2021年 6月15日 「10.3.1 レーヴェンハイム の定理」 を読む >> 目次に もどる


 レーヴェンハイム 氏の 「モデル についての論文」 は、1915年に公表されていたのですが、1920年までは注目されなかったそうです。彼の 1915年の論文 (レーヴェンハイム の定理) は 「有限個の論理式のみを元とした集合」 を前提にして考えていました、私の単なる憶測ですが、この 「有限個の論理式」 という点が注目を集めなかった理由だったのではないかと思います──なぜなら、「集合」 は 「無限」 を前提にしているので。実際、1920年に彼の論文が注目を集めたのは、彼の定理を スコーレム 氏が 「無限」 の場合に拡張したからです。

 レーヴェンハイム の定理は、簡単に言えば、「有限領域での 『充足-モデル』の存在性」 を証明しました。もう少し丁寧に言えば、T を可算言語 L の (有限個の) 論理式の集合として、T が充足可能であれば、T を充足する可算構造が かならず 存在する、ということです。「可算」 というのは、自然数の集合 N と単射になることを云います──「可付番 (countable, denumerable)」 とも云います。すなわち、自然数の集合 { 1, 2, 3, ・・・ } と 1 対 1 に対応すること。

 「完全性」 を証明するには、無矛盾ならば モデル が存在することを示せばよい。実際、「一般完全性定理」 (強完全性定理) の証明では、「T が無矛盾であるならば、T は モデル をもつ」 ということを証明すればよい (この証明の やりかた は、拙著 「論理 データベース 論考」 131ページで記述しているので、それを読んでください)しかし、事業分析・データ 設計のための モデル 技術を作る私のような システム・エンジニア の観点から言えば、可算 モデル で充分に用を足す。ただ、(2値論理での) 可算 モデル では、意味論 (記号解釈) に対して払われるべき配慮──すなわち、「真」 という 「指示の可測性/不可測性」 の論点──が際だって現れない。この論点は、レーヴェンハイム 氏の定理を可算無限領域に拡張した スコーレム 氏の定理および レーヴェンハイム・スコーレム の下降定理 (数学的概念の絶対的性質の不能性) を待たなければならない。ただ、事業分析の領域にて有限個の論理式の集合を扱う私のような数学の シロート にとっては、「無限」 での数学的証明には興味を惹かれない (ゆえに、詳細に学習していない)──次回以降 (「無限」 を対象にした スコーレム の定理について)、私は論文を直接に読んだのではなくて数学の入門書を読んだくらいの知識しかなく、数学上 モデル の基底になった定理を大まかに説明するだけしかできないことを断っておきます (悪しからず)。 □

 




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