(「構文論 (Syntax)」 と対になる) 「意味論 (Semantics)」 を検討して、ひとつの著作を 2005年に出版しました。その著作のなかで、以下の 2つの概念を検討して、TM のなかに導入しました。
(1) 事実的な 「F-真」
(2) 導出的な 「L-真」
これらの概念は、カルナップ 氏 (「意味論」の大家) が提示しました。
「モデル」 は、生成規則 (構文論) と指示規則 (意味論) を備えていなければならない。「真」 概念の観点から言えば、生成規則にかかわる 「真」 概念が 「L-真」 で、指示規則にかかわる 「真」 概念が 「F-真」 です。そこで、「真」 概念を軸にして、2005年に、「TM の体系」 を以下のように整えました。
(1) 指示規則に従って、「F-真」 とされる個体を認知する。
(「真」 とされる 「集合の範囲」 をきめる。)
(2) 「F-真」 たる個体を前提にして、
生成規則に従って、「L-真」 とされる構成を作る。
(構文論で モデル を作る。)
(3) 指示規則に従って、
「L-真」 とされる構成のなかで、再度、「F-真」 となる個体を検証する。
(意味論で モデル を推敲する。)
以上のように、TM は、正統な・正当な (すなわち、学問的な) モデル 理論を守って作られています。モデル は、コンピュータ のなかに実装されるのだから、当然ながら、モデル は、無矛盾性・完全性を実現していなければならないでしょうね。
事業を分析している システム・エンジニア たちに対して、私が問いたい点は、「はたして、あなたの作った モデル が 『正しい』 という証明をしてください」 という点です。システム・エンジニア の恣意的な 「解釈」 は、「意味論」 ではないでしょう。
TM は、「現実の事態」 に対して、まず、「真」 とされる個体を定立して、それ以後の モデル 作成手続きでは、セマシオロジー (「モデル → 事実」) 的な接近法を使っています。「モデル → 事実」 では、モデル を作ってから、「事実 (現実の事態)」 と対比しますので、「事実」 と対比しやすい 「個体の認知」 を導入します。そのために、「個体の認知」 では、(管理過程で導入されている) コード 体系の付番を使いますので、コード 体系のなかに定義されていない個体は、VE (みなし概念) として扱うことになります。
ただ、VE を適正に作る手続きは、構文論を離れた手続きなので--言い換えれば、だれもが同じ VE を作れる訳ではないので--、TM の体系から外して、TM の拡張 (TM’) としました。
TM は、「事実 (現実の事態)」 に対して、「モデル → 事実」 という接近法のなかで、「真」 概念を崩さないように、体系を整えられました。
「モデル」 という ことば を使っていながら、「真」 概念に対して鈍感な システム・エンジニア たちが多いのを観て、私は、かれらの仕事の 「ありかた」--エンジニア としての仕事の ありかた--を 訝 (いぶか) しく思っています。
(2007年 8月16日)