2020年10月 1日 | 「7.2.1 近傍 (neighbourhood)」 を読む | >> 目次に もどる |
「近傍 (neighbourhood)」 は、「位相 (topology)」 上の概念です──その根底にある中核概念は、「連続」 という概念です。「連続」 については、「関数」 相互の関連を考えて、「極限 (lim)」 (あるいは、収束) という概念が導入されました──lim fn = f、すなわち lim fn は f に 「近い」 ということ。いっぽうで、集合論を創始した カントール は、「関数」 の属性について、「実数」 の部分集合を扱う うえで、「点集合」 を導入し、「連続」 概念を定式化しようと試みました──すなわち、「点と点との近さ」 が論点になった。その後、ヒルベルト が 「公理主義 (形式化)」 を謳い それが数学の一般的傾向となって、点と点との つながり に関する法則は一般化されて、集合の上で この法則が定式化されて、「位相空間論 (general topology)」 が生まれました(*)。 「集合」 について、「閉じている (閉集合)」 とか 「開いている (開集合)」 という言いかたをしますが、「閉集合」 とは 「収束」 を使っていえば、集合 A の元 (すなわち、点) の極限が A の外に出られない (外側に存在しない) ことを云います。だから、「閉じている」 というふうに言います。そして、「閉集合」 のことを 「閉包 (closure)」 と云い、その外側に存在する点を 「外点 (exterior point)」 と云います。 私は システム・エンジニア であって数学者ではないので、「近傍」 「収束」 「点集合」 「閉集合」 の定義 (定式化) を厳正に扱うことができないにもかかわらず、本書で扱った理由は、「12.3 閉包と外点 (「関係の対称性・非対称性」 の観点から)」 の前振り (前説) にするためでした。端的に言えば、集合を並べる関数 (あるいは、「順序集合」 を形成するための 「特性関数 (特徴関数)」) を モデル 技術の定式化のなかで使うために、その関数の前提として 「近傍」 を扱った次第です。 順序集合 (あるいは、直積集合) を使って、モデル 技術の定式化をすることもできるのですが、モデル TM では、モノ の集合を 「event と、その補集合」 という クラス を導入しているので、直積集合の考えかたのみでは集合のあいだの関係を説明できない。たとえば、数学上でも、位相的構造を考えるときに、「閉集合」 の全体を考えるのが難しいので、先ず ひとつの (小さな)「閉集合」 を考えてみて、そして次第に その範囲を大きくしていく (いくつかの 「閉集合」 を合併していく) ほうが考えやすいとのことです。(事業分析・データ設計のための) モデル TM では、あらかじめ対象範囲が限られているので、位相的構造の総体 (範囲) が わかっているので ひとつの閉集合なのですが──しかも、その構造は、「ひとつの正常事業循環」 内で構成するという前提があるので──、その構造内では、集合 (セット) が正しく作られたならば、それらの集合に対して 「並べる」 ための関数を適用すればいい。しかしながら、その関数を考えるときに、TM では 「event と その補集合」 という クラス を導入しているので、直積集合 (あるいは、選択公理) を単純には使うことができない。そのために、「閉包と外点」 という考えかたをしたほうが集合のあいだの関係を説明しやすい。事実、対象領域を限られた事業のなかで、event (取引、出来事、行為) は定義できるけれど、event の補集合 (つまり、resource) は定義できないので、それらの集合を並べる関数を考えるならば、「閉包と外点」 という考えかたが対応する。ただし、「閉包と外点」 という考えかたのほかに 「全順序と半順序」(言い替えれば、「関係」 の対称性・非対称性) という考えかたが前提となっています──すなわち、event が全順序に対応し、その補集合 (resource) が半順序に対応して、全順序の関数と半順序の関数を使って (ひとつの位相的構造のなかで) 集合を並べる特性関数として考えるということです。TM の この考えかたを説明する前振りとして、「近傍」 を本節で扱いました。 |
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