Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション cosmetics のなかで、以下の文が私を惹きました。
Wherever one wants to be kissed.
Coco Chanel (1883-1971) French dress designer
When asked where one should wear perfume
Coco Chanel, Her life, Her secrets (Marcel Haedrich)
この引用文を読んだ時に、私は思わず ニヤリ と下衆(げす)い笑いを洩らしました (笑)。さすがに Coco Chanel は、お洒落ですね。仕事を終えて、女性と デート した時に、相手の女性がほのかな香水の匂いに包まれていると私は眩 (くら) む [ 快さに うっとりとしてしまいます ]。逆に、仕事をしている時に 「強い」 香水の匂いを放っている女性には閉口します。数年前、或る企業を訪れた時に、エレベータ の中に 「強い」 香水の匂いが籠もっていて閉口したことを思い出しました──そういう 「強い」 香水を使っていた女性がその企業の従業員でないことを祈りたい。男性も香水を使う──私が高校生・大学生の頃には、男性化粧品 マンダム が ウケ ていました。私自身は香水を使わないのですが、男性化粧品の爽快な香りを嫌いではない。
私は、大学一年生の頃から大学院修士終了までの六年間で夏休みと冬休みには、学費を稼ぐために デパート で アルバイト をしていたのですが──紳士服の売り場で働いていました──、売り場では女性従業員は、かならず口紅をつけていました。というのは、蛍光灯の光は顔の生気を消してしまい、化粧をしないと生気のない見目になってしまうので、口紅を塗ることは最低限の身だしなみ (職掌かも) だったようです。
クールビズ が話題になった時に、普段 スーツ しか着ていなかった オジサン たちは いかなる服装にすればいいかを戸惑ったそうです。私は仕事で カジアルウェア を着ているので、世の オジサン たちの戸惑いを想像できなかったのですが、家では、最近、ジャージ しか着用しなくなって、洒落っ気が消えてしまいました──髪の毛が乱れたまま ジャージ を着て首に タオル を巻いて サンダル を履いて駅近くの店に平気で買い物に出向くようになって、身繕いするという意識がほとんど消え失せてしまっています。それが怠惰な事だとわかってはいるのですが、面倒くさいので家では ジャージ で通しています。
ずぼらな私でも若い頃には、ブランド 品を愛用していました── Givenchy を愛用していました (サングラス、ライター、スカーフ、ボールペン、シャープペン など)。たぶん、30才になった頃、ブランド 品を使わなくなったと朧気に記憶しています [ ただ、理由を思い出すことができない ]。ブランド 品を使わなくなったいっぽうで、ブレスレット、ファッションリング、ネックレス を着用していました [ スーツ 姿で! ]。髭をたくわえていたこともあるし、長髪に パーマ を施して カール にしていたこともある。婚約中、カミサン がそういう装飾を好きじゃないと言ったので、止めた次第です。
大阪出張の際に定宿にしている ホテル で、或る日、チェックイン する時に、私の前に 60才代後半と思しき女性が手続きをしていました。その女性は髪の毛を薄紫にそめていました。髪の色が彼女の服装と組みあわさって、すてきな感じがしました。上手な身仕舞いだなあと、私は彼女の品位に惹かれて暫し看取れていました。彼女のように上手に年をとりたいと思いました。
オジサン 連中が居酒屋で酒を呑んでいて、「男が服装にちゃらちゃらしているとは情けない、仕事だよ、男の価値は仕事で決まる」 と熱 (いき) り立ってた オジサン が一人居 (お) ったけれど──彼がいかほどの仕事をしているかは私にはわからないけれど、いい仕事をしているならば、酒を呑んで クダ をまいてはいないでしょう──、仕事ができれば好かれるものだというふうに考えているのは自惚れではないかしら。私は彼の服装を観て、なるほどと納得しました [ 勿論、私は皮肉で言っています ]。ちなみに、私は、彼らの会話を盗み聞きしていたのではなくて、彼らの声が うるさいくらい でかいので、私の耳に否が応でも入ってきた次第です。
はやるかんざし髪かたちより、すぐな心がうつくしい (近世歌謡)
すっぴん の美しさも すてきだけれど、化粧を施した美しさも すてきだと思う──化粧には、自分を美しく見せようとする心づくしが感じられるので。そして、その美しさを最後に包むのが ほのかな香水の匂い。
(2012年 3月16日)