2020年 1月 1日 「5.1.5 標準形 (normal form)」 を読む >> 目次に もどる


 論理形式の標準形は次の 2つです。

    (1) A1 ∧ A2 ∧・・・∧ An.
    (2) A1 ∨ A2 ∨・・・∨ An.

 (1) を 「連言標準形 (∧-標準形)」 といい、(2) を 「選言標準形 (∨-標準形)」 と云います。

 「連言標準形」 は数学の証明式のなかで使うことが多い──というのは、連言で接続された多項式のなかで、ひとつでも偽なる式があれば、多項式は偽になるので、証明がしやすい (「真 ∧ 偽」 は偽である)。

 「選言標準形」 は事態が存立する論理的可能性を検証しやすい (「真 ∨ 偽」 は真である)[ 後述する主選言標準形を参考にされたい ]。

 たとえば、2項関係 (p と q ) を例にすれば、主選言標準形・主連言標準形は次の通り──

    (1) 主連言標準形 (p ∨ q) ∧ (p ∨ ¬q) ∧ (¬p ∨ q) ∧ (¬p ∨ ¬q).
    (2) 主選言標準形 (p ∧ q) ∨ (p ∧ ¬q) ∨ (¬p ∧ q) ∨ (¬p ∧ ¬q).

 主連言標準形および主選言標準形は、恒真 (I) ・恒偽 (0) と分配律を使って次のように導くことができます。

    T≡ (p ∨ ¬p) ∧ (q ∨ ¬q) ≡ (p ∧ q) ∨ (p ∧ ¬q) ∨ (¬p ∧ q) ∨ (¬p ∧ ¬q).
    0 ≡ (p ∧ ¬p) ∨ (q ∧ ¬q) ≡ (p ∨ q) ∧ (p ∨ ¬q) ∧ (¬p ∨ q) ∧ (¬p ∨ ¬q).

 私は数学者ではないので──私は システム・エンジニア ですので──、「多項式の真偽を証明する」 ことを仕事にしていないけれど、モデル 技術を作ることが主たる仕事です。事業分析のための モデル 技術は、現実的事態を (集合 [ あるいは、クラス ] と、それらの間の関係 [ あるいは、関数 ] を使って) 論理形式に変換して コンピュータ 上に実装する技術です。モデル TM では、古典的な二値論理・二項関係を使っています。その理由は、F-真 (事実的な真) を験証しやすいからです。数学では、構文論上の L-真 (導出的な真) と意味論上の F-真を当然ながら満たしていなければならないのですが、F-真というのは 「真とされる値が充足される」 ことを云います。いっぽう、現実を写像した モデル では、「真とされる値が充足される」 ことにくわえて、「現実の事業構造と一致している」 ということがもとめられます──モデル では、「現実の事業構造と一致している」 ということをふくめて F-真と云っています。そのために、F-真を験証しやすいように、二項関係 (p と q) において二値論理 (真と偽) を使っています──事態の成立・不成立を検証するには主選言標準形 [ 選言の真理値表 ] を使っています (モデル TM では、たとえば、その典型的な例が 「対照表」 です)。

 なお、標準形の作りかた (標準化のしかた) を 「いざない」 では述べていますが、「数学基礎論」 の書物を読む人たちのために綴ったので、モデル 技術を作る システム・エンジニア でなければ──言い替えれば、(モデル 技術を作るのではなくて、) その技術を使う側であれば──読み飛ばしても影響はないでしょう。 □

 




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