Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション fame のなかで、以下の文が私を惹きました。
If you have to tell them who you are, you
aren't anybody.
Gregory Peck (1916- ) US film star.
Remarking upon the failure of anyone in a crowded restaurant
to recognize him
Pieces of Eight (S. Harris)
In the future, everyone will be famous for 15 minutes.
Andy Warhol (Andrew Warhola; 1926-87) US pop artist.
Attrib.
There is only one thing in the world worse
than being talked about, and that is not being
talked about.
Oscar Wilde (1854-1900) Irish-born British dramatist.
The picture of Dorian Gray, Ch. 1
私は若い頃 (20歳代、30歳代) いずれ有名になりたい [ 勿論、自分がたずさわっている仕事の限られた範囲で、仕事仲間のなかにおいてですが ] と思っていましたが、今の私は還暦を越えて自分には有名になる程の才がない事を思い知りましたし、そして負け惜しみではなくて真底で、有名になる事を嫌悪する感情が強くなっていて、一人の システム・エンジニア (Data Analyst) として生涯を閉じる事に不服はない。
私の 40歳代は、講演・セミナーの講師を多く務め、自著を幾冊か出版した年代で、データベース の職域ではそこそこ名の通った システム・エンジニア でした。そこそこ有名になる事は難しいものではない──世間の期待に添うだけの知識を持っていて、押しだしの強さ (presence) があればよい。そして、大なり小なりの便益を人々に期待させていればよいのです。神様を作るのは信徒たちなのです──自称の神様は、神様じゃない。
私くらいの程度の凡人が多く集まって、その集まりのなかで有名になろうとしても、所詮、ドングリ の背比べにすぎないし、しかも有名になって自分を大衆に晒し続けるという事に対して、いつまでも羞恥を感じないというのは、ばか者に限る。講演者は、ほとんどいつでも、大衆を説得するよりも寧ろ (通説を上手に整えて表現して) 喜ばそうと努めるものです。そして、こう見えたいと思うとおりの姿を示す事によって、見えたいと思ったとおりの (大衆が期待するとおりの) 形が生まれる。冷静に観れば、それは作為に見えて、少し滑稽です──はっきり言ってしまえば、お芝居の舞台なのです。
私が仕事をしている コンピュータ の領域では、最新技術を説く指導者たらんとする エンジニア なるものは、英語が達者で英語の書物をたくさん読んで、現状の技術を古くておくれていると罵って、つねに怒っていて、外国産の理論・技術を祖述し、しょっちゅう若い世代に向かって媚びなければならない。そういう エンジニア には独創的な思想があるわけでもない、いわば英語の翻訳家に終始している──しかも、プロフェッショナル な翻訳家に比べて翻訳はいい加減だけれど、(外国の) 説を要約する事によって曖昧さが隠れてしまう。その結果、どうなるかというと、先駆者として有名ではあるが、張り ボテ にすぎない。エンジニア は有名になる事を考えなくてもいいのです、ひたすら自分の (技術の) ために学習すればいいのです。
先駆者として 束の間 有名になったがために、世間からいったん貼られた ラベル は、以後なかなか剥がす事ができないし、そして、いずれ その ラベル は古いものとして忘れ去られます。自分が有名になったと思っても、世間は一人の エンジニア を追っかけ続けるほど暇ではない。エンジニア は講演の壇上を降りたら、急いで現場へ行って、そこで エンジニア の技術を取り戻すべきです。さもないと、自分が一介の エンジニア である事を忘れて、名が通った事に いい気になってしまう。システム・エンジニア は講演壇の上の感情の のぼせ から、聴衆の視線から、急いで逃げ去って、感情も視線もない (「論理」 の) 世界へ帰るべきです。
(2014年10月 1日)