民俗学 (概説書) | >> 目次 (テーマ ごと) |
民俗学の全般的な領域を扱った概説書を紹介します。 古い著作も対象としています。 |
[ 読みかた ] (2007年 9月16日)
民俗学は、民間伝承を通じて民族の生活文化の歴史を明らかにしようとする学問ですが、私は、民俗学に関して、専門家ではないので、もとより、好事家的な態度でしか学習していない。
英国の古代研究家 トムズ (William John Thoms) が 「フォークロア (folklore)」 という名称を使ったそうですが、「folk」 概念が どのような人たち (外延) を指示するのかは、争点になってきました。日本では、明治時代以後、「フォークロア」 の訳語として、「俚伝学」 「俗説学」 「土俗学」 などが、当初、使われて、人類学の一分野として研究されてきたそうです。本格的な 「民俗学」 研究は、大正二年 (1913年)、柳田国男 氏らが出版した雑誌 「郷土研究」 が始まりだそうです。
民俗学は、柳田国男 氏が開墾して、文献以外の伝承を手がかりにして、学問として整えました。かれに師事した人たちには、折口信夫 氏 (歌人・詩人)・中山太郎 氏 (新聞記者) らがいます。中山太郎 氏は、文献史料を多用して、性・盲人などをはじめとして、それまで柳田民俗学が扱ってこなかった テーマ を論じて、民俗学の領域を拡げています (主な著作は、「日本盲人史」 「日本婚姻史」 「日本民俗学辞典」)。 また、伊波普猷 (いはふゆう、言語学者・民俗学者) は、沖縄県立図書館の初代館長で、「おもろさうし」 (沖縄本島および周辺島の叙事詩的古謡集 [ 22巻、1554首 ]) を研究していて、かれの研究が柳田国男 氏・折口信夫 氏を沖縄文化に注目させたと云われています。 歴史学・古典文学のほうでは、有職故実の研究が進んでいましたが--この分野では、私は、江馬 務 氏の著作を愛読していますが--、さらに、第二次大戦後に、(衣・食・住などの) 現代生活の風俗を、歴史学の一つの分野として研究することも隆盛してきました--和歌森太郎 氏・坂本太郎 氏 の著作を私は愛読しています (ちなみに、和歌森太郎 氏は、大塚民俗学会の会長を勤めていらした)。 私の読書は、柳田国男・中山太郎・江馬 務・和歌森太郎・坂本太郎の著作を起点にしています。 民俗学の基礎概念は、たぶん、「常民」 と 「ハレ と ケ」 でしょう。「常民」 は、「folk」 のことで、民間伝承の主体のことを指示しますが--この意味で、「民俗学」 は、「常民の学」 とも云われていますが--、「常民」 の解釈は、様々のようです。「民俗学」 が、現代の庶民を対象にするのかどうかという点は、民俗学の シロート である私にはわからないのですが、「常民」 は、昭和 40年くらいまでなら、「先祖から継承した土地を耕作している農民」 の像が浮かびますが、もし、民俗学が現代にも適用できるのなら、現代では、はたして、どういう人たちが 「常民」 になるのかしら、、、。「ハレ と ケ」 にしても、現代では、「ハレ」 という感覚は、ほとんど、喪われてしまったのではないでしょうか--たとえば、正月の行事を例にしても、そうでしょう。西洋化された 「現代の日本」 では、伝統的な風習が、次第に消え去っていっているようですね。そう感じるのは、私が東京近郊で生活しているからかしら。
私は、半農半漁の寒村に生まれ育ったので、私が育った 「村の文化」 のなかで、民俗学の書物に記述されている風習を実感できますが、その風習も、昭和 40年代初め頃までのことでしょうね。 |
▼ [ 史料・概説書 ] ● 日本民俗學、和歌森太郎 著、清水弘文堂 ● 神ごとの中の日本人、和歌森太郎 著、弘文堂 ● 日本人口史、本庄榮治郎 著、日本評論社 ● 現代日本文明史第 18巻 (世相史)、柳田國男・大藤時彦 著、東洋経済新報社版 ● 民衆生活史研究、西岡虎之助 著、福村書店 ● 風土の中の衣食住、市川健夫、東書選書 26 ● 庶民の精神史 (日本の民俗 10)、和歌森太郎、河出書房新社 ● 国民生活史研究 (3. 生活と学問教育)、伊東多三郎 編、吉川弘文館 ● 日本的勤労観、難波田春夫 著、大日本産業報国会 ● 都市と農村 (朝日常識講座 6)、柳田國男 著、朝日新聞社 ● 村落生活の社会構造、上村正名 著、御茶の水書房 ● 同時代の生活史、庶民生活史研究会 編、未来社 ● 近世日本世相史、齋藤隆三、博文館 ● 近世日本 マビキ 慣行史料集成、太田素子 編、刀水書房 ● 日本風俗史、江馬 務 著、地人書館 ● 時代風俗綜覧、江馬 務 著、政経書院 ● 日本風俗志 (上・中・下)、加藤熊一郎、新修養社 |
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