2005年11月 1日 |
基準編-15 アトリビュート の ヌル 値 (null) |
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2010年10月 1日 補遺 |
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Null は 2値 (「真」 および 「偽」 という 2値) を前提にすれば、構文論的には、「対象外」 として扱えば良い。ただ、モデル が、現実的世界を対象としているのであれば、意味論 (「モデル のなかの記号」 と 「現実的世界の事実」 との指示関係) を考慮しなければならない。そして、Null は、意味論的には、多義になる (「undefined」 と 「unknown」 という 2つの意味をふくんでいる)。 モデル が、語意 (term、現実的事実との指示関係を示す記号) と文法 (語意を使って作られる文) を使って構成されるのなら、意味論上、null の多義は消去されなければならない。そのためには、以下の 2つの対応ができる。 (1)
Null
を認めて、4値
(「真」、「偽」、「undefined」
および 「unknown」)
の Logic
を使う。 コッド
関係 モデル は、(1)
を前提にした。そして、T字形 ER
手法は、(2)
を前提にした。 T字形 ER手法は、認知番号 (identifier) を使って、まず、個体を認知することを起点にしているので、実体主義的な考えかたをしている。したがって、認知された個体に 「帰属する性質」 という観点から判断すれば、性質のなかに、null を認める訳にはいかない。 Null は、相違の サブセット として扱い、消去される。 □
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[ 補遺 ] (2010年10月 1日) しかじかの アトリビュート (性質) が、しかじかの個体 (entity) に帰属するかどうかを判断するのは、とても難しい。その判断は、ほとんど 「常識」 に委ねられることになるのですが、まずはとりあえず――なんらかの整えられた尺度で判断できると思わないで――、「常識」 に任せて、アトリビュート を個体に記入するしかないでしょうね。 そして、TMD が一応作成されたら――すなわち、なんらかの 「形式的構造」 が構成されたら――、その 「構成」 (文脈) のなかで、それぞれの個体・それぞれの アトリビュート の ポジション を再検討します。というのは、一つの語の 「意味」 は、全体の文脈のなかでしか定立できないので。たとえば、以下の例 (会社 [ 個体 ] と資本金 [ アトリビュート ]) を考えてみてください。 [ A 案 ] 会社
entity 「資本金」 は、常識で考えて、授権資本のいちぶが払い込まれた状態なので、「会社」 の アトリビュート として考えますが、もし、この TMD で記述されている主体 (企業) が 「財務分析・信用調査」 を主たる事業としていれば、以下の 「解釈」 も考えられます。 [ B 案 ] 会社
entity 会社.
与信.
VE この 「解釈」 は、解析対象になっている 「事業」 の文脈のなかでしか判断できないでしょう。勿論、[ A 案 ] を 「形式的構造」 として実装して、「与信」 は──[ B 案 ] で VE として構成されている クラス 概念は──「会社」 に対する a logical view として アプリケーション・プログラム が生成してもいいでしょう。この判断が、構文論と意味論とのあいだで──「形式」 と 「意味」 とのあいだで──曖昧な [ 判断式がないということ ] 点です。 さて、null は 「状態 (を示す形式)」 であって 「値 (形式に代入される数値)」 ではない、という点を理解していてください。したがって、本来、「状態」と「値」を比較することはできない、という点を理解していてください。そうであれば、null を認めるか (4値 ロジック もしくは 3値 ロジック) あるいは認めないか (2値 ロジック) のいずれの前提をとるかによって、モデル の公理系が当然ながら異 (ち) がってきます。 ただ、null は、本エッセーで述べたように、意味論上、「undefined」と「unknown」 の 2つの 「意味」 を持っています。したがって、null を意味論上正確に扱うのであれば、4値 ロジック を使うのが適切です。あるいは、null を 「形式的構造」 から排除して 2値 ロジック を使うことも適正です。争点になるのは、3値 ロジック 上の null です。3値 ロジック において、null の演算は──特に、null に対する論理否定は──注意を払ってください。 TM は、2値 ロジック を前提にしています。したがって、アトリビュート において null が生じる場合には、null を 「場合分け」 します。null の 「場合分け」 には、以下のいずれかの技術を使います。 (1)
サブセット 本 エッセー では、「サブセット を使う」 としていますが、VE を使う場合もあることを補足しておきます。 |
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