日本史 (辞典) >> 目次 (テーマごと)


 今回は、辞書 (全般) を紹介する。

 なお、民俗学の辞典については、後日、扱う。

 


 ▼ 入門編

 ● 年表式 日本史小事典、芳賀幸四郎 監修、文英堂
  [ 高校生用の副読本 ]

 ● 日本史事典、旺文社

 ● 日本史小辞典、坂本太郎 監修、山川出版社

 ● 日本史小辞典 (角川小辞典-24)、竹内理三 編、角川書店

 ● 日本近現代史小辞典 (角川小辞典-25)、竹内理三 他編、角川書店

 ● 増訂 日本歴史事典、和歌森太郎 編、実業之日本社

 ● 日本史用語辞典、日本史用語辞典編集委員会 編、柏書房
  [「日本史用語大辞典」の簡約版 ]

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 私は、日本史の書物を読んでいて、意味のわからない用語があるので用語辞典を調べるという辞典の使いかたを、ほとんど、しない。用語辞典を使う機会は、たいがい、古文書を読んでいるときに限られています--ただし、古文書と云っても、原本の影印本を私は、まだ、スラスラ と読めないので、読みやすいように活字に印刷された印書なのですが。そういうときには、「日本史用語大辞典 (あるいは、その簡約版である 「日本史用語辞典」)」 (柏書房) と古語大辞典を使います。とくに、地名・藩名・官職名・度量衡単位や時 (四季・月・時刻) などの制度に関する用語は、用語辞典の助けを借りなければ、ほとんど、理解できないでしょうね。用語辞典のそういう使いかたを除けば、私は、「事典」 的な性質の辞書を使うことが多い。

 「辞典と ○○ は新しいほど良い」 という言いかたがあって、たしかに、学問上、新事実・新解釈の導入がなされて、これまでの定説を覆すことも起こるので、辞典は最新版が良いのですが、私は、どちらかといえば、古い版の辞典を多く所蔵していて、それらに記述されている情報を補う (増補する、あるいは修正する) ために、近々に出版された辞典を 2冊か 3冊ほど買い増してきました。

 「事典」 的性質の辞書を使うことが多いと前述しましたが、(古い版ですが) 「増訂 日本歴史事典」 (和歌森太郎 編、実業之日本社 刊、昭和 33年) を私は愛用してきました。この 「事典」 は、編者 (和歌森太郎 氏) が民俗学に造詣の深い歴史学者だったからか、いわゆる 「正史」 (学校教育で教える日本史) と (本書の 「序」 に記されている文を、そのまま、引用すれば、) 「一般的また民俗的な名辞でも、およそ その歴史的由来と意味とが問題になる事項については解説を試みよう」 として、項目を選んだとのこと。たとえば、「序」 のなかで、「阿弥陀で菓子を買って コンパ をしよう」 という文を記して、「阿弥陀割」 が項目になっていることを言及しています。
 「正史」 と民俗学的項目の混成という特徴のほかに、「分類項目一覧」 が もう 1つの特徴になっています。「分類項目一覧」 は、最初に史学の体系に関する項目を まとめて、それから、年表 (時代区分) に沿って、項目を グループ 化しています。たとえば、「史学全般」 として、以下の項目が記載されています。[ 文中の数値は、記載 ページを示しています。]

      史学全般

      歴史学          564
      歴史教育        566
      時代区分        231
      アジア 的生産様式    7
      記録           141
      年号           417
      年表           418
      郷土史          136

 「史学全般」 のあとに、「古文書学関係」 「日本民族の成立」 「考古学関係」 が続いて、それから、「原始社会と文化」 「神話伝承関係」 「大和朝廷の発展」 「大和朝廷渉外史」 「大和国家の社会」 「飛鳥時代」 「古代国家の成立」 「律令制の社会」 「奈良文化」 というふうな年代順の グループ 化で構成され、歴史的項目としては、「現代の世界と日本」 が最後の グループ になって、さらに、(最初の 「史学全般」 に対応するように、) 「学問発達史と歴史関係学」 が出てきて、「諸産業の発達」 「スポーツ・娯楽」 という 「一般的かつ民俗的な名辞」 がまとめられて、そして、「民俗学関係」 「離島」 が最終になっています。

