2020年12月15日 「8.1.3 数と集合 (ゼロ と空集合)」 を読む >> 目次に もどる


 数学の シロート である我々は、「数 (自然数)」 (1, 2, 3, ・・・) と云えば、順番 (並び、first, secone, third, ・・・) を示すものというふうに ふつう 思っているでしょう。順番 (並び) をあらわす性質をもつ 「数」 のことを 「序数 (ordinal)」 と云います。自然数には ふつう 0 をいれないけれど、0 もいれたほうが便利なので最近では 0 も自然数のなかにいれる流儀もあります。いっぽう、「数」 には 「多さ (one, two, three,・・・)」 (総数、合計) をあらわす性質もあります。たとえば、或る物の量が 5sとか、長さが 10p とか。この 「多さ」 をあらわす性質をもつ 「数」 を 「基数 (carinal)」 と云います。つまり、「数」 には、「序数」 と 「基数」 という 2つの考えかたがあるということです。

 「序数」 は、つねに先行する数があることを前提にしています。「序数」 の構造を解析するために、数学者たちは、後続する 「数」 を、先行する 「数」 の集合とみなす やりかた を導入しました──たとえば、「5」 は、「1, 2, 3, 4 の集合」 (すなわち、{ 1, 2, 3, 4 }) というふうにみなすということ。0 は、先行する 「数」 をもたないので、空集合 (φ) とみなすことができます。とすれば、0 と自然数は、空集合と 「空集合の集合 ({φ})」 を使って次のように あらわすことができます。

    0 = φ.

    1 = { 0 } = {φ}.

    2 = { 0, 1 } = {φ,{φ}}.

    3 = { 0, 1, 2 } = { φ,{φ},{φ,{φ}}.
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 とすれば、「序数」 は集合であることがわかる──なんと、空集合と集合論があれば、「数」 を構成できる! 0 を自然数のなかにいれたほうが便利だと先ほど言った理由がわかるでしょう。

 この考えかたを ペアノ 氏が体系化して公理系 (自然数の公理系) にしました (いわゆる 「ペアノ の公理系」)。「ペアノ の公理系」 では、自然数 x について論理式 f (x) を考えて、N を集合として、S を 「N の関数」 とすれば、次のように記述できます──

    (1) f (0).

    (2) ∀x { x ∈ N | f (x) } → f (S (x) }.

 S (すなわち、N の関数) は 「後続」 ということを意味しています。たとえば──

    1 = S0.

    2 = SS0 = S1.

 この公理系を 「帰納法」 と云います。「帰納法」 を使ってあらわすことのできる構造を 「数学的構造 (mathematical structure)」 と云います。したがって、自然数の数学的構造は (N, 0, S) です。 □

 




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