TM (T字形 ER手法) は、「キー」 概念を使っていないので、実地の システム 作りでは使えない、という意見を言ったひとがいたそうです。
TM は、「キー」 概念を使わなくても、いままで、数億 ステップ の システム 作りで実地に貢献してきました。「キー」 概念を使わなくても、ききめ を実証してきましたので、実務上、「キー」 が a must であると私は思っていない。
そして、TM は、モデル として、理論上、以下の手続きで構成されています。
(1) 「真とされる集合」 を作る。
(2) 「真とされる集合」 を前提にして、生成規則を適用して構成する
(構文論で、「L-真」 を構成する)。
(3) 「L-真」 の構成に対して、指示規則を適用して、構成を推敲する
(意味論で、「F-真」 を験証する)。
(1) では、認知番号 (個体指示子) を使って--すなわち、コード 体系のなかで定義されている管理番号を使って--、個体の集合を作ります。ただし、そのようにして作られた集合は、(たしかに、実 データ が存在しているので、) 「事実」 なのですが、事業過程に関与している人たちが 「合意して」 認知した管理対象であって、かならずしも、「現実的事態 (あるいは、個体)」 を指示しているとは限らない。そのために、(3) の意味論的推敲では、たとえ、認知番号が付与されていなくても、モデル と現実的事態を対比したときに、(認知番号を付与された) 個体のなかに、ほかの個体の性質が混入している状態が生じています。
たとえば、以下を考えてみて下さい。
{従業員番号、従業員名称、...、前会社名称、...}.
「会社名称 (前会社名称)」 は、従業員に帰属する性質ではないでしょうね。TM では、或る個体のなかに、ほかの個体の性質が混入しているときに、意味論上、「みなし」 概念を適用して、混入している性質に対して、(その性質が帰属すると判断される) べつの個体を定立します。ただし、除去された--べつの個体に帰属するとみなされた--性質が属する個体に対して、管理過程上、認知番号が付与されていないので、もとの個体の認知番号を継承します。
たとえば、以下のように。
{従業員番号、従業員名称、...}.
{従業員番号 (R)、前会社名称}.
「みなし」 概念を適用する際、TM は、「実存しない コード」 を絶対に使わない。というのは、もし、そういう コード を導入したとしたら、エンドユーザ が合意していない--したがって、事業過程・管理過程で実際に使われていない--恣意的な [ システム・エンジニア が随意に導入した ]、意味論上、無意味な コード だから。
「みなし」 概念を適用して生成された 「個体」 を 「正式な管理対象」 にするかどうかは--すなわち、認知番号 (個体指示子) を付与するかどうかは--、エンドユーザ と協議してきめられる。
さて、もし、認知番号を 「キー」 だとすれば、構文論上、「最適化」 の原則に従って、「同一 キー 構成の ファイル を統合しなければならない」 でしょう。とすれば、上述した 「みなし」 概念は、ふたたび、もとの状態 {従業員番号、従業員名称、...、前会社名称、...} にもどされてしまいます。そうなれば、TM が論理的意味論の言語として 「F-真」 概念を導入した意味がなくなってしまうでしょう。
TM は、「現実的事態を コンピュータ のなかで モデル 化 (realization) する」 手続きを示した 「物言語 (経験論的な言語 L)」 であって、まず、「合意された認知番号」 を使って管理対象を認知して、それらを前提にして構文論に従って暫定的な モデル を構成して、次に、モデル を現実的事態と対比して、意味論上、指示規則に従って モデル を推敲するという論理的意味論の手順を守っています。ポパー 氏は、この手順を、以下のように定式化しています。
P1 → TT → EE → P2
P1は、思考対象となった問題点です。P1からはじまって、TTという 「暫定的なソリューション (あるいは、モデル)」 に進ます。TT は、部分的あるいは全体的に、間違った理論かもしれない。そして、EE という 「誤り排除」--すなわち、実験的 テスト や験証や反証--の篩 (ふるい) にかけられます。TM は、この手順を守って作られています。
そして、指示規則を適用する際に、「合意された」 認知番号 [ すなわち、コード 体系のなかに定義された管理番号 ] を使えば、意味論上の験証がしやすいので、まず、認知番号を使って個体 (真とされる集合) を作っているのであって、認知番号を 「キー」 として考えていない。
ちなみに、論理的意味論は、その性質上、単純な 「一般手続き (構文論)」 を示していますし、かつ、その アウトプット は、「論理 = 物理」 (構成を そのまま 実装すること) の性質を帯びています。
さて、「TM は、『キー』 概念を使っていないから、実地の システム 作りでは使えない」 という意見を言ったひとは、上述した モデル の考えかた・技術の どの点が 「使えない」 のかを示して下さい。私は、数億 ステップ のなかで、それらの技術を使って、システム を ちゃんとうごかしてきたので。
(2007年10月23日)