 事典の本体は、項目を五十音順に配列した辞典形式です。したがって、「分類項目一覧」 に示された項目を (事典本体の記載 ページに従って) 順々に読んでいけば、歴史学に関する知識も得られるし、通史として それぞれの時代の特徴も知ることができるし、項目を五十音順に配列した辞典として使うこともできます。ちなみに、「現代の世界と日本」 のなかに記載されている項目は、この事典が出版されたのが昭和 33年ですから、以下の項目です。

      現代           167
      極東軍事裁判      139
      国際連合        187
      ユネスコ         543
      農地改革        420
      毛沢東          527
      文化勲章        465
      湯川秀樹        543

 項目 「現代」 のなかで、年代を明記された歴史的事実としては、1952年 (日米行政協定) が 「最新の」 記述です。いまとなっては、50数年前の できごと であって、年代的には、「古い」 記述ですね。ちなみに、私が誕生した年は、1953年です。ただ、私は、現代史に関して、最新書物を読んで、昭和史・平成史を (平成17年に至るまで) 丁寧に追跡しているので、この古い事典を使うことに躊躇いを感じていないし、逆に、この事典の 「項目の選びかた・まとめかた」 に関して、尊敬の念を抱いています。

 「読書案内」 の 「日本史 (年表)」 のなかで綴りましたように、私の興味は、世相史・家庭史 (新聞で云えば、「社会面」) のほうに注がれています。仕事がら、日本経済新聞を、まいにち、読んでいますが、政治・経済を歴史のなかで観ようという意識は私には薄い。政治・経済が世相史・家庭史に影響を及ぼしていることは事実なのですが、私の視点は、あくまで、「『個人としての』 社会への関与 (生活哲学)」 という点にあるようです。
 そして、「読書案内」 のなかで、私が所蔵している民俗学の文献を リスト・アップ していますが、その リスト は、私が民俗学に興味を抱いていることを示しています。そして、私が そういう興味を抱いているので、「増訂 日本歴史事典」 の 「正史・民俗 混成」 記述を気に入っているのだと思います。

 「増訂 日本歴史事典」 は、「読む事典」 なのかもしれない。実際、私は、この事典を読んでいて、夢中になって読み続けて、読書に疲れて事典を離れたときには (徹夜して) 朝 (7:00) だったという体験をしています。

 





 ▼ 中級編

 ● 日本史研究事典、京都大学文学部国史研究室 編、創元社

 ● 日本史広辞典、日本史広辞典編集委員会 編、山川出版社

 ● 日本史総合辞典、林 隆朗 他編、東京書籍

 ● 角川 日本史辞典、高柳光寿・竹内理三 編、角川書店

 ● 岩波 日本史辞典、永原慶二 監修、岩波書店

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 これらの辞典は、日本史学習を趣味にしている人たちなら、「定番」 として愛蔵している辞典でしょう。
 私は、これらの辞典を所蔵していますが、ほとんど、活用していない状態です。

 「日本史研究事典」 は、私が ワイフワーク としている 「日本人の精神史」 研究を進める際に活用しようと思って買ったのですが、「日本人の精神史」 研究に向かうことのできないまま、事典は埃をかぶっている状態です (苦笑)。
 私の日本史学習は、いまだ、「入門」 段階にとどまったままなので、「初級編」 に記載した事典・辞典を、たまに使いますが、学習を さらに進めるうえで 「中級編」 の辞典を揃えた割には、死蔵したままです。

 





