2007年 8月16日 |
特論-15 DA の段位表 |
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2012年 7月16日 補遺 |
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「黒本」 の最終 ページ として、「DA の段位表」 を示した。ただし、「黒本」 のなかでも綴っているように、この段位表は、あくまで、TM (T字形 ER手法) の運用力を知るための ガイドライン にすぎず、システム・エンジニア としての実力を判断するための チェックリスト ではない。 「『DA の認定制度』 を導入してはどうか」 と、かつて、幾人からも勧められた。だが、私には、そういう意図は、さらさら、ない。「黒本」 のなかで綴った以下の文は、いまでも、私の考えかたを示している。 「教育体系」
という観点から言うなら、DA
を育てるには、(「T字形
ER手法」
とはべつの) 領域が大きな比重を この意見は、当然といえば当然の意見である。というのは、システム・エンジニア
は、経営過程 (言い換えれば、事業過程・管理過程・組織過程)
を対象にして、それを 「一般手続き」 として自動化した コンピュータ・システム
を作るのだから、経営過程に関する知識を豊富に習得していなければならない。 DA という語は、ふつう、Data Administrator の略語として使われるが、私は、最近、Data Analyst の略語として使っている。というのは、DA の仕事は──少なくとも、TM を使う DA の仕事は──、管理過程のなかで伝達されている 「情報」 (「ことば」 を使って伝達されている意味) を解析して、「モデル」 を構成することだから。「モデル」 は、構文論 (生成規則) と意味論 (指示規則) を備えていなければならない。TM でいえば、モデル は、以下のように作成される。 (1)
まず、指示規則に従って、事実的な 「F-真」
たる個体を認知する。 すなわち、モデル は、(意味論で生成した個体を前提にして、) 以下の手続きで作られる。 (1)
構文論で作成する。 意味論で推敲するときに、前述した 「経営過程に関する知識」 が物を言う。モデル として作られた 「構造」 が妥当かどうかを検証するためには──「構造」 そのものの無矛盾性・完全性、および「構造」 の環境適応力を検証するためには──、「構造」 を被定義項とすれば、なんらかの定義項がなければ、検証できない。もし、定義項として、過去の システム作りで体験した事例 (あるいは、高々、いくつかの事例を一般化した体験的知識) を用いるならば、そんな対比は、単称の (specific、particular) 2つの システム の対比にすぎない。定義項には、学問的知識 (それぞれの学問領域のなかで 「通論」 とされている知識) を用いるのが適正 (効果的・効率的) である。 私は、「黒本」 を絶版にした。なぜなら、いまとなっては、記述のなかに間違いが多いから。しかし、「はしがき」 のなかで綴った以下の文は、いまでも、私の意見を率直に示している。 思想とか体系とかいう言葉が、以前ほどに信用されなくなった現代においては、技巧とか多数派の形勢とか |
[ 補遺 ] (2012年 7月16日) 今回で 「黒本」 に対する補遺は終わりです。「黒本」 は、技術 (T字形 ER法) を説明した書物ですが、今となっては古くさい感は否めない。「黒本」 は、「論理 データベース 論考」(以下、「論考」) を出版した後で絶版にしました。しかし、今でも (2012年になっても) 「黒本」 は 「論考」 に較べて人気がある様です。TM (T字形 ER法の改良版) を御存じの人は、「論考」 が 「黒本」 を否定した書物である事をわかっているでしょう。「黒本」 は、T字形 ER法を初めて体系立てて説明した書物でしたが、技術上、幾つかの間違いを犯していたし、理論的な説明も充分ではなかった──それらの改正点を 「補遺」 の中で述べてきました。TM は、T字形 ER法の改良版ですが、その体系は T字形 ER法とは まるで べつ物の様に変わりました。TM の体系は、「現時点で」、次の 6つの カテゴリー 構成となっています。 (1)
entity 「黒本」 の 「基準編-2 T字形 ER法の体系」 と較べてみれば、技術そのものは さほど変化していないのですが、用語が TM では、数学用語を全面的に使っています。それが意味する事は、T字形 ER法を数学基礎論の観点で見直して来たという事です。ただし、TM は、数学には存しない 「『関係』 の規約」 を導入しています──その規約は、「黒本」 で述べられた規約と同じです (変化していない)。ただ、T字形 ER法では個体を重視していたのが、TM では 「関係」 を重視して個体は 「関係」 の中で変数として考えられています──即ち、TM は、関係主義の色彩を強めたという事です。そのために、TMD (TM 図) を作成する時に、構文論が先で意味論が後という手続きになっています。しかし、ユーザ 言語を入力とする限りにおいて、その言語を無定義語として扱う事は ナンセンス なので、構文論が先と云いつつも、意味論が 「暗黙の裡に」 併用されます。そのために、TM の作成手続きは、「合意された語彙 → L-真の構成 → F-真の験証」 とされています。本 エッセー の中で、「まず、指示規則に従って、事実的な 「F-真」 たる個体を認知する」 というふうに記述されていますが、間違いなので訂正します──TM では、ユーザ の使う自然言語を (ユーザ どうしで) 「合意された語彙」 と見做 (みな) して、それらを 「観察述語」 と考えて、一つの文 「主題+条件 (あるいは、主語+述語)」 を単位にして (主題のあいだで) 論理演算する、即ち 「関係」 を構成する手続きとしました。そうすれば、構文論 (L-真の構成) が先で意味論 (F-真の験証) が後であるという数学的な モデル 論を流用しやすくなる。数学的な モデル 論に沿った体系にすれば、個々の技術も数学的技術の観点で検討できる。そして、実際、「論考」 を出版した以後に、T字形 ER法の技術を数学的技術の観点で検証して来ました。その結果が、上に記述した体系となった次第です。 TM は、今後も改良を続けるでしょう。現実的事態を形式化する モデル は、現実的事態に対する有効性を常に験証されて、もし、今までの理論・技術では対応できない新たな事態が生ずれば、当然ながら改良されなければならない。私が引退するまで改良は続けられるし、私が引退した後でも TM を継承してくれる人が改良を続けてくれるでしょう。 |
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