2021年 4月 1日 | 「9.2.1 2項関係と 3項態」 を読む | >> 目次に もどる |
「2項関係と 3項態」 という発想を私は パース 氏から学びました (「パース 著作集 (1・2・3)」、勁草書房)──たとえば、従業員と部門との 2項関係としての 「従業員. 部門. 対照表」 が、「配属」 (あるいは、配属の結果としての 「組織」)という 3項態をあらわす。この考えかた [ 従業員と部門との関係が 「配属」 を意味すること ] 自体は、TM の前身である T字形 ER法でも すでに説明していたのですが、それは自明のこととして説明していたので、整合的な論拠が欠落していました。「パース 著作集」 を読んでいて、たまたま 「2項関係と 3項態」 と出くわして、この論拠を使えば 「対照表」 の説明ができると確信しました。ただ、このときには、「対照表」 の性質を説明できるようになっただけで、「対照表」 の性質を 「出来事・行為 (event)」 としての性質としか把握できていなかった。したがって、「対照表」 と event との関係では、「対照表」 の 個体指示子 (R) が 「つねに」 event に侵入 (ingress) することの整合的な説明ができなかった。 「対照表」 と event との関係では、「対照表」 の 個体指示子 (R) が 「つねに」 event に侵入 (ingress) することの説明が整合的にできるようになったのは、そのあと (「パース 著作集」 を読んだあと) で、拙著二冊の刊行を待つことになった──すなわち、「論理 データベース 論考」 (以下、「論考」 と略) と 「モデル への いざない」 (以下、「いざない」 と略) を執筆したあとで初めて 「対照表」 の性質を把握することができました。「論考」 で数学基礎論の基礎技術を総括して、「いざない」 で それら技術の理論を検討して私は初めて 「構文論と意味論」 を切り離して意識するようになった──それ以前には、私は 「意味論」 に引っぱられていて、「構文論」 を強く意識していなかった、「論考」 「いざない」 を執筆して初めて私は構文論を重視するようになった、「構文論が先で、意味論は後 (あと)」 という態度 (数学者にとっては当然の態度ですが) に変わった。ただ、「いざない」 では、いまだ、「対照表」 が 「event 以外の (すなわち、resource としての)」 の文法を適用するということが整合的に説明できていない。それを整合的に説明できるようになったのは、(「いざない」 を出版したあとで) TM の定期 セミナー において、「論考」 「いざない」 を執筆して辿り着いた構文論重視の考えかたが導いた次第です (セミナー ハンドアウト を参考にしてください)。すなわち、「対照表」 は、構文論では resource の束であって resource の文法を適用し、意味論では event とも resource とも 「解釈」 できる、ということです。 T字形 ER法と TM の相違点は、外見上 (技術的には) たいした違いはないようにみえますが、「前提」 が まったく違う──したがって、モデル 技術としては両者は まったく 別物です。相違点の一番顕著な点として、TM は 「関数」 を基底に置いたという点です──すなわち、T字形 ER法では、2項 「関係」 を ER 図 (Entity-Relationship diagram) の延長で 「関連 (relationship)」 として考えていますが、TM では 2項 「関係」 を 「関数 (relation)」 として考えている、TM では 項 (集合 [ セット ]) の 「並び」 を重視していて、「関連 (relationship)」 という語は いっさい 使っていない。TM では、2項関係 aRb [ a は、b に対して関係 R にある、と読みます ] を、R (a, b) = f (x, y) として考えています。つまり、「出来事・行為 (event)」 の並びを重視して、その並びは正常事業循環 (domain) のなかで最小値・最大値をもつ順序構造 (全順序) として考えています。そして、「出来事・行為 (event)」 以外の モノ (すわなち、resource) は、それら 「出来事・行為 (event)」 に関与する モノ (半順序) として考えています。この考えかたの根底にあるのは、(「ゲーデルの不完全性定理」 で使われている) 「特性関数」 です、「特性関数」 とは次の関数のことです── μ (x1, ・・・, xn ∨ y). ひとつの閉集合において それを構成している メンバー [ 項 ] x1, ・・・, xn を並べる関数 μ があって、閉集合の外側に存る外点 y を その関数 μ のなかに加えたときに、もし y が x1, ・・・, xn の並びなかに入る (並びを崩さない) のあれば、外点 y は関数 μ の項になるけれど、もし y が 並びのなかに入らない (並びを崩す) のであれば、外点 y は関数 μ の項にはならない。この考えかたを事業過程・管理過程の集合 (たとえば、受注・出荷・契約など)に適用してみれば次のようになる (ただし、「出来事・行為 (event)」 は 「日付」 で並べるとする)── μ (受注, 出荷, 契約 ∨ 従業員). この関数において、従業員は明らかに並びを崩す──この特性関数が、モデル TM において、「出来事・行為 (event)」 と それに関与する モノ (resource) とを分ける規準になっているのです。外点として従業員を挙げていますが、他のも部門・商品などの いわゆる resource と名指しされている集合も或る doman (閉集合)──「出来事・行為 (event)」 の閉集合に対して補集合となる閉集合──を形成しています (それについては次回述べます)。 事業分析・データ 設計を目的とした モデル では、対象領域 (domain) における モノ (数学的集合、これも domain と云います) は、順序構造として、次の 2つで構成されます── 1. 「出来事・行為 (event)」 (全順序となる) 2. 「出来事・行為 (event)」 に関与する モノ (半順序となる) したがって、それらの モノ のあいだに成立する 「関係 (関数)」 は次の 3つとなる (event を E と略し、resource を E C と略する)── 1. E と E C との関係 2. E と E との関係 3. E C と E C との関係 そして、E も E C も、それぞれの集合のなかの メンバー を いくつか選んできて並べる 「再帰」関数を考えて── 4. (E および E C の) 再帰 「再帰」 は、関係 R (a, b) において、(a および b が 「集合 (セット)」 ではなく、) 集合を構成している メンバー であるというだけのことです──写像で云えば、元の集合 (E または E C) のなかから メンバー をいくつか選んできた集合 (M または M C) において、f: M → M または f: M C → M C の全単射にて 2つの項は 「先行・後続」 関係の並びになるということ。これらの関係文法については、次節で述べます。 □ |
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