2021年 1月 1日 「8.2.1 直積集合と空集合」 を読む >> 目次に もどる


 「直積集合と空集合」 については、以前の説明のなかで すでに述べています (「8.1.1 『空』 は一者」)。以前に説明してしまったのは勇み足だっかかもしれない (苦笑)──実際 「いざない」 の本文では、「8.1.1. 『空』 は一者」 のなかで直積集合については全然述べておらず、本節 「直積集合と空集合」 のなかで直積集合について述べているので、私の 「解説」 が先走ってしまいました。したがって、本節で改めて [ 再び ] 直積集合と空集合について再録することはしません、申し訳ない。本節の 「解説」 として何も書かないというのは失礼なので、「命題」 「集合」 「関係」 「関数」 の相互関係を簡単に説明しておきます。

 命題 (一つの主語 [ S ] と一つの述語 [ P ] から構成される 「判断」、S-P と記述する)は、述語論理では P (S) として記述される。そして、P (S) は、集合論に翻訳できる。A, B を集合とすれば、集合 A の元 a と集合 B の元 b が条件 R を満たすとき、これらは 「R の関係にある」といい、aRb と記述する。aRb は、R (a, b) と同一視できる── R の関係にある元の対 (a, b) の全体は、直積 A × B の部分集合 R = { ( a, b ) | aRb } と同一視してよい。集合 A, B の直積 A × B の部分集合 R を A から B への 2項関係、あるいは単純に A から B への 「関係 (relation)」 といい、R: A → B と記述する (「写像」 を思い出してください)。単純に言えば、R (a, b) は f (x, y) と同一視してよい──数学上 厳正に言えば、関係 R と 関数 f は違うのですが、実務上は同一視してもいい、すなわち──

    (1) P (S) ≡ f (x).

    (2) R (a, b) ≡ f (x, y).

 なお、f (x) を 「クラス」 と云い(あるいは、私が嫌いな ことば ですが、「性質」 とか アトリビュート と云ってもいい)、f (x, y) を 「関係」 と云っていいでしょう。ちなみに、f (x, y) は 「順序対」 ですから、relation は順序を強く意識していますが、relation と似た用語の relationship は順序を意識していない。

 モデル TM では、上記の 2つの関数を使っているので、「関係の対称性・非対称性」 と 「(関数の) 全順序・半順序」 を強く意識して 「関係」 を relation として使っていますが、TM の前身である T字形 ER 法では 「関係」 を relationship (関連) としています──これが TM とT字形 ER法の最大の違いです、つまり T字形 ER法は、関数を使っていなかった。

 「集合」 および 「関係 (関数)」 を モデル 技術の前提にしたときに大きな問題となるのが、「空集合」 の扱いです。「空集合」 は任意の集合の部分集合です。「空集合」 は、演算上、null として扱われています。Null は値ではなくて状態 (undefined、unknown) を示しています。モデル TM は、F-真を重視して事業構造を形式的構造として記述するので、2値論理を前提にしています。2値論理を前提した場合に、null の扱いをどうすればいいのかを述べたのが、(先走ってしまいましたが) 「8.1.1 『空』 は一者」 に付した説明です──「8.1.1 『空』 は一者」 の説明を読み返していただければ幸いです。 □

 




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