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Gather the flowers, but spare the buds. (Andrew Marvell)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション Flowers のなかで、次の文が私を惹きました。

    "Tis the last rose of summer
    Left blooming alone;
    All her lovely companions
    Are faded and gone.

    Thomas Moore (1779 - 1852) Irish poet.
    Irish Melodies, 'Tis the Last Rose'

 
    Say it with flowers.

    Patrick O'Keefe (1872 - 1934) US advertising agent.
    Slogan for Society of American Florists

 
 私が 「花」 のような テーマ を扱うことは以前にはなかったことです。私が歳をとって気性が それだけ やさしく (柔軟に) なったということかしら、、、。私の机の上には、薔薇の花が (造花ですが) 一輪 飾ってあります。私は、取り立てて、花が好きという訳ではないのですが、どういう訳か──机の上に薔薇を飾った理由を はっきりと思い起こせないのですが──飾ってあります。そして、それは、生活の実用品ではないのですが、飾っていて邪魔だと思ったことはない。我々は、なにがしかの記念日に花を贈ることが多いし、花屋という職業も成り立っているので、花は我々の生活には欠かせないようですね。「花見」 もあるくらいですから。日本人は、とりわけ 「桜」 と 「菊」 が好きなようですね。私が好きな歌人 西行 は、「桜」 を多く読んでいます──「西行桜」 という謡曲 (能) がありますね。

 花は (即物的な実生活のなかで、実用品に対して) 「無用の用」 だなどという哲学的蘊蓄を披露するつもりはないですし、それを述べるためには、花にまつわる思い出が私には少なすぎる。花は、なにがしかの シンボル として使われる──「桜」 とか 「菊」 が まさにそうでしょう。こういうことを考え始めると、花についての話題が広大になって、私の感想が拡散してしまいます。

 引用文の一つめでは、夏の日に薔薇だけが咲きのこって他の花が枯れてしまったことを歌っていますが、花はいずれ──しかも、短いあいだに──枯れる。その様が我々の人生の比喩 (失恋とか老年とか) として使われることが多いですね。薔薇に託して失恋を歌った 「薔薇のことづけ (Rose nel buio)」 は私の好きな歌です。原曲は、Gigliola Cinquetti さんが歌ってました。私が この曲を知ったのは、高校生の頃で、当時 (NHK の) 「歌はともだち」 の レギュラー だった芹洋子さんが ブルガリア の音楽祭で この曲を歌って賞を獲って、番組のなかで歌っていたのを聴いて、以来 大好きな曲です──♪ 扉を閉じましょう、夢をみた扉、、、 ♪ という歌詞は、私の過去の恋愛を思い起こして身にしみる。

 薔薇に因んで もう一つ好きな曲は、映画 「ロミオとジュリエット」 (レナード・ホワイティング、オリビア・ハッセー 主演)のなかで歌われた 「What is a youth」という曲です──♪ A rose will bloom, it then will fade...♪ の歌詞が妙に記憶に刻まれている。当時は、悲しげな曲だなあというくらいしか思わなかったのですが、今では (齢 64 にもなれば) この歌詞が実感として響いてきます。枯れていく、、、悲しいですね、青年期をうらやむしかないか。今、音楽 (歌謡曲) を聴きながら この エッセー を綴っているのですが、たまたま 「水中花」 (歌手 木の実ナナ) が流れてきました。年配の人たちなら、「宵待草」 (高峰三枝子)、「エリカ の花 散るとき」 (西田佐知子)、「可愛い花」 (ザ・ビーナッツ)、「シクラメン のかほり」 (小椋佳)、「赤い花 白い花」 (やまがたすみこ) などの歌を ご存じでしょう (いずれの歌も私の スマホ に収録してありますw)──花が散る性質に託して失恋を唄った歌が多いようですね。そういえば、映画 「ひまわり」 も記憶にのこっているなあ。

 私が 30歳代の頃 友人 (米国人) と話していて──勿論、英語での会話です──友人曰く、「マサミの話には、歌や映画のことが出てこない」 と言われたことがあった。当時、私は英語の歌・映画について、そんなものは俗なことだと思って、全然、関心がなかった。今この歳になって当時の私を振り返れば、snob としか言いようがない。

 亀井勝一郎さん (文芸批評家) は、私が敬愛する人物の一人ですが、彼の著作のなかに 「思想の花びら」 があります。私は、この書物が私の思考を促してくれるので大好きですし、この書名を大好きです (私の ホームページ の引用句集の題名として借用させてもらっています)。花は我々の心を やわらかくしてくれる。堅苦しいほどの石部金吉を私は嫌いです(←若い頃の自分自身を振り返っての反省です)、花を愛でる余裕 (柔軟心) がほしい。Say it with flowers──つねに心掛けたいと思います。

 
 (2017年 9月15日)

 

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