 ▼ 古代・中世

 ● 日本考古学小辞典、江坂輝彌・芹沢長介・坂詰秀一 編、ニュー・サイエンス社

 ● 日本考古学用語辞典、大重初重・戸沢充則 編、柏書房

 ● 日本考古学辞典、日本考古学協会 編、東京堂

 ● 日本古代史事典、江上波夫・土田正昭・佐伯有清 監修、大和書房

 ● 日本古代刑罰事典、菊池克美、新人物往来社

 ● 日本中世史研究事典、佐藤和彦 他編、東京堂出版

 ● 荘園史用語辞典、阿部 猛 編、東京堂出版

 ● 日本荘園大辞典、阿部 猛・佐藤和彦 編、東京堂出版

 ● 国別 守護・戦国大名事典、西ヶ谷恭弘 編、東京堂出版

 ● 考証 戦国武家事典、稲垣史生、新人物往来社

 ● 戦国史事典、桑田忠親 監修、秋田書店

 ● 日本の合戦 ものしり事典、奈良本辰也 監修、主婦と生活社

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 考古学に対して、私は、関心が薄いので、文献を読まないから、せめて、事典・辞典を揃えた次第です。

 「古代」 は、日本史では、奈良時代・平安時代をいい、大和朝廷時代 (原始古代) もふくんだ時代区分です。「封建時代」 (封建制度が社会のしくみになっている時代、鎌倉時代から明治維新まで) の前と思っていいでしょう。「古代」 は、私にとって、「文学」 に対する興味が比重を占めていて、政治・経済 (律令制・貴族政治・荘園制) に対して、私は、ほとんど、興味がない。荘園制は、律令政治下の公有主義的土地制の矛盾から出てきた私有主義的土地経済体であり、領作荘民が武士化して、封建的社会が出てくる土壌になったのですが、荘園制は、制度がむずかしいので、専門辞典を揃えた次第です。

 「中世」 (鎌倉時代・南北朝時代・室町時代) も、私にとって、「芸術」 「宗教」 に対する興味が比重を占めていて、政治・経済 (封建制度、武家政治) に対して、私は、ほとんど、興味がない。「応仁の乱」 のあと、豊臣秀吉が天下を統一するまでの 100年間くらいは、群雄割拠・下剋上の世であって、中国の春秋戦国の世相に喩えて、戦国時代と云われていますが、守護出身の大名たちが政権を握ろうとして相争った動乱の時代で、北条早雲 (関東)・上杉謙信 (越後)・武田信玄 (甲斐)・今川義元 (駿河)・織田信長 (尾張)・朝倉義景 (越前) をはじめとして、中国地方では 毛利元就 (中国地方)、四国では 長宗我部 氏、九州では 大友 氏・島津 氏、東北では 伊達 氏らが勢力を振るって、織田信長が幕府を倒し天下を統一して、かれが明智光秀に殺されたあとで、(信長の家臣) 豊臣秀吉が天下統一を継承した歴史は、世の動乱を収拾していく英雄の物語として、いくども、小説・テレビ番組などの材料になってきました。
 日本人の多くは、奈良時代・平安時代の世相を ほとんど知らなくても、戦国時代の世相を (小説・テレビ番組などを通して、) 詳細に知っているのではないでしょうか。
 ただ、私は、世の動乱を収拾していく英雄たちの壮烈な戦国史よりも、世の動乱のなかで、右往左往しながらも生き抜いた庶民の生活史のほうに対して興味を抱いています。また、芸術・宗教では、「中世的な」 花として、私は、「道元と世阿弥」 に対して興味を抱いています。

 戦国時代の大名領地を 「分国 (ぶんこく)」 といい、荘園制をはねのけて一円知行を進めて形成された領国のことです。そして、分国は、日本全土のなかで、幕府とは無関係に散在していました。領主は国主と云われ、その政務を家務といい、家務を管理する法制度を 「家法」 といい、家老・年寄が家務を担当しました。従臣を家臣 (家中衆) といい、家族的擬制が導入されて、分国の強力な結束がはかられました。それぞれの分国は、それぞれの法制度を導入したので、人民の生活様式は、それぞれの 「国ぶり」 が現れて、全国的均一性の乏しい時代でした。織田信長・豊臣秀吉の 「天下統一」 が実現して、全国経済の段階に進むことになったのです。分国の法制度は、様々で むずかしいので、戦国史の事典を揃えた次第です。

