2020年 8月15日 「7.1.2 『1対1』 の対応」 を読む >> 目次に もどる


「1対1」 の対応は、カントール の集合論で中核となる概念です。

集合とは、モノ (元とか要素とか云いますが) の集まりであって、「構造」 とは無関係であることは 前回 述べました。では、ひとつの集合の元が いくつあるのか、そして、ふたつの集合 (A と B) が同数であるということを確かめるには どうすればいいのか。ふたつの集合が同数であることを調べるための いちばん直截的な やりかた は──ひとつの集合の元が いくつあるかを調べる やりかた は後述します──、それぞれの集合から 1つずつ元を選びだしてきて 「対 (つい)」 をつくっていくという やりかたでしょう。これが 「1対1」 の対応ということです。「1対1」 の対応を作って、どちらかの集合の元について過不足がないときに、ふたつの集合は同数であって、この同数のことを 「同値」 と云います。「同値」 は次のように記述します──

    A 〜 B.

「同値」 のことを 「A と B は同じ 『濃度』 をもつ」 とか 「同じ 『基数』 をもつ」 とも云います──「濃度」 あるいは「基数」 という概念は、個数の概念を無限集合に拡張した概念です。ふたつの集合のあいだにある 「『同値』 関係」 は、次の 3つの条件を満たします。

  1. 反射律 A 〜 A.
  2. 対称律 A 〜 B のとき、B 〜 A になる。
  3. 推移律 A 〜 B、B 〜 C のとき、A 〜 C になる。

推移律に着目してください。ふたつの集合 (A と C) を直接に比較しなくても、集合 B を仲立ちとして間接的に比較することができます──この仲立ちとなる集合 B として、数字 (自然数){ 1, 2, 3, ・・・ } を考えれば、「数える」 手続きを表すことになります。「数える」 手続きは、集合論的に言えば、たとえば リンゴ を数えて 「5」 となれば、リンゴ の集合と自然数の集合 { 1, 2, 3. 4, 5 } が 「1対1」 に対応したということです。自然数に対応して この 「対」 をつくっていく数えかたのことを 「枚挙する (列挙する)」 と云います。有限の集合では、「1対1」 の対応は だれにでもわかる 「自明のこと」 ですが、これを無限集合に拡張したことが カントール の独創性なのです。われわれ凡人が 「んなもの、当たり前じゃん」 として一顧だにしない 「自明のこと」 を等閑にしないで、「自明なこと」 に対して驚嘆して探究するという才識が天才たる条件なのでしょうね、私くらいの凡人は せめて 天才のその態度を見習いたい。

「1対1」 の対応という考えかたを使って、有限集合および無限集合を定義すれば──

  1. 有限集合とは、或る自然数 n を選べば、X 〜{ 1, 2, 3, ・・・, n } となるような集合 X である。

  2. 無限集合とは、どんな自然数 n についても、X 〜{ 1, 2, 3, ・・・, n } でない集合 X である。

なお、空集合は、n = 0 のときの集合です。 □

 




  << もどる HOME すすむ >>
  目次にもどる