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Keep a thing seven years and you will find a use for it.

 

 去る10月 5日、拙著新刊を脱稿しました。第一章を 7月 9日に入稿しているので、ほぼ 3ヶ月を費やして執筆したことになります。書名は、「モデル をもとめて (モデル・言語・意味)──論理的に考えるための 12章」 としました。書名が語っているように、本書は、モデル そのものを説明した書物ではなくて、モデル (あるいは、数学基礎論) を本格的に学習するための準備を整えるという書物です。

 執筆を始める前の構想では、数式を使わないで数学的概念を説明しようと思ったのですが、執筆に取りかかったときに考えかたを変えて、基本的な数式を多く盛り込みました。というのは、数式を使わないで数学的概念を説明したところで、数学的概念を理解できる訳じゃないし、数式を使わないで 「要するに」 「わかりやすい」 説明で数学的概念をわかったつもりになるほうが危険だから。学問を修めるというのは──たとえ、それが初級段階であれ [ 否、初級段階だからこそ、と言ったほうがいいのかもしれないのですが ]──、難しいのは当然であって、「宝籤を当てる」 法とは違うでしょう。勿論、みずからの専門領域以外の領域では どういうことが論じられているのかを知る程度であれば、いちいち、詳細な数式を追跡しなくてもいいのですが、少なくとも、モデル を構成する仕事に就いているのであれば、そして、「正しい」 モデル 構成法を学習するのであれば、数学基礎論を学習しなければならないでしょうね。

 本書は、「数学が嫌い」 「数学が苦手」 という人たちに向けて執筆しました。というのは、私自身が数学を苦手で文系を選んだので。ただ、さながらの偶然で、システム・エンジニア の仕事に就いて、しかも、事業過程・管理過程を対象にして モデル を作ることを仕事にしたので、私は数学基礎論を学習しなければならなかった。数学を正規に学習してこなかった私が数学基礎論を学習するというのは非常な労苦でした。ただ、私は、みずからの仕事を きちんとした仕事にしたかったので、(モデル を作る仕事をしているからには、) 数学基礎論を どうしても学習しなければならなかった次第です。その労苦は、頭の悪い私が支払わなければならなかった対価ですが、その労苦たるや、頭のいい人たちには想像できないほどでした。だから、私は、「数学が嫌い」 「数学が苦手」 という人たちに対して、人一倍に同情を感じています。そして、その気持ちが本書を綴る動機の ひとつになっています。

 そして、本書は、ここ数年、コンピュータ 業界の或る領域で、単なる 「画法 (diagramming)」 が モデル として言い立てられてきたことに対する私の抵抗でもあります。

 以前、「反 コンピュータ 的断章」 のなかで、「師友」 について綴ったことがありますが、私は、「TM の会」 の会員たちに感謝したい。だから、私は、「TM の会」 の会員たちに感謝を表すために、今回の著作の 「扉のことば」 として以下の ことば を入れました。

    「TM の会」 に、
     この研究会がなければ、本書は存在しなかったであろう

 そして、「TM の会」 の会員 ガハク (中川さん、美術大学卒) が本書の挿絵を描いてくれました。挿絵は、それぞれの章ごとに一枚ずつ、章の まとめ を一瞥で把握できるような絵になっています。かれのすばらしい挿絵が私の拙い文を補ってくれるでしょう。

 今後 2ヶ月くらいで書店に出ると思いますので、お読みいただければ幸いです。そして、本書を足がかりにして、モデル を本格的に学習する人たちが少数でもいいから出てきてほしいと 願っています。

 
 (2008年10月 8日)

 

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