 





 ▼ 近世・現代

 ● 日本近世史研究事典、村上 直 他編、東京堂出版

 ● 近世史 ハンドブック、児玉幸多 編、近藤出版社

 ● 日本近世史辞典、京都大学文学部国史研究室 編、東洋経済新報社

 ● 日本近現代史辞典、日本近現代辞典編集委員会 編、東洋経済

 ● 現代史事典、猪木正道 他編、創文社

 ● 江戸学事典、西山松之助 他編、弘文堂

 ● 江戸東京事典、小木新造 他編、三省堂

 ● 事典 しらべる江戸時代、林 英夫・青木美智男 編集代表、柏書房

 ● 江戸編年事典、稲垣史生 編、青蛙房

 ● 考証 江戸事典、南條範夫・村雨退二郎 共著、人物往来社

 ● 江戸時代の制度事典、大槇紫山 著、歴史図書社

 ● 江戸幕府役職集成、笹間良彦、雄山閣

 ● 江戸町奉行所事典、笹間良彦、柏書房

 ● 江戸町方の制度、石井良助 編集、人物往来社

 ● 三田村鳶魚 武家事典、稲垣史生 編、青蛙房

 ● 三田村鳶魚 江戸生活事典、稲垣史生 編、青蛙房

 ● 江戸の生業事典、渡辺信一郎、東京堂出版

 ● 江戸の医療風俗事典、鈴木 昶、東京堂出版

 ● 江戸物価事典、小野武雄 編著、展望社

 ● 時代考証事典、稲垣史生、新人物往来社

 ● 続・時代考証事典、稲垣史生、新人物往来社

 ● 藩史事典、藤井貞文・林 隆朗 監修、秋田書店

 ● 藩史総覧、児玉幸多・北島正元 監修、新人物往来社

 ● 改訂版 帝国陸海軍事典、大濱徹也・小沢郁郎 編、同成社

 ● 事典 昭和戦前期の日本 (制度と実態)、百瀬 孝 著、吉川弘文館

 ● 事典 昭和戦後期の日本 (占領と革命)、百瀬 孝 著、吉川弘文館

 ● 明治・大正・昭和・平成 事件犯罪大事典、東京法経学院出版

 ● 昭和史の事典、佐々木隆爾 編、東京堂出版

 ● 戦後史大事典、佐々木 毅 他編、三省堂

 ● 戦後世相史辞典、奥山益朗 編、東京堂出版

 ● 新聞記録集成 (明治・大正・昭和) 大事件史、石田文四郎、錦正社
  [ 幕末以後の新聞記録を集成した本については、後日、別途、紹介する。]

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 江戸時代は、私にとって、昭和時代に次いで、興味の高い時代です。江戸時代は、徳川家康が 1603年に幕府を開いた頃から、徳川慶喜が大政奉還に至る 1867年までの 約260年のあいだをいいますが、徳川家という一家の長を将軍とした 260年もの長い時代ですから、誕生から終焉までを一つの lifecycle として前期・中期・後期という見かたをすれば、前期・中期・後期のそれぞれの特徴は、幕藩体制・近世商業と町人・元禄時代・諸学の興隆・町人時代・対外緊張・天保時代・倒幕の形成というふうに--これらは、前述した 「増訂 日本歴史事典」 の 「分類項目一覧」 を参考にしましたが--まとめることができるでしょうし、260年の長い時代のあいだに、当然ながら、世相は次第に変化していきました。ここでも、私の関心は、庶民の生活史であって、「幕藩体制」 や 「倒幕の形成」 という政治史ではない。

