2020年 5月15日 | 「6.1.4 推論の論理法則」 を読む | >> 目次に もどる |
本節では、前節の命題の 「量と質」 を前提にして、アリストテレス の論理学を集合論を使って説明しています。アリストテレス の論理学 (「格」 と 「式」 を使って定式化された論理学) の原典を私は読んではいない──アリストテレス 論理学についての私の知識は、「論理学概論」 (近藤洋逸・好並英司 共著、岩波書店) を底本にしています。本節は その書物を底本にして、集合論の観点から 「妥当な」 推論 6つを記述しています。それらの推論式は、それぞれ愛称がつけられています──たとえば、第一格の第一式は barbara と名付けられ、その他の式にも それぞれ愛称がつけられていて、私は大学生の頃に論理学の書物を読んだとき それらの愛称を暗記したのも今となっては懐かしい思い出です。しかし、われわれが実際に推論するときには、これらの 6つの推論形式を念頭に置いて推論している訳ではないでしょう──現代では、いわゆる 「数学基礎論」(現代集合論) の 「公理 (系)」 を使うでしょう。「論理」 と 「集合論」 との関係──「論理」 が集合論に翻訳できること──を示すために本節を書いた次第です。しかしながら、「数学基礎論」 では、「論理」 の記号化というと、これは もう 厳密性の化け物みたいなもので、数学的定式化の専門的訓練であって、私のような数学の シロート は つきあい切れなくて逃げてしまう (苦笑)。 数学の専門家ではない人たちのなかで、「論理」 に 或る程度 興味をもっている人、あるいは仕事で 或る程度 数学基礎論の技術を使う人でも、せいぜい 「数学基礎論」 の基礎技術を使うのが精一杯でしょう [ 少なくとも、私は そうです ]。「数学基礎論」 の基礎技術とは どの程度の技術を指しているのかと云えば、拙著 「論理 データベース 論考」 のなかで記述した技術だと思っていいでしょう [ 実際、私は それらの技術をもとにして (事業分析・データ 設計のための) モデル 技術 TM を作りました ]。それらの技術よりも高度な技術となると、数学を専門にする人たち向けでしょうね。数学の技術を使わなければならないけれど数学の専門家ではないシステム・エンジニアとして居直って シロート 感覚を丸出しにして執筆したのが 「論理 データベース 論考」 です。そこに記述されている それぞれの技術のあいだの関係 [ 聯関 ] を説き明かしたのが本書 「いざない」 です。それらの関係 [ 聯関 ] を説き明かすために、ときには、「哲学」 を援用しています──実際、「数学基礎論」 が形成される途上では、「哲学」 が少なからず関与しています (たとえば、ウィトゲンシュタイン の 「数学の哲学」 がそうでしょう)。 本節は、モデル 技術に対して直接に関与する訳ではないし、「論理」 を訓練するためのものでもないです──「論理」(アリストテレス 以後 19世紀まで継承されていた論理学) が集合論に翻訳できることさえ わかっていただければいい。そして、アリストテレスの 「論理」 では (三段論法の) 「小項」 は 「主語が空集合ではない」 という前提で推論形式が 「真」 であることを考えていましたが、現代の集合論では 「小項」 の集合には空集合もふくまれることを注意していてください [ 空集合は すべての集合の部分集合である、ということ (後述、「8.1 空集合」 で説明します) ]──この点は、リレーショナル・データベース の アクセス 法として セット・アット・ア・タイム 法を実現した コッド 正規形の 1つの大きな論点 [ null の問題点 ] となったのです。 「いざない」 を執筆したあとで、「論理」 についての私の考えかたが変わってきました。私が その後に影響をうけた書物を示しておきます── 「論理──数理論理学はなぜわかりにくいのか」 (本橋信義、講談社) この書物は、講談社の自然科学書の 「今度こそわかる」 シリーズ に収められています。この書物から私は モデル 技術について数多くの着想を得ています。「論理」 に興味のある人たちに一読を勧めます──ただし、「今度こそわかる」 と名を打っているので、「数学基礎論」 の基本技術を習得していることが この書物を読むための前提です。 □ |
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