200571

基準編-7 entity の配置

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201061日 補遺

 

 

 「Resource event」 概念は、TM および TM’を構成する (定義として導入された) 公理である。
 TM および TM’は、以下の 2点を公理としている。

 (1Entity とは、認知番号を付与された対象である。
    認知番号として、「コード 体系のなかに記述されている管理番号」 を使う。

   Entity である = Df 認知番号を付与されている対象 (個体) である。

 (2Entity は、以下の 2つの範疇とされる。

   Event」 である = Df 性質として、「日付 (取引日)」 が帰属する。

   Resource」 である = Df Event」 以外の entity である。

 
 すなわち、TM では、entity は、関係の対称性・非対称性を示す性質を判断規準にして──「日付」 の帰属性を判断規準にして──、時系列のなかで成立する entity と、それ以外の entity として分類されている。

 時系列のなかで成立する entity は、その性質として、時系列として配列できる、という点が、本節では、「技術的な」 考慮点として述べられている。しかし、この時点で──「event」を時系列に配置した時点で──、データ 設計の勝負点は、「意味論的には」、「event」 ではなくて、(「event」 の補集合として定義された) 「resource」である、という点を強調している。

 「Resource」 そのものは、定義できないので、「event」 に対する補集合として導入されたが、もし、データ 設計法を事業解析法として使うなら、「関係」 のなかで、非対称性を示す 「event」 が解析対象になるのではなくて──というのは、「event」 は、定義によって、過去の歴史的事実であるし、「関係」 として、先行・後続として配列するしかないので──、新たな 「関係」 を作る 「可能性」 を示す 「resource」 が解析対象になることを述べている。すなわち、2項関係 aRb では、a および b が、それぞれ、「resource」 であれば、個々の 「resource」 を、新たに組みあわせて、新たな関係 R を作ることができる。

 T字形 ER図の補助資料として、リレーションシップ の 「網羅性」 を検証するために、「リレーションシップ の検証表」 を作る。「リレーションシップ の検証表」 は、作図の際、リレーションシップ の見落としがないことを検証するために使うのだが、いっぽうでは、「resource」 どうしの 2項関係として、現存している 「event」 (あるいは、対照表) を確認して、現存していない 「event」 (あるいは、対照表)──「event」 (あるいは、対照表) として生成できる「関係の可能性」──を示す資料として使うこともできる。本節では、(「リレーションシップ の検証表」 には言及していないが、) 「『resource』 の新たな組が、新たな『event』を作る」 ことを述べている。

 Entity を 「event resource」 に分類して、「時系列として、『構造』 を記述する」 ことを小生が考えたときには、その考えが妥当かどうか、という点は自信がなかった。小生が、その考えかたに自信を抱くようになった時点は、ホワイトヘッド 氏の考えかた (モーメント 概念) を知った後 (3年ほど前) である。
 ホワイトヘッド 氏は、自然科学が取り扱う対象として、以下の 4つを示している。

 (1) 持続する現実的な事物
 (2) 生起する現実的な事物
 (3) 反復する抽象的な事物
 (4) 自然の法則

 (1) は、たとえば、山だとか岩だとか。
 (2) は、たとえば、日々のなかで起こる出来事とか。
 (3) は、たとえば、色合いだとか、あるいは、なんらかの認知 パターン とか。
 (4) は、万有引力の法則とか、因果律とか。

 TM では、それらの対象に対して認知番号が付与されていれば、(1) および (3) が 「resource」 概念であり、(2) が 「event」 概念である。そして、ホワイトヘッド 氏は、(2) 「できごと」 を時系列として──モーメント の連続として──考えて、(1) が、それらに 「侵入 (ingression)」 する、というふうにみなしている。TM では、「ingression」 を 「関与」 としている。

 この考えかたは、関係主義的である。TM も、「『event』 を時系列とする」 という点では、関係主義的である。というのは、関係の非対称性・推移性を性質の基本にして、「event」 を変項として並べているから。だが、次に、(「event」に対して、) 「resource」 を主体に考えるように、視点が 「転回」 する。この 「転回」 は、実体主義的である。すなわち、実体が一義的であって、実体のあいだに関係が成立する、という見かたに 「転回」 する。この考えかたは、ホワイトヘッド 氏の考えから離れている。そして、この点が、TM の特徴になっている。

 



[ 補遺 ] 201061日)

 本 エッセー の最終で綴られた文 「すなわち、実体が一義的であって、実体のあいだに関係が成立する、という見かたに 「転回」 する。この考えかたは、ホワイトヘッド 氏の考えから離れている。そして、この点が、TM の特徴になっている」 は、「前提」 を明らかにしておかないと misleading になるでしょうね。その 「前提」 とは、「『個体』 は、『合意』 で認知されている」 ということ。私は、エンジニア として実体主義的な考えかたを信じている訳じゃないので。

 その 「前提」 を外さなければ、「entity の配置」 は、基本的に以下のように考えていいでしょう。

 (1event は 「全順序」 (線型順序、あるいは先行・後続 関係) の文法に従う。
 (2resource は 「半順序」 の文法に従う。





 

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