 江戸時代といえば、学校の歴史で教わった 「遠い昔の時代」 のように感じますが、大政奉還がなされたのが 1867年ですから、現時点から遡っても、わずか 140年前の時代です--私の年齢が 53歳であることを対比してみれば 140年前など、歴史のなかでは、わずかな過去ですね。

 





 ▼ 図録

 ● 資料 日本歴史図録、笹間良彦 編集、柏書房

 ● 日本の甲冑、日本甲冑武具研究会 編、徳間書店

 ● 図解 日本甲冑事典、笹間良彦、雄山閣

 ● 時代考証 日本合戦図典、笹間良彦、雄山閣

 ● 図説 戦国合戦総覧、新人物往来社 編、新人物往来社

 ● 図録 日本の武具甲冑事典、笹間良彦、柏書房

 ● 図録 日本の合戦武具事典、笹間良彦、柏書房

 ● 図説 日本戦陣作法事典、笹間良彦、柏書房

 ● 江戸時代の萬物事典 (絵で知る江戸時代)、高橋幹夫、芙蓉書房出版

 ● 江戸の暮らし図鑑 (道具で見る江戸時代)、高橋幹夫、芙蓉書房出版

 ● 復元 江戸生活図鑑、笹間良彦 著、柏書房

 ● 図解で見る 江戸民俗史、市川正徳、けいせい出版

 ● 図説 江戸時代食生活事典、日本風俗史学会 編、雄山閣

 ● 図録 近世武士生活史入門事典、武士生活研究会 編、柏書房

 ● 図録 近世女性生活史入門事典、原田伴彦・遠藤 武・百瀬明治 著、柏書房

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 「日本史 (通史資料)」 (111ページ) のなかで、図録を読む (眺める) 愉しさを、すでに述べました。「百聞は一見にしかず」 という言いかたがありますが、図解があれば、状態を具体的に知ることができるので、当時の雰囲気を想像しやすいでしょう。文政時代以後、(庶民が 「文字」 を習得して) 庶民が記録した膨大な文献が遺されているのですが、庶民がみずから遺した文献の膨大な数は、世界に類をみないのではないでしょうか。したがって、文政時代以後は、(膨大な数の資料が遺っているので、) 当時の世相を正確に知ることができるし、さらに、図録の助けを借りれば、具体的に知ることができるでしょう。

 私は、江戸時代の庶民史に関心を抱いていて、ここの記載した図録は、江戸通史に関する図録のみであって、江戸時代に関する多数の図録は、「江戸時代の 『読書案内』」 のなかに記載しましたので、それらも参考にして下さい。

 図録には、(いわゆる 「正史」 のなかに出てくるモノだけではなくて、) 生活に密着したモノ--たとえば、トイレ (かわや、便所) の構造など--も丁寧に記述されています。 トイレ は、かつて、「かわや」 というふうに言われていたのですが--江戸時代には、「雪隠」 とか 「手洗場 (ちようずば)」 と言われていましたが--、「河屋=川屋」 説 (川の上に設置して、便を水に流す 作り、「古事記」 にも記述されている) と 「側 (かたわら) 屋」 説 (母屋から離した作り) があるそうですが、いずれにしても、江戸時代には、江戸に人口が集中し (百万人)、人びとが、まいにち、排出する糞尿は、年間 三百万石にも及んで、町奉行にとって、糞尿は、頭の痛い行政問題だったようです。江戸では、大便所と小便所はべつべつになっていて、大便が肥料として使われ、小便は利用価値がないとされて 「垂れ流し」 だったそうです。江戸前期の頃は、近郊の農民が、それぞれ、町中に ナワ 張りをもっていて出向いて汲み取っていましたが、中期になると、汲み取りの専門職が出てきて、舟一艘に百桶も積んで、武蔵や下総に運んだそうです。当時、江戸には、15,000人あまりの家主がいて、町内で汲み取った下肥代は、かれらの収入になって、一人当たり年間平均三両ちかくの実入りになったそうです。文久二年の資料では、江戸全体で、年間の下肥代は 49,503両でした。
 また、花見や祭礼では、有料の辻雪隠が設けられたようです (「北斎漫画」 に辻雪隠の絵が描かれています)。長屋では、共同便所でした。

