2018年12月 1日 | 「はしがき」 を読む | >> 目次に もどる |
「はしがき」 に綴ったように、本書を執筆した目的は次の 2点です。 (1) モデル 論を 「正規に」 学びたいと思っている システム・エンジニア のための入門書とする。
(2) 業務分析・データベース 設計の領域において、単なる 「画法」 (diagramming) が 「モデル」 の 本書の前提となっている技術は、いわゆる 「数学基礎論」 の基本技術です。「数学基礎論」 は、ゲーデル 氏の 「不完全性定理」 以後に整えられた分野です──次の 4つの領域を対象としています。
(1) 集合論 そして、ゲーデル 氏 (不完全性定理)、チューリング 氏 (チューリング・マシーン)、フォン・ノイマン 氏へと技術が継承され躍進して、コンピュータ が実現しました。つまり、「数学基礎論」 は、我々の職場を作った技術です。我々の仕事は、「事業を プログラミング する」 ことです。業務分析・データベース 設計には数学などは いらないという暴言を吐く自称 「専門家」 もいますが、「数学基礎論」 の基本くらいは、専門技術として習得していなければならない。 しかし、「数学基礎論」 は、そうとうに テクニカル な抽象論になって、システム・エンジニア が学習するには そうとうに難しい。私は、いわゆる文系の学生であったので、数学が苦手でした。しかし、私が 30才前半の頃、リレーショナル・データベース が世に出て、たまたま 私は日本にそれを導入・普及する任に就きました。リレーショナル・データベース は我が国では先例がなかったので、その技術そして理論 (E. F. コッド氏の論文) を一から学習しなければならなかった。そのために、数学を学習しなければならなかった。文系の学生だった私は、正規の数学の学習を高校二年生でやめていたけれど、30才をすぎた頃に数学を改めて学習しなければならなかったのです。 私は、「数学基礎論」 を独学しました。文系の学生だった私が数学を独学するのですから、その苦労たるや理系出身に人たちには想像できないでしょう [ ただし、「数学基礎論」 を学習していて辛いと思ったことは一度もないです ]。赤攝也 氏曰く──
数学においては、あらゆるものを頭脳の中で創造するのであるから、数学書は、「はじめ」 から 私は、赤 氏のおっしゃることを実感しました。私は、数学を独学する際に、最初から 「数学基礎論」 に取り組んだ訳ではないのであって、先ず 「記号論理学」 の入門書や中級向けの書物を多数を読んで、「論理」 を学習しました。そして、「記号論理学」 を学習する傍ら、「哲学」 (ウィトゲンシュタイン 氏の哲学) を学習して、ゲーデル 氏を知りました。「記号論理学」 の学習も 或る程度に捗っていたので、いよいよ 「数学基礎論」 に狙いを定めました──私の狙いは、ゲーデル 氏の 「完全性定理」「不完全性定理」 を読むことでした。そこまでの学習の まとめ を 「論考」 として出版しました (「論考」 の文献編を読んでいただければ、私の学習の道程がわかるでしょう)。そういうふうに独学してきて、私は赤 氏の先の言を実感しています。 そういう道程で学習したので、「論考」 は (「数学基礎論」 というよりも) 「記号論理学」 の観点からの記述が強い──特に、私が手本としたのは、ゲオルク・クラウス 氏の 「記号論理学 (上・下)」 です。クラウス氏は、「論理」 を次の 5つの範疇として扱っています。
(1) 命題論理
クラウス 氏の著作は、「関係の論理」 を単独の領域として扱っていますが──現代数学では、「関係の論理」 は述語論理のなかで論じられている──、「関係の論理」 を この著作で学んだことは 後々 たいそう役だった。そして、「関係」 と 「関数」 との対応へと私の関心が進んでいきました。ちなみに、クラウス 氏は、弁証法も扱っていますが、私は弁証法には興味がないので読み飛ばしました。 「論考」 において、私は自分の学習の道程を正直に記しましたが、その成果を 「数学基礎論」 の観点から見直した拙著が 「いざない」 です。「論考」 は、構文論を重視しているのですが、グラフ 理論と モデル 理論を欠落していました。それらを取り入れて、「論考」 で ほとんど論じなかった意味論を補強した著作が 「いざない」 です。 以上の記述からわかるとおり、「いざない」 は 2009年当時の私の モデル 観を示しています── TM バージョン 2.0 としての理論・技術を示しています (TM バージョン 1.0 は、「赤本」 に述べてある理論・技術を前提にしています)。「いざない」 を出版してから 9年が過ぎました。10年一昔と云われていますが、私の モデル 観は、勿論、当時から進化しています。いずれ、進化した モデル 観を世に問いたいと思います。 □ |
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