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Every ship is a romantic object, except that we sail in. (Emerson)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション familiarity のなかで、以下の文が私を惹きました。

    I like familiarity. In me it does not breed contempt.
    Only more familiarity.

    Gertrude Stein (1874-1946) US writer.
    Dale Carnegie's Scrapbook

 
この文が置かれている文脈がないので、この familiarity の意味がつかめないのですが、そもそも familiarity は日本語に翻訳しにくい語です──その辞書的意味は、the state of being well known とか a close relationship とか behaviour that is informal, esp. excessively so という意味で、「よく知られた、ありふれた、馴じんだ、打ちとけた」 という日本語に対応するでしょうね。Familiarity breeds contempt. という言いかたは、諺のような言いかたになっている様です── breed の意味は produce (ちなみに、familiarity breeds contempt は、Pocket Oxford Dictionary の breed の説明の中で例文として掲載されています)、contempt は the feeling that a person or thing is worthless or beneath consideration で、familiarity breeds contempt は 「馴れすぎると物事を軽く見る様になる」 「打ちとけすぎると相手の侮りを招く」 というふうに訳されています (「岩波 新英和辞典」)。

たいがいの人は、初対面や付きあいの浅い他人に対して気怯れするのではないかしら。そして、よそよそしい間柄では、心にもない平静さ・陽気さを示さなければならないでしょう。付きあいでは、他人を不愉快にする行為をしない事──そういう振る舞いは、礼節です。そういう取り繕いに対して嫌悪感を覚えて礼節を軽視して、わざと変人として振る舞う事は若い人に──特に才知豊かな若い人が他人とは違う事を示すために──往々にして見られる振る舞いですが、齢を重ねた時に青年期のそういう振る舞いを顧みて、慙愧 (ざんぎ) に堪えなくなるのではないかしら。私は青年の頃に才知豊かだったとは云えないけれど、変人を気取った、それゆえに付きあいにくい青年であった事は少なからず認めます。そして、還暦をすぎた今の私は、、、I like familiarity. In me it does not breed contempt. Only more familiarity. 勿論、付きあうすべての人々に対して、そうである事はできない事ですが、たびたび会う人々にはそうありたい──人と人との対話なくして、生活はあり得ないのだから。

日本では 「裃 (かみしも) を脱いだ」 という言いかたがあるけれど、それが粗野になる事 (in a rudely familiar way) は厳禁──取り乱したところがあるから、醜く (粗野に) なるのではないか。だから、自分のありのままの姿を見せたいと思うならば、まず外見を抑制して、そうありながらも同時に、懇意になる事ではないか。more familiarity は、馴れ馴れしい (overfamiliar) 事ではない──決して、with too much familiarity の(例えば、use rudely familiar language [ ため口をきく ]) 事ではない。Familiarity という事は、自分を見せる (晒す) 機会が多いという事なのだから。至近距離にて自分をたびたび晒して、魅力が薄れていって飽きられる様な自分ではありたくない。懇意になればなるほど (more familiarity)、相手を魅了する自分でありたい。

 
 (2014年10月16日)

 

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