 私が庶民史に興味を抱いていると云っても、「正史」 を無視している訳ではないのであって、武家屋敷の構造や貨幣鋳造法などに関する図録も、当然ながら、読んで (眺めて) います。

 





 ▼ 基礎情報 その他

 ● 日本・中国・朝鮮 古代の時刻制度、斉藤国治、雄山閣出版

 ● 年号の歴史、所 功、雄山閣BOOKS 22

 ● 元号事典 (東京美術選書 16)、川口鎌二・池田政弘 著、東京美術

 ● 日本暦西暦月日対照表、野島寿三郎 編、日外アソシエーツ

 ● 日本史小百科 8 天皇、児玉幸多 編、近藤出版社

 ● 単位の歴史辞典、小泉袈裟勝 編著、柏書房

 ● 改訂増補 古銭語事典、大鎌淳正、国書刊行会

 ● 日本の組織図辞典、新人物往来社 編、新人物往来社

 ● 日本職人辞典、鈴木棠三 編、東京堂出版

 ● 日本服飾史辞典、河鰭実英 編、東京堂出版

 ● 日本騒動事典(農民一揆・敵討・御家騒動)、今川徳三 他、叢文社

 ● 日本年中行事辞典(角川小辞典-16)、鈴木棠三、角川書店

 ● 随筆辞典 (全 5巻)、日本随筆大成編集部 編、吉川弘文館

 ● 地方史事典、地方史研究協議会 編、弘文堂

 ● 日本外交史辞典
  外務省外交資料館日本外交史辞典編集委員会 編、山川出版社

 ● 戦争と平和の事典
  松井 愈・林 茂夫・梅林宏道・渡辺賢二・吉池俊子・綿引光友・伊藤田直史、高文社

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 古人の生活を具体的に再現して、生活のなかで醸された精神を招魂するためには、生活の基礎情報 (暦法、時刻制度、度量衡法、貨幣制度、組織構成、仕事、服飾、食物など) を詳しく調べなければならないので、ここに記載した事典・辞典が役立ちます。

 





 ▼ 人名・地名・家紋

 ● 日本古代氏族人名辞典、坂本太郎・平野邦雄 監修、吉川弘文館

 ● 戦国人名辞典 増補版、高柳光壽・松平年一 著、吉川弘文館

 ● 日本歴史人名辞典、日置昌一 編、講談社学術文庫

 ● 姓氏・地名・家紋事典 (コンパクト版)、丹羽基二、新人物往来社

 ● 現代人物事典、朝日新聞社 編

 ● 20世紀 WHO'S WHO 現代日本人物事典、旺文社

 ● 国史地名辞典、藤岡継平 編、村田書店

 ● 大和古代地名辞典、日本地名学研究所 編、五月書房

 ● 江戸地名辞典 (上・下)、北村一夫、六興出版

 ● 日本歴史地理用語辞典、柏書房

 ● 日本地名百科事典 (コンパクト 版)、小学館

 ● コンサイス 日本地名事典、三省堂

 ● コンパクト 版 日本地名事典、吉田茂樹、新人物往来社

 



[ 読みかた ] (2006年 9月16日)

 昨今、市町村の合併が多くなって、市町村名を変更することもあるようですが、地名は、たいがい、古い歴史をもっていて--国郡県制は、延喜式 (967年施行) の頃から脈々と継承されてきたので--、歴史を無視した 「突飛な」 命名に対して、私は少なからず抵抗感を覚えます。もっとも、そういうふうに言えば、「あら見られずの延喜式や」 (太平記) --堅苦しいことを言うひとを嘲っている語--と言われるかもしれないのですが、、、。

 




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