私は随分苦労して来た。 それがどうした苦労であつたか、 語らうなぞとはつゆさへ思はぬ。 またその苦労が果して価値の あつたものかなかつたものか、 そんなことなぞ考へてもみぬ。 とにかく私は苦労して来た。 苦労して来たことであつた! そして、今、此処 (ここ)、机の前の、 自分を見出すばつかりだ。 じつと手を出し眺 (なが) めるほどの ことしか私は出来ないのだ。 (中原中也、「在りし日の歌」 のなかから 「わが半生」) (2006年11月 8日)
とにかく私は苦労して来た。 苦労して来たことであつた! そして、今、此処 (ここ)、机の前の、 自分を見出すばつかりだ。 じつと手を出し眺 (なが) めるほどの ことしか私は出来ないのだ。
(中原中也、「在りし日の歌」 のなかから 「わが半生」)
(2006年11月 8日)