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Bind the sack before it be full.

 

 「会心の作である」 と、みずから、思うときには、たいがい、筆が滑って、言い過ぎ (carried too far) になっていることが多い。「知的節度」 がない。

 ぼくの著作では、「論考」 以前の書物が、すべて、そうである。それらの書物には、悪臭が漂っていて、再読できない (苦笑)。

 しかし、逆説になるかもしれないが、「筆を抑える」 ということを体得するためには、いくつもの習作を積んでこなければならない--書きながら覚えるしかない。「フ゜ロク゛ラマ は、フ゜ロク゛ラム を作りながら、フ゜ロク゛ラム を覚える」 (Graham, P.) というのは正しい。
 作家は、一作を物して 「文章の名人」 になるのではない。「代表作」 という言いかたは、そもそも、多作を前提にしている。多作のなかで、技術は研ぎ澄まされる。

 
 (2005年 9月 1日)


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