2020年 1月15日 「5.2.1 順序」 を読む >> 目次に もどる


 「順序」 というのは 「関係」 の一種です。次の三条件が成り立つ関係 ≦ を 「順序」(あるいは、順序関係) と云います。

 (1) x ≦ x (反射律)
 (2) x ≦ y、y ≦ x ならば x = y (反対称律)
 (3) x ≦ y、y ≦ z ならば x ≦ z (推移律)

 すなわち、「順序」 とは、これらの条件による並び方ということです──「順序立てる」 とも云います。ここでは、関係として ≦ という記号を使っていますが、これは大小を示す訳ではありません──任意の 2つの項 (x と y) が比較可能 (comparable) であることを前提とはしていません (たとえば、アルファベット 順・五十音順なども順序関係です)。比較可能というのは、次の条件が成り立つ関係を云います。

 (4) x ≦ y または y ≦ x

 この条件によって、2つの頃について大小が明らかになります。

 (1) から (4) の すべての条件を満たす順序を 「全順序 (あるいは、線型順序)」 と云います。そして、(4) をふくまない順序を 「半順序 (または準順序)」 と云います。

 本節の記述は、一ページ の半分しかないのですが、とても大切な概念 (全順序と半順序) を述べています──数学上は、これらの順序の例として数々の例を述べることができるのですが (たとえば、集合族と包摂関係、N [ 正の整数全体 ] のなかで割り切れる数の並び、空間の点・直線・平面の全体 E と包摂関係などなど)、モデル 技術 (事業分析・データ 設計のための モデル 技術) には直接に関与しないので、「全順序」 と 「半順序」 という順序関係のみを覚えておいてください。

 事業過程 (あるいは、その管理過程) を対象にした場合に、数理 モデル を使うことができるか──これが モデル TM の最大の課題でした。すなわち、関数 f (a, b,・・・n) において、項 a, b,・・・n に対して全順序が成立する特性関数を考えて、「関係」 文法 (構文論) を立てることができるか、そして その 「関係」 文法を使って、ハッセ 図に該 (あた) る モデル 図を描いて無矛盾性を実現できるか、というのが モデル TM の生まれる契機になったのです。T字形 ER法として当時すでに実地に使われていた技術を構文論・意味論を考慮した モデル 技術に改変する契機となったのが 「順序関係」 を意識的に導入することでした。モデル TM では、上述の順序関係 (1) から (4) を満たしている項 (「event (出来事、行為、取引など)」 と云う)と その補集合 [ 順序関係 (1) から (3) を満たしている項、event に関与する項 ] とに分けて 「関係」 文法を示しました。この改変に取り掛かったのが 「論理 データベース 論考」 を出版した後です(「論考」 は 2000年に出版しました、「論考」 では数学 (論理)の基礎技術を棚卸ししました)。そして、2005年になって 「データベース 設計論--T字形 ER」 を出版して、T字形 ER法を TM という呼称に改めました。

 T字形 ER法では、「関数」 の適用を 全然 意識していなくて、モノ (entity)と モノ とのあいだの 「関係」 のことを 「関連 (relationship)」 と云っていましたが、TM では モノ (項) と モノ とのあいだの 「関係 (relation)」 を 「関数」 として考えています──したがって、「関連」 という ことば を 一切 使わなくなりました。そして、TM では、「関係」 R (a, b) の対称性・非対称性と 「順序」 の半順序・全順序を対応させて、「『関係』 は 『関数』 と同じである」 と指導しています。モデル 技術では、「関係」 について、もうひとつ考慮しなければならない (全射・単射を考慮しなければならない) のですが、それについて 「2.2 写像」 を読み返してください。 □

 




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