2020年 4月 1日 | 「6.1.1 単称化と存在化」 を読む | >> 目次に もどる |
本節では、単項述語論理の法則として、量化を使った次の 3つの関係を記述しています。なお、量化記号については、 「1.2.5 量化記号」 を参照してください。
(1) 全称 「全称」 命題 というのは、量化記号 ∀ を使って、「すべての x について、命題 f(x) が真である」 ことを ∀xf(x) として記述します。「存在」 命題 というのは、量化記号 ∃ を使って、「或る x について、命題 f(x) が真である」 ことを ∃xf(x) として記述します──言い替えれば、「f(x) である x が存在する」 ということ。なお、「存在」 命題のことを 「特称」 命題とも云いいます。「単称」 命題というのは、量化されていない個々の具体例 (定数) を使って、「この葉は緑色である」 というような命題です──自由変数 (アルファベット x, y) に対して、定数は アルファベット a, b,... を使います。「全称」「存在」 および 「単称」 に関して、以下の関係が成立します。
(1)「全称」 の単称化 ∀xf(x) → f(a). 「全称」 の単称化は、「条件 f に関して、『すべて』 の モノ を対象にすれば、個々の モノ も対象になる」ということですね。「全称」 の存在化は、「条件 f に関して、『すべて』 の モノ を対象にすれば、『いくつか (少なくとも 1つ)』 の モノ も対象になる」 ということです。「単称」 の存在化は、「条件 f に関して、個々の モノ を対象にすれば、そういう条件を満たす対象が 『少なくとも 1つ』 は存在する」ということですね。「全称」 の単称化、「全称」 の存在化および 「単称」 の存在化の関係を図式にすれば、以下のようになります。 ∀xf(x) → f(a) → ∃xf(x). この関係を自然言語の例を使って説明してみます。「犬は忠実である」 という日本語を英訳すれば、次の 4つの英文が考えられるでしょう。
(1) A dog is faithful animal. 以上の 4つの英文は、高等学校の英語文法では 「『種』 を表す」 ときに使うと教わりましたが、それぞれ表現が違うのだから当然ながら 「意味」 も違います。(1) は、「犬」 という クラス を言及しています──すなわち、「全称」 命題です、「犬」 全体が faitful であることが true とされて、その中から任意の 1匹の犬を選んできても faithful であることは true です。(2) は、「特定」 された犬を想定した ほぼ 「単称」 命題です──すなわち、a dog に値を代入した文です。ちなみに、the は that (指示) の弱い形で 「あの犬」 (例えば、我が家で飼っている犬) を暗示しています。(3) は、「犬」 という クラス を切断 (分割) した部分集合です──すなわち、Some dogs are faithful, others are not. という意味で、「存在」 命題です。(4) も、多数・複数の具体的な犬を想定している 「存在」 命題ですが、the dogs と明示しているので部分集合のなかの メンバー (具体例) を外延として枚挙しなければ無意味なので、(3) を使うほうが無難でしょうね。「犬は忠実である」 という日本語を英訳するなら、Logic を学んだ人たちは、きっと、(3) の英訳を使うでしょう。ちなみに、本 ホームページの今回の定期更新では、「反 文芸的断章」 の中で 「全称・存在・単称」 について言及しているので、本節を読んだあとに一読してみてください。 □ |
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