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He that knows little commonly presumes most. (Thomas Fuller)

 

 Bloomsbury Thematic Dictionary of Quotations セクション Ignorance の中で、次の文が私を惹きました。

    He that knows little, often repeat it.

    Proverb

 
    He that knows nothing, doubts nothing.

    Proverb

 
    What you don't know can't hurt you.

    Proverb

 
    I wish you would read a little poetry sometimes.
    Your ignorance cramps my conversation.

    Anthony Hope (Sir Anthony Hope Hawkins; 1863-1933)
    British novelist.
    Dolly Dialogues

 
    The ignorant man always adores what he
    cannot understand.

    Cesare Lombroso (1853-1909) Italian criminalogist.
    The Man of Genius, Pt. V, Ch. 3

 
 引用文の一番目の意味は 「馬鹿の一つ覚え」、二番目・三番目は 「知らぬが仏」。これらの 「ことわざ」 について考えてみたいことはあるけれど、ここ 10日 (数十時間) ほど ドラマ 「三国志 Three Kingdoms」(全 95話) を観ていて、中国の書物に誘起されて、ignorant という ことば について 「荀子」 の次の ことば を思い出しました──

    多知にして親なく、博学にして方なく、好み多くして定まりなき者は、
    君子は与せず。

 「親なく」 とは親しみがないということ、「方なく」 とは一定の方向 (方面、向き) がないこと。「反 コンピュータ 的断章」 を継続して読んでいらっしゃる人たちは ご存じかと思いますが、私は多才であることを嫌っています──正確に言えば、多才を嫌っているのでなくて、多才であるが故に あれこれ食い散らし状態に陥った 「下手気の抜けぬ未熟柿 (なまじゅくし)」 [ 生半可であること ] を嫌悪しています。有り体に言えば、いったん学び始めたら徹底的に学習し その知る所を審 (つまびら) かにすることを私は心掛けています。

 多才そのものが悪いのではない、多才は色々な分野の知識を増やしてくれ、勉学の進むべき多くの可能性を与えてくれるので、青年期には寧ろ多才であることは好ましいと思っています。しかし、壮年期になれば、ひとつの道において なんらかの実績を示さなければならないでしょう。そうであれば、30歳代半ば頃からは仕事に一途に打ち込まなくてはならない。一事に専念すれば他事には疎くなるでしょう。この世は広いので学ぶことが多いけれど、一事に専念すれば自ずと他事には無知にならざるを得ない。これが英語で云う intelligent ignorance だと私は思っています──A man must have a certain amount of intelligent ignorance to get anywhere.(Charles F. Kettering)。

 Intelligent ignorance は、直訳すれば 「聡明な (知能の高い) 無知」 ですが、今風に言えば 「戦略的無視」(一事を為すために他事と関わることを意識的に停める) に近いでしょう。私は 「荀子」 の言う君子 (「君子は与せず」) ではないけれど、私のような程度の凡人は多才を うらやましく思うけれど、多才であるが故の未熟柿にはなりたくない。

 
 (2019年 6月 1日)

 

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