2005年 6月 1日 |
基準編-6 resource と event |
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2010年 5月16日 補遺 |
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(1)
Entity
とは、認知番号を付与された対象である。 Entity である = Df 認知番号を付与されている対象 (個体) である。 (2) Entity は、以下の 2つの範疇とされる。 「Event」 である = Df 性質として、「日付 (取引日)」 が帰属する。 「Resource」 である = Df 「Event」 以外の entity である。 「黒本」 のなかでも、「○○する」 という動詞形は、簡便法であることを、はっきりと、注意しているし、この簡便法では、「resource と event」 を、適切に判断できないという反証 (「分類 コード」) を示したし、簡便法を述べたあとで、的確な 「定義」──「event」 を判断するやりかたとして、time-stamping (DATE) を使うこと──を記述している。或る手法について、意見を述べるのなら、その手法を、正確に、調べるのが、エンジニア として、誠実な態度ではないか。 さて、「resource と event」 概念は、当初、「マスター と トランズ」 という概念を起点にしていた (笑)──そして、その痕跡は、「実践 クライアント・サーバ データベース 設計技法」 のなかで、はっきりと述べられている。というのは、T字形 ER手法は、当初、(コッド 正規形を起点として生まれて、) キー 概念を重視していたし、どちらかと言えば、テーブル 設計技法の性質が強かった。「黒本」 では、次第に、テーブル 設計の領域を離れて、事実的対象を記述する「ER手法 (Entity-Relationship)」 の性質を打ち出しはじめたが、それでも、「参照 キー (reference-key)」 という用語を、いまだ、使っていた。「黒本」 は、いまだ、構文論 (文法) を重視していて、意味論的色彩が、次第に、出てきた過度期の体系であった。構文論としての性質を、徹底的に検討したのが、「論理 データベース 論考」 である。(参考) 「Resource と event」 概念は、そもそも、コッド 関係 モデル の 「関数」 に対して、アンチ・テーゼ として考えた概念である。コッド 氏が、みずから、「関数」 を使えば、半順序が論点になることを述べていらしたので、それを起点にして、「並び」 が論点になる データ (「event」)──時系列として、並べられる データ──と、そうでない データ (「resource」) という性質を考えた。ただ、この考えかたは、詰めがあまい、と思う。というのは、論点を正しく定式するには、「2項関係のなかで、2項の並びが指示する 『関係の意味』 を問う」 べきである。「Resource と event」 を、「関係の対称性・非対称性」 という観点に立って検討できるようになったのは、「論考」 を出版したあとになってからである。「論考」 では、T字形 ER手法を、構文論の観点から検討したので、意味論の検討が手薄になってしまった。「論考」 を出版したあと、burn-out (燃え尽き症候群) に陥って、2年ほど、虚脱感・虚無感のなかで、なにもする気にになれず、引退まで考えていたが、2002年の終わり頃になって、事業を解析する技法として、T字形 ER手法を見直してみようと思い、いよいよ、意味論の観点に立って、再検証することになった。そのために、タルスキー氏・ウィトゲンシュタイン氏・カルナップ氏・クルプキ氏らの著作を、丁寧に再読して──ほかにも、フレーゲ氏・ラッセル氏・ホワイトヘッド氏・パース氏・ポパー氏らの著作を再読して、さらに、分析哲学の文献を、いくつか、読んで──、意味論の検討に取り組んだ。その過程で、モデル の ありかた を考え直すことができた。そして、「関係の対称性・非対称性」 とか 「個体指示子を起点する実体主義」 に関して、知識を増やすことができた。 T字形 ER手法の技術そのものは、TM (および TM’) として整えられても、さほど、変化していないが、TM (および TM’) を正当化する概念として、「3つの世界観」 や 「個体指示子 (認知番号)」 や 「関係の対称性・非対称性」 や 「F-真と L-真」 などを、つよく導入することになった。そのために、TM (および TM’) は、意味論的性質を帯びるようになった。その根底になる概念が、「resource と event」 概念である。
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[ 補遺 ] (2010年 5月16日) 「個体 (entity)」 を 「resource と event」 に類別すること、および 「resource と event」 の定義は、いまでも変わっていない。「resource と event」 に関して、「黒本」 以後、いまに至るあいだで変わった点は、「resource と event」 の性質の説明法です。そして、それらの性質の説明法が変わってきたことに対応して、「関係文法」 の説明法も変わってきました。 まず、「resource
と
event」
の性質の説明法が どのように変わってきたかを以下に概説します。 (1)
関係の対称性・非対称性 「resource と event」 の性質を 「関係の対称性・非対称性」 で説明した拙著が 「赤本」 です。勿論、「赤本 (『データベース 設計論』、2005年)」 を執筆する前から 「関係の対称性・非対称性」 を使っていましたが、「関係の対称性・非対称性」 を使った説明として正式版にしたのが 「赤本」 です。「関係の対称性・非対称性」 は、「関係文法」 において 「関数」 の性質を際立って扱って、個体に適用する 「関数」 を一つではなくて、二つ──「再帰」 を入れれば三つ──使うことを論じた立脚点でした。 ただ、「関係の対称性・非対称性」 のみでは、「関数」 には そういう性質があるという説明になっても、「関係文法」 そのもの-の説明にならないので、「関係文法」 の説明を補強するために、「帰納的関数」 を使う──すなわち、「閉包・特性関数・外点」 を使う──ようにした拙著が 「いざない (『モデル への いざない』、2009年)」 です。 「閉包・特性関数・外点」 を使った説明は、「event」 のための文法 (関数) および 「resource」 のための文法 (関数) を的確にしてくれたのですが、「event」 と 「resource」 とのあいだの文法 (関数) を もっと検討しなければならないことも再認識してくれました。「帰納的関数」 は、勿論、ゲーデル 氏の 「不完全性定理」 で使われた 「原始帰納的関数」 を起点にして生まれた・一般化された関数です。そして、ゲーデル 氏の 「不完全性定理」 が 「ツォルン の補題」 を使っていたことを私は知っていましたが、「いざない」 を執筆したときには、「ツォルン の補題」 そのものを それほど重視していなかった──私の思考は、「不完全性定理」 そのものの証明に向けられていました。 ところが、「いざない」 を出版したあとで、忽然と、「ツォルン の補題」 を使ったほうが、「event と resource」 に適用できる関数的性質を もっと単純に説明できることに気づいたのです。すなわち、「全順序と半順序」 の観点で 「event と resource」 を説明したほうが わかりやすい──勿論、「全順序」 の関数は 「event」 に対して適用され、「半順序」 の関数は 「resource」 に対して適用される、ということ。 いまでは、「event と resource」 の定義および それらに適用する関数は、「全順序と半順序」 の観点で説明しています。そして、「event と resource とのあいだで適用される文法」──言い換えれば、「全順序」 が適用される個体と「半順序」 が適用される個体とのあいだの文法──は、数学的 ソリューション ではなくて、哲学的 ソリューション になっています。その哲学的 ソリューション を与えてくれた説が ウィトゲンシュタイン 氏の説とホワイトヘッド 氏の説と パース 氏の説と デイヴィッドソン 氏の説です。 |
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