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Many speak much who cannot speak well.

 

 本居宣長は、「玉勝間」 のなかで、「おのれとり分て人につたふべきふしなき事」 を綴っています。(参考)

     わたくしは、道についてのことも、歌についてのことも、賀茂真淵
    先生の教えの趣旨によって、ただ古書を考察し、会得 (えとく) し
    ただけであって、その家相伝の伝え事などといって伝授を受けた
    ことは何もないので、その家その家の秘伝などというものはいっさい、
    どういうものだか、一つだって知っていない。したがってまた、特別
    に人に何としてでも、世間に広めたいものだと思うので、古書を研究
    して理解し得たと思うだけのことは、みな書物に発表して、これっ
    ぽっちも残したり隠したりしていることはないのである。もしも、わたく
    しについて学問をしようと思う人があるなら、ただわたくしの著わした
    書物を、よく読めばよい。それ以外には、教えなくてはならない個条
    はないのである。

 私 (佐藤正美) は、宣長の言に対して同感を抱いています。
 TM (T字形 ER手法の改良版) を学習しようと思うひとがあれば、拙著を読んでいただければ十分であって、それ以外の 「別伝」 などない。書物は、たいがい、一般向けに綴るので、「入門書」 として綴られていて、書物に綴られている以上の知識が割愛されることが多いのですが、拙著に関して言えば、「なにも隠されていない」 と謂っていいでしょう。幸いにも、拙著を出版してくださった ソフト・リサーチ・センター 社は、拙著に対して なんらの制限を課さなかったので──この点を、私は感謝しています──、私は、思う存分に、私の意見を述べています。

 TM に関して言えば、たぶん、拙著 「実践 クライアント/サーバ データベース 設計 テクニック」 (1993年) で原型を公表して、以後、「RAD による データベース 設計技法」 (1995年)、「T字形 ER データベース 設計技法」 (1998年)、「データベース 論考 [ データ の設計技法: 数学の基礎とT字形 ER手法 ]」 (2000年)、「データベース 設計論 [ T字形 ER: 関係 モデル と オブジェクト 指向の統合をめざして ]」 (2005年) および 「モデル への いざない」 (2009年) という一連の出版のなかで、私はT字形 ER手法の間違いを正して、かつ、モデルの更なる正確性・単純性を実現するために改良を続けてきました。したがって、過去に出版された拙著に較べて、最近の拙著のほうが TM (T字形 ER手法の改良版) の現状を示しています。そして、言い換えれば、以上の一連の拙著を読んでいただければ、私が、どういう間違いを犯して、どういうふうに改訂して、さらに、数学の どういう概念・技術を使って TM を正確に・単純にしてきたか の軌跡を辿ることができるでしょう。だから、もしも、TM について、その根底にある考えかたを学習しようと思うひとがあるならば、ただ、拙著を読めばいい、ということです。それ以外には、別段の仔細はない。

 TM の技術のなかで、1点だけ数学的 ソリューション になっていない文法があります──その点は、哲学的 ソリューション になっています。この点については、本 ホームページ のあちこちで言明してきたので、ここでは割愛します。TM の基本的な考えかたは、数学の技術の観点で謂えば、以下の諸点に集約されています。

  { 個体指定子、全順序・半順序、切断、多値、L-真・F-真 }.

 数学を知っていれば、TM は、どうってこのない・たわいもない──すなわち、数学の基本技術しか使っていない──技術です。ただ、TM を使っている人たちのなかには、TM を まるで 「深遠な」 思想のように思い違いしている人たちもいるようです (苦笑)。数学を知らないなら、知らないでいい──拙著において、数学の論・技術を説明している理由は、私が、モデル の定則を作るときに絶対に必要だからであって、TM を使う人たちにまで数学の知識を求めている訳じゃない。TM は 「テクニック」 です──純然たる 「テクニック」 です。それ以上でも それ以下でもない。

 
(参考) 「本居宣長集」 (日本の思想 15)、吉川幸次郎 編集、筑摩書房、大久保 正 訳。

 
 (2010年 5月 8日)

 

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