2021年 8月15日 | 「10.3.5 コンパクト 性定理」 を読む | >> 目次に もどる |
「コンパクト 性定理」 とは、可算集合を T とすれば、T のすべての有限部分集合が充足可能ならば、T のすべては可算の モデル で同時に充足可能である、という定理です。すなわち、T が モデル をもつための必要十分条件は、T の任意の有限部分集合が モデル をもつ、ということです。 「コンパクト 性定理」 の必要条件 (可算集合 T が モデル をもつならば、T の任意の有限部分集合は モデル をもつ) は明らかですが、十分条件 (T の任意の有限部分集合が モデル をもつならば、T はモデル をもつ) は、ゲーデル の 「完全性定理」 が証明しました。 ここで 「レーヴェンハイム・スコーレム の定理」 を思い出してください──その定理は、第一階の論理では、論理式は反証可能か、あるいは充足可能か のいずれかである、という定理でした。ゲーデル の 「完全性定理」 は、「レーヴェンハイム・スコーレム の定理」 をふくんで、さらに、対象を可算集合に拡張して、可算 モデル の存在性を証明しました。そして、「完全性定理」 の系として、「コンパクト 性定理」 が導かれたのです。すなわち、T の任意の有限部分集合が モデル をもつならば、それは無矛盾になるので、T 自身も無矛盾になって、「完全性定理」 を適用して、T が モデル をもつことになりますね。 ゲーデル の定理と云えば、ふつう、「不完全定理」 のことを指します。数学の シロート である私は、向こう見ずにも その定理を読みました──その結果は端からわかりきっているように、私の知力を超えて ちんぷんかんぷん でした。それでも、私は いくども挑戦して、その定理の証明法 (ゲーデル の論文の最初に記述されている大略) を 「なんとなく」 わかっているのですが、本文の証明を把握できず ただただ 字面を追っている状態です (今でも そうです)。だから、拙著のなかで 「不完全性定理」 について述べている記述は、定理の証明法の大略を翻訳したにすぎない、つまり 私は 「不完全性定理」 を わかっていない。ただ、「不完全性定理」 を なんとか わかろうとして数々の (「不完全性定理」 に関する) 参考書を読んできて、それらの参考書から得た次の定理や考えかたは私が モデル TM をつくるうえで とても役立った── (1) ツォルン の補題 (Zorn's lemma) (2) 特性関数 μ (x1, ・・・, xn ∨ y). (3) 事象型推論と法則型推論 (本橋信義 氏の用語) これらの考えかたは、モデル TM の根底になっています──T字形 ER法が TM へと変貌した誘因になりました。そして、「不完全性定理」 を学習するには、「完全性定理」(モデル の存在性) を しっかりと把握していなければならないことも改めて認識しました。そして、「完全性定理」 を再学習してみて、先ず以て構文論 (無矛盾な構造) の大切さを再認識した次第です。TM が 「『関係』 文法」 に厳正にこだわって文法違反を きびしく排除するようになった次第です──「構文論が先で意味論は後」 ということは数学者たちには当たり前のことでしょうが、事業分析・データ 設計のための モデル を扱っている システム・エンジニア にとっては それが実感となるのは難しい (私は、やっと それが実感となって、構文論を重視するようになった)。「完全性定理」(T ⊢ ψ ⇄ T ⊩ ψ.) において、「モデル の存在性」 が意識されてはじめて 「不完全性定理」 に歩を進めることができる。正直に言えば、可算集合 T と その任意の部分集合との間に生じる 「モデル の存在性」 というのは私には そもそも 興味ない。その論点は数学上の論点であって、私のような実務家にとっては、「コンパクト 性定理」 が いったん 証明されたならば、それを周知のこととして有限集合での モデル の存在性 (「『論理』 の完全性」 を前提にして、「『理論の』 完全性」 の可否) を論じればいいと思っています (「『論理』 の完全性」「『理論の』 完全性」 という語は、本橋信義 氏の創案です)。 「無矛盾な体系 T のなかでは真とも偽とも判断できない命題を作ることができる」(「不完全性定理」 の意味論版) ということは、TM の 「『関係』 文法」 を適用して構成された 「対照表」 が まさに そうであるということが認識できる。「完全性定理」 と 「不完全性定理」 の二つの数学的観点から TM を検証してみれば、TM について数々の面白い点── TM を作った本人が気づいていない特徴点──がわかってきました。私は、数学基礎論の 「モデル 論」 を (そして、「不完全性定理」 も)今以て学習中です。それらを もっと学習して、さらに知見を深めて、TM を改良していきたい。 